paw-12 白の聖女 - 02

 ぬし様――。

 ぬし様が、褒めて下さった――。

 私は、影に徹して護る。そう決めている、のに。

 あんなこと、不意に言われたら――。

 貴方はズルい方です。ズルくて、気弱で、お優しくて――。

 あぁ、ぬし様――それでも、わたくしは――。


=^・×・^= =^ΦωΦ^= =^・△・^= =^◎ω◎^= =^・△・^= =^ΦωΦ^= =^・×・^=


 翌朝。

 モンシャは再び絶句していた。

「……元に、戻っちゃった……」

 寝床で目を覚ました彼の胸元には子猫が1匹。

 コロン――というより元のコロコロに戻っている。

 時折、喉を小さく鳴らしながらもぞもぞしているのは夢でも見ているのだろうか。

 起こすのも忍びなく、そっと起き上がった彼は、今日の予定を考えて溜息を吐いた。


=^・×・^= =^ΦωΦ^= =^・△・^= =^◎ω◎^= =^・△・^= =^ΦωΦ^= =^・×・^=


 結局、止む無くコロコロを胸元に入れて出掛けることにしたのだが。

 兎角この子、落ち着きが無い。

 今も彼の胸元から首を伸ばしてあっちをキョロキョロこっちをキョロキョロ。

 喉元を撫でてやると落ち着くのだが、それも僅かの間。

 と、そのコロコロが耳をぴく、と立てて、胸元から跳び出した。

「――お、おいおい、待て待て!」

 慌てて後を追うモンシャ。

 だが、コロコロはすぐ先の路地で立ち止まると、脇道に向かって「にゃぁ~」と言っている。

 暫しの後、その脇道から出てきたのは、真っ白な猫だった。

「おや、お前の友達か? お母さんじゃ……ないみたいね(^^;」

 モンシャが途中で推測を撤回したのは「お母さん…」の辺りで件の白猫がギロっとばかりに睨んだから。

 それにしても、美しい猫である。

 コロコロより二回りは大きいのでもう大人であろう。優雅な立ち居振る舞いは女の子で間違いなさそうだ。

 見た目はロシアン系だが、毛色はよく知られたブルーではなく綺麗な白。尾は短かめ。

 そして印象的なのはその黄金色に輝く双眸。見ていると吸い込まれそうになる。

 えらくこちらを注視しているのは、警戒されているのだろうか?

 そんなことをモンシャがつらつら考えていると。

 コロコロがその白猫に"ぺろぺろ"を始めた。

 一瞬、ぎょっとしたように目を見開いた白猫だったが、子猫相手に怒るのも大人げないとでも思ったか、されるに任せている。

 やがて、反撃するかの如くコロコロの急所を的確に"ぺろぺろ"し始めると、コロコロは腹を向けて無抵抗になった。チョロすぎ。

 そんな光景に癒やされていたモンシャは、無意識に白猫の頭を撫でていた。

 またもや固まった様子の彼女だったが、うっとりと目を閉じ、喉を鳴らし始めたので、拒絶はされていないようだ。

 頭から耳の後ろ、喉元。喉の鳴りが大きくなり、やがて彼女は寝転がってしまう。

 これはお腹も、ということだろうか?

 では、とお腹の辺りを優しく撫でると、完全に仰向けになって動かなくなってしまった。

「――"みゆ"」

 ふと、無意識に呼びかけた名前。

 うっとりと閉じていた白猫の眼がぱちんと開き、彼女の全身が硬直したように固まる。

 あれ?と思ったが、白猫はまた目を閉じて弛緩しまった。

 コロコロと2匹、両手で腹を撫でていると、不意に影が差す。


「――あ……」

 上から彼らを見下ろしているのは、ハーシィの呆れたような顔だった。

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