paw-29 仮面の闖入者 - 04

「――やぁ、お待たせして済まない。再開といこうか?」

 仮面紳士が声を掛けてきた。


 リータはほっとしたように踵を返し、戻ろうとする。

 しかし、次の台詞を聞いて再び立ち止まった。


「重ね重ね申し訳ないが、選手の追加をしたい。まぁ、彼女は後ろで回復役に徹するので実質試合はしないが――」

 そう言われた仮面少女は不満げにむくれているが、そういうことで話はついたらしい。

「――で、そちらの方だが――」

 皆まで言わぬうちにリータはモンシャたちの許へ戻っていた。

「――では、そういうことで。賛同頂き感謝する」

 優雅に一礼する仮面紳士。またもや観客席から黄色い声が上がると、仮面少女は更にむくれた。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「――とは言ったものの」

 溜息を吐くモンシャ。

「本当に良いんですか、リータさん? その――危ないですよ?」

「貴方がいるなら問題ないでしょう?」

 コロン以上に全面的な信頼の籠もった顔で見返されて、返答に窮するモンシャ。

「ま、いーんじゃねーか。あちらさんもイロイロと訳有りみてーだしよ?」

「リータさんがいるなら百人…千人力ですっ!!」

 相変わらず適当なハーシィを睨み付けてコロンに微笑むと、リータはモンシャの側に立ち、

ぬしさ――彼は私が必ず守ります。2人は、闘いに専念を。彼らは強い」

「はいっ!! リータさんなら安心ですっ!!」

「ほいほいっと。あンの気障野郎、一遍ぶちのめしてやらねぇと気が済まねぇや」

 ただ――と付け足すように、

「先程の銀髪の少女――彼女だけは傷付けぬよう」

 意味が解らず首を傾げる一同に、

「それが貴方がたの為だから」

 それだけ言うと、彼女は向こうの4人を見据えた。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


あに様、わたくしだって闘えますのにー!!」

 ぷんすかと仮面紳士に食って掛かる仮面少女。仮面少年は両者の間でおろおろしている。

「それだけは、為りません。今でもヒヤヒヤ物だというのに――下手すると、私の首が飛びますよ?」

 それを言われると反論の余地もない彼女は、渋々引き下がる――頬を膨らませたまま。

「助っ人殿、まさかとは思いますが、そちらは――」

 恐る恐るジョドォが問い掛ける。

「まぁ、貴女あなたは知らない方が良いでしょう――御身の為にも、ね?」

 軽くウィンクを返され、言葉を呑み込む。

「取り敢えず、これで魔力量に関してはなんとか互角、後は貴女あなたの腕を期待しますよ?」

 頷いて、錫杖を構えるジョドォ。

 先程の回復ヒールで魔力はほぼ全回復している感覚はある。

 魔術師団でも随一の火力を誇る彼女の魔力をほぼ回復させるなど、あの少女は何者なのか――その疑問は押し殺して、攻撃魔法を練り上げていく。

 仮面紳士と仮面少年が左右に散開し、三度目の闘いの火蓋が切られた。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「今度はてめぇをぶちのめーす!!」

 開始早々、ハーシィの長槍が鋭い突きを繰り出す。

「おぉ、怖い怖いw」

 それを難なく避けつつ、攪乱に疾風槍擲ウィンド・スピアを繰り出す仮面紳士。

 風系の魔法攻撃は威力で火系に及ばないものの、速さと目に見えにくい点では厄介な代物。

 高圧で圧縮された空気の塊は、術者の技倆に依っては石壁すら貫くこともある。

 流石に全てを避け切れず、次第に傷が増えるハーシィ。だが――

「ンなちまちまやってんじゃねーよ!!」

 魔法攻撃と剣戟の間の僅かな隙を見切り、瞬時に魔法強化を重ね掛けオーバーブーストした身体で仮面紳士の横っ腹を槍の柄で殴りつける。

「―ぐっっ!?」

 柄で来るのは想定外だったのか、体格差も相俟って闘技場を転がる仮面紳士。

あに様っ!!」

 後衛に控えた仮面少女が顔色を変えて叫んだ。

「――ご心配なく!! 何、この程度」

 彼女の杞憂を晴らすためか、無理に平静を装っているが、足下が多少ふらついている。

「へっ、口だけは達者なこったな」

 油断なく長槍を構え、挑発するように軽口を叩くハーシィ。

「いやいや、私もにかまけ過ぎて些かなまっていたようだね」

 という言葉を耳敏く捉えた仮面少女がむくれるが、それに構わず、

「それにこの仕事だと、なかなか本気で遣り合う機会も少なくてね――今日は良い気晴らしだ!!」

 言うなり剣戟を繰り出す。今度は疾風槍擲ウィンド・スピアの詠唱は慎重になっている辺り、油断が為らない。

「気晴らしたぁ、ご挨拶だなぁ!!」

 ハーシィも長槍でそれを払いつつ、身体強化を溜めている。


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「――ホントに、解りませんわ、男の方って」

 むくれながら独り零す仮面少女。

あに様ったら、わたくしの前ではあんなに楽しそうなお顔なんて――」

 その花のかんばせにふと影が差したように見えたのは、ただ白昼の月のみぞ知る――。

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