paw-07 狩りに行こう! - 02

「……ん?」

 久々に感じた、懐かしい感覚。

 しかし、何故、彼がここに――

 訝りつつも、彼女は森の奥へ進んでいった。


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「おっでかけー!! おっでかけー!! ご主人とー、おっでかっけー!!」

 茶虎模様の耳をぴこぴこと動かしつつ上機嫌で自作の歌を歌いながらモンシャの隣を歩くコロコロ(自称)。

 打って変わって人生に疲れた中年サラリーマンのようにとぼとぼと進むモンシャ。

 こちらもご機嫌宜しく意気揚々と進むハーシィ。雉虎模様の耳がぴくっと時折動いているのは、周りの様子を探っているのだろう。

「ところでよ、モンシャ」

「何?」

「坊主に名前、付け直した方が良くね?」

「なんでまた」

「もし仮に、坊主が昨夜の子猫だったとして、その"コロコロ"ってぇのが坊主の"真名マナ"になるわけだろ?」

「そう、なのかな? 真名マナってのは"前世持ちレイヤード"の人が覚えてるっていう名前でしょ?」


 この世界には、"先祖帰りリバージョン"と同様、ごく稀には"前世持ちレイヤード"と呼ばれる、自らの前世での記憶を持つ者も現れる。

 その殆どは、こことは全く異なる世界で普通の猫だった頃の記憶であると言われ、その頃に飼い主に付けられていた名前を"真名マナ"と言う。

 言い伝えでは"真名マナ"はある種のいみなとされ、他人に知られてはならず、相手に知られることはその者への従属を意味するとも。

 王家の一族や高位貴族、聖職者などにはやはりこの"前世持ちレイヤード"が多いと言われ、特に王族のそれは国家機密であるらしい。


「ボクはここに来る前から"コロコロ"だよー!!」

「「え!?」」

 この発言には流石に2人とも驚いた。

「こ、ここに来る……って、どういうこと?」

「なんか前いたとこで車にばーんって跳ね飛ばされてー、気がついたらここにいた」

「車…って馬車か何か?」

「ばしゃ、って何ですか、ご主人?」

「おいおい、馬車も知らねーとか」

「そんなの知らないもーん! 車ってね、大きくて、四角くて、鉄っぽくて、輪っかが4つ付いてて、がーって大きい音立てて走ってるのー!」

「馬とかが引いてるんじゃなくて?」

「箱だけだよー。中に人は乗ってるけど」

「おいおい、こいつぁ本格的に"前世持ちレイヤード"みたいたぜ」

「そうだね……じゃぁ名前を……」

「かっこいー名前がいいですー!」

「順応早ぇなおい」

「今はボクもかわいーからいいけど、やっぱオトナになったらイケメンな名前がいいもン!」

「でもあんまり違う名前だと判りにくいし……うーん……」

 コロコロ(自称)は、ぎゅっと握った両手を胸の前で合わせて眼をキラキラさせている。あざと可愛い。

「コロコロ……からあまり離れない感じで……」

 わくわく、といった感じでモンシャを見つめるコロコロ(自称)。ぷ、プレッシャーが……

「コロネット……なんてどうかな。小さな王冠って意味だから、まぁ王子様、的な?」

「――か、かっこいーですー! ありがとうございますー、ご主人ー!」

 感激に目を潤ませてモンシャに飛びつくコロコロ(自称)改めコロネット。

「でもちっと長ぇな……"コロン"で良くね?」

 周囲は警戒しつつも、至ってどーでも良さげに独りごちるハーシィ。

 一瞬、そちらに向かって頬を膨らませかけたコロネットだっだが、

「あぁ、良いね。響きも可愛いし、今のこの子には合うね」

 とモンシャが同意した途端にへらと破顔して、モンシャに"すりすり"を始めた。

 それを呆れたように見ていたハーシィはパンパン!と強く手を叩くと、

「んじゃぼちぼち仕事に行くぞお前ら! モンシャ、サポート頼んだぜ!」

 と、得物の長槍を担ぎ直して森の奥へと歩みを再開した。


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