paw-35 Believe me - 05

「――ふぅ。どうにか首の皮一枚で繋がったね。皆さん、ご協力に感謝する」

 かまくらから出てきた仮面紳士が一礼する。その彼の顔から仮面が落ちた。

 その顔を見たモンシャとハーシィの眼が驚きに見開かれる。

「――クーリェ……」


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「――へっ、やっぱりテメェか、クーリェ!!」

 予想通り、とでも言いたげにハーシィが口を開いた。

「へぇ? あまり驚いていないようだね、ハーシィ?」

「匂いだよ、匂い。いくらその便利なお面で誤魔化したところで、匂いまでは誤魔化せねぇ」

「――ふむ、それは想定外だったな。まだ改良の余地はあるか」

「――じゃ、なくて!! そもそもデメェ、どういうつもりだ!!」

 余りに落ち着いた仮面紳士―クーリェの態度にハーシィが激し、彼の胸ぐらを掴む。


 が、そこに可憐な抗議が飛んできた。

あに様に何をなさいますのー!! この野蛮人!!」

 クーリェが出てきたから飛び出してきた白銀の風―先程の仮面少女だ。

 彼女程度の力では梃子でも動きそうもないハーシィの腕を掴まえて必死に引き剥がそうとする。

 むーと力任せに引っ張るがどうにもならず、ぽかすかと殴ってみるが却って自分の手が痛くなり、しまいには齧り付こうとしたので、慌ててジョドォが止めに入った。

「兎に角っ!! あに様に手を上げる様な輩は即・逮捕!! 逮捕なのですわっ!!」

 遂にはぜいぜいと肩を上下させながら、ハーシィにビシィッッ!!と人差し指を突きつけ、高らかに宣言し始める。


「――おい」

 流石に毒気を抜かれたハーシィは、手を緩めてクーリェに訊く。

「何だい?」

「そこの勇敢なお姫様は何だ?」

「そこは訊かぬが華かな――ひとつ言うなら、彼女のお守りが私の仕事でね」

 ある意味、ハーシィは彼女の素性を無意識に言い当てていたのだが、そこは無視して答えるクーリェ。

「お守りではありません!! 護衛です!! あに様はわたくし専属の護衛なのです!!」

「……ああ言ってるけどよ。テメェ確か、近衛騎士団じゃなかったか?」

「今でもそうだよ。まぁ考えてもみなよ、そこらの騎士が彼女の護衛とか務まると?」

「……確かにあんなお転婆はテメェみてーな女たらしくらいしか手に負えねーな」

「おいおい、あまり言い過ぎるとホントに捕まるよ? それなりの身分の御方だからね」

「あーそうかい、ご忠告どうも。――で、さっきの答えはまだ聞いてねぇんだが?」

「うーん……ちょっと長い話になりそうだしなぁ……日を改めて、でどう?」

「テメェ、はぐらかすのも大概に……」

 再度、ハーシィがクーリェの胸ぐらを掴みかけたその時。


 観客席から、不意に割れんばかりの万雷の拍手が起こった。

 余りに凄まじい出来事の連続に完全に思考停止に陥っていた観客達が、今になって漸く再起動したようだ。

 それをぽかーんと見ていたハーシィだったが、耳の後ろをぽりぽりと掻くと、

「ま、いいさ。今日の所は預けといてやるが――絶対に、説明はしろよ? 俺もだが、にもだ!!」

 と、後方でへたり込んでいるモンシャを見遣る。

「やれやれ、信用がないなぁ。大聖女様と殿下に誓って、説明するよ。信じて?」

 最後のその台詞で一体何人のご婦人方を墜としたことやら――と呆れ気味に頷いたハーシィを一瞥したクーリェは、

「さて、我々は戻ると致しましょう。流石にもう限界だと思います」

 えー、あちらの大魔導師様とお話ししたいですのにー、などと抗議している仮面少女を急かして、彼は観客席の方へ戻っていった。

「――ったく、何を企んでやがるんだか、あの野郎」

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