paw-18 はじめてのぼうけん - 3

 その日は夕食を終え、宿に着くなり子猫コロコロに戻ってしまったコロンと件の黒猫と共に布団に潜り込んだモンシャだったが――。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


 一晩明けてみれば。

「――あー……当然コウナリマスヨネー(´・ω・`)」

 妙な圧力を感じて目を覚ましたモンシャ。

 その両脇には男の子が一人ずつ。

 左側に居る茶髪は言うまでも無くコロンなのだが――

「――えー…っと、おはよう。君、誰かな?」

 そう問いかけられた右側に寝ていた浅黒い肌の黒髪の少年は寝惚け眼を一瞬開くと、むくっと起き上がるなり、

「あ、おはようございます。昨日はお助け頂き、ありがとうございました」

 深々と頭を下げるとまたもやと寝てしまった。

「え、ちょ、ちょっと君――」

 この間、コロンはすやすやと寝息を立てて目を覚ます気配すら無い。


「――で、また新しいのを拾って来たってか?」

 扉の方からハーシィの呆れ声がしてモンシャは慌てる。

「あれ、居たの? 声かけてくれれば――」

「その状況を見りゃぁ流石の俺でも躊躇うわ……」

「は、ははは……(^^;」


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「昨日はお助け頂き、本っ当にありがとうございました!!」

 もの凄く礼儀正しくお辞儀をする黒髪の少年―年齢はコロンより僅かに上だろうか―は、その鮮やかな黄色の瞳をキラキラさせてモンシャとコロンを見ている。

「あー、無事で良かったよ。特に大きな怪我も無かったようだし」

「はいっ!! お二人のお陰ですっ!!」

 もうなんか子犬のようにぶんぶんさせている尻尾が見えるようである。猫だけど。

「それでお前、あんな山の中で何してたんだよ?」

 モンシャとコロンから一通り状況を聞いたハーシィが聞き役になって訊ねる。

 あの後、コロンを起こして朝食を摂りがてら話を纏めようと近くの食堂に移動した4人だった。

「あ、そ、そうでしたっ!! 実は、リーゼ様にこちらのギルドへのお使いを仰せつかりましてっ!!」

「リーゼ様?」

「お使い?」

「ギルドへ…ってこたぁマスターにか?」

 一斉に質問を浴びせられ目を白黒させる少年。黄色だけど。

 と、そこに――

「――オーレ、どうしたの?」

 怜悧な女性の声。

 一瞬、ビクッと全身の毛を逆立てるハーシィ。

 両耳をと立てて眼を輝かせるコロン。

 モンシャが声のした方を振り返ると、

「リータさん?」

「リータさんっ!!」

「リータ様ぁーっ!!」

 今し方"オーレ"と呼ばれた黒髪の少年がリータに飛びついた。

 そのオーレの髪を撫でているリータ。何故かハーシィを睨み付けている。

「お、おい、違うぞ、あんた何か勘違いして無ぇか!?」

 睨み付けられたハーシィは顔中を冷や汗だらけにしてしどろもどろ。

「あー、リータさん? その子は昨日、森の中で野犬に襲われていて――」

「野犬はボクたちがやっつけたの!!」

「ギルドに用があるってんで事情を訊いてたんだってばよ、俺たちは」

 それでふっと視線を緩めてオーレを見下ろすリータ。彼の頭を両側からそっと挟んで向き合うと

「――オーレ、今はあの近道は危ない、と前に言わなかった?」

 それまで頭を撫でられてふにゃふにゃになっていたオーレは一転、全身の毛を逆立て、

「――え……っと……その……リーゼ様はお急ぎと仰ってましたし……大丈夫かな……って……」

「今回は運が良かっただけ」

「はい……(´・ω・`)」

「こんなことで貴方が怪我でもしたら叔父上や叔母上も悲しむでしょう?」

「はい……以後、気をつけますです」

 解ればいいわ、と改めてオーレを抱きしめるリータ。

 ハーシィが信じられないモノを見るような顔をしている。

「それにしてもリーゼには困ったものね……」

「あ、あの、リータさん?」

「何?」

「そこの…オーレ君?とは知り合いなんですか?」

「ええ」

「さっきも彼が言ってましたが、その、リーゼ様……って?」

「フロゥレリーゼ。当代の大聖女」

「あー、大聖女様……ってえぇぇぇぇぇぇーーーーー!!!!!( ゚Д゚)Σ」


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 リータの爆弾発言で「( ;゚Д゚)ナ、ナンダッテー!!(゚Д゚;(゚Д゚; )」状態に陥り、より混迷を深めてしまった一同は、もう取り敢えずマスター・ベラスに丸投げしようということで一致し、朝食も早々にギルドへ急いだ。

「お早う御座いまーす!! ……ありゃ、み、皆さんお揃いで……聖女様まで……?」

 開口一番、元気に挨拶した受付のマールは一同の様子に首を捻る。

「マール、マスターは?」とリータ。

「はい、もう来てますけど……何か緊急事態でも?」

「――あ、あのっ!!」

 オーレが必死な様子でマールに訴える。

「カルミーナ子爵家子息のオレオノアールと申しますっ!! 大聖女フロゥレリーゼ様の名代としてここカーヤ領ギルドマスター・マルーベラス様に至急の伝言をお持ちしましたので、お取り次ぎをお願いしますっ!!」

 事前に余程練習でもしてきたのか、一気に捲し立てるとぜいぜいと息をしている。

「は、はははいっ!!」

 大聖女の名前で流石に驚いたマールが全身の毛を逆立てた後、あたふたと奥へ走って行く…あ、転んだ(^^;…ドンマイ。

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