paw-34 Believe me - 04

天破流水オゥドシェル拡散ディフュジォン

 モンシャが展開した巨大な水球は、大火球を目掛けて飛び去り、追い付くや否やそれを呑み込むかのように拡がり――

「――捉えた!! 収縮コントラクシォン!!」

 大火球を丸呑みにした!!


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


 それはさながら、水球が大火球を丸呑みしたように見えた、と観客達には後々まで語り草になった程の光景だった。


 それと同時に、目立たぬながらもリータの術式が展開し、次々と飛んでいく。

 先ずは大火球の正面に仁王立ちするハーシィ、そのすぐ後ろで術式を展開中のジョドォ、防護壁に包まれつつある2人。

 そして今まさに大火球に突撃せんとするコロンと仮面少年にも。

 それは最早、治癒術というよりも聖女の用いる聖属性魔法そのものなのだが、この状況でそれに気付いた物はいたかどうか。


 一度は大火球を丸呑みにしたものの、その火力で瞬時に蒸発してしまう水球。

 しかし、その代償として大火球はその火勢を削がれ、大きさも半分程度になっている。

 そこに突進する茜色と黄色の闘気オーハ――コロンと覚悟完了した仮面少年だ。

「流れ弾は任せとけ!! お前らはそいつをぶちのめせ!!」

 ハーシィが長槍を振り回して叫ぶ。


 コロンと仮面少年は頷くと、加速した。

「「いっけぇぇーー!!」」

 勢いのままに同時打ちの猫パンチ!!

 勢いで大火球が弾け、押し戻されるが、残りの大部分はこちらに向かってくる。

「「悪いことする奴は!!」」

 2人同時に飛び上がる。

「「猫に、蹴られて!!」」

 宙返り、からの!!

「「消し飛んじゃえー!!」」

 ダブル猫キック!!


 2人の蹴りが大火球に命中、した瞬間。

 それは大きく弾けて消滅!!

 後には、魔力と闘気オーハの混じり合った残滓が煌めいて粉雪のように漂っていたが、程なくして消えていった。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「ふぅ……」

 腰が抜けたように、地面にへたり込むモンシャ。

「本当に、これじゃ心臓が幾つあっても足りないなぁ……」

 向こうではハーシィが手を振っている。ジョドォ共々目立った怪我は無さそうだ。

 大火球を蹴り飛ばしたコロンと仮面少年は、地面に寝転んでいる。

 かまくらに守られた仮面紳士と少女も問題無いだろう。

 これだけの大事故で実質的に怪我人が皆無、というのは奇跡的と言って良かった。


 全員の様子を見て張り詰めていた気が緩んだのか、リータがモンシャの横に座り込む。

「――リータさん? 大丈夫ですか?」

 よく見ると、躰が小刻みに震えている。

ぬし様、ご無事で――」

 絞り出すようにやっとそれだけ言うと、モンシャに抱き付いて震えている。

 モンシャはぎこちない手つきでその頭をあやすように撫でていた。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「――ふぅ。どうにか首の皮一枚で繋がったね。皆さん、ご協力に感謝する」

 かまくらから出てきた仮面紳士が一礼する。所々傷だらけで血が滲んだりしているにも関わらず、優雅なことこの上ない。

 不意に、仮面が落ちる。

 その顔を見たモンシャとハーシィの眼が驚きに見開かれる。

「――クーリェ……」

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