paw-13 白の聖女 - 03

「昼間っから往来の真ん中で何やってんだ?」

 心底呆れたようなハーシィの声。デスヨネー(^^;

「……あ……ははは……」

 両手に花、ならぬ猫を撫でつつ引き攣った笑顔を返すモンシャ。

 傍目から見れば、独り淋しく猫と戯れるぼっちだなーと自覚したが後の祭り。


=^・×・^= =^ΦωΦ^= =^・△・^= =^◎ω◎^= =^・△・^= =^ΦωΦ^= =^・×・^=


「で、また坊主が子猫に戻っちまった、と」

「うん。朝起きたら、もう」

 ギルド近くの食堂、卓に着いて向かい合うハーシィとモンシャ。

 尚、モンシャの懐にはコロコロが、膝の上にはさっきの白猫―今は仮に"みゆ"と呼んでいる―が鎮座している。

「で、そっちの白いのはよ?」

 ハーシィが訝しむと、"みゆ"は彼をギロッと睨む。

「ど、どーもその白いのはおっかねぇな」

「よく判らないけど、コロコロが呼んでたから、知り合いじゃないかな?」

「また飼う気かお前……」

「いや、それは……この子、大人みたいだし、どうしよう?」

「その態度は居座る気まんまんみたいだがよ……」

 まぁいいや、と彼は話を切り替える。

「先ずは昨日の野犬なんだが、他でも見た奴らがいたらしい。ギルドでも対策に掛かってる」

「他にも同じような群れが居たのかな――だとすると、危険だね」


「おいおい、初級デビュタン如きが人様の心配かー!?」

 不意に通りがかりの3人組に声を掛けられてそちらを見るモンシャとハーシィ。

「何を真剣に話してんのかと思えば、採取屋のモンシャじゃねぇかよw」

「いつもピーピー言ってるくせに今日は随分と羽振りがいいな、えぇ?」

 3人とも顔が真っ赤だ。かなり酔っているのだろう。今は朝なのだが……?

 曖昧に笑ってあぁとかうんとか適当にはぐらかすモンシャ。

 先日の赤犬の報酬があるので羽振りが良いのは本当なのだが、ここは言わない方が賢明だろう。

「お前ら、朝っぱらから酔っ払ってんのか? まさか昨夜から呑んでんのかよ?」

 ハーシィが顔を顰めながら割って入る。

「おーぅ! これはこれは、中級アンテルのハーシィ先輩じゃねぇっスか!」

「そもそも呑まなきゃやってられるかってんだよォ!!」

「どういうことだ?」

「あんた、知らねぇのか? 昨日ギルドから通達が出て、初級デビュタン以下は当分、村の外での活動禁止なんだとよ」

 思わず顔を見合わせるモンシャとハーシィ。

「お陰でこちとら商売上がったりだコンチクショぉ!!」

「こっちがこんなだってのに、そこの素寒貧が偉そうに――!!」

 と、凄んだまでは良かったが、ハーシィのひと睨みに急に酔いでも醒めたか、急にそそくさと踵を返した。

 コロコロと"みゆ"まで彼らの去った方を睨み付けて唸っている。

「おーおー、坊主は兎も角、こっちの白いのまで唸ってるぜ。お前も大概、猫に好かれる体質だなおい」

 余計な一言で再び"みゆ"にギロッと睨まれたハーシィは両手を挙げて降参の姿勢を取っている。

「――ありがとう。もういいよ。僕は気にしてないから」

 モンシャはコロコロと"みゆ"の喉を撫でてやる。2匹とも気持ちよさそうに喉を鳴らしている。

「しかし、そうなるとどうしたもんかね。俺らも暇ってこったな」

「君は大丈夫なんじゃ?」

「へ?」

「だってさっき『初級デビュタン以下は活動禁止』って言ってたから、君は問題ないでしょ?」

「あぁ、そういやそんなこと言ってたな――しかしなぁ……」

「どっちみち今日はコロンもこんなだし、コロンのギルド登録もできそうもないから、僕は引き上げるよ」

「まぁ、しゃぁねぇな。しかし坊主はいつ元に戻るんかね?」

「こればっかりは、ねぇ。魔力が回復すれば戻るのか……コロコロ、判るか?」

 懐の中で気持ちよさそうに喉をならしている子猫に訊ねても、全く聞いていない様子。

「こればっかりは運頼みかよ、やれやれ。しゃぁねぇ、俺はギルドに寄って情報集めてくるわ」

「あ、それは僕も付き合うよ。昨日の今日だし、野犬がどうなったかも気になるし」


 じゃぁ――と立ち上がった2人の耳に、外から何やら騒ぐ声が入ってきた。

「野犬だぁー!! 野犬の群れがっ……!!」

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