paw-20 はじめてのぼうけん - 5

「――あちらが噂の魔導師様ですか。無徴種ピュレというのは本当ですのね」

「気が済みましたか? では戻りますよ」

「あら、中々無い機会ですから、もう少し……」

「あちらでは大騒ぎになっていますよ?」

「ふふ、そのためにあに様に付いて来て頂きましたのに」

「私は貴女あなたの護衛……いえ、お守り役ではないのですが!?」

「まぁ怖い。ご婦人方にはあんなにもお優しいというのに……やはりわたくしは嫌われているのでしょうか……」

「泣き真似などしても駄目です。お痛が過ぎると女官長チェンバレンが心労の余り寝込んでしまいますよ?」

「むぅ……あに様はです……」

「何処でそんな言葉を覚えてくるのですか貴女あなたは……」


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「ん?」

「どうしたの?」

「――いや、なんか、懐かしい匂いがしたような気がしてな」

「懐かしい?」

「あぁ。――そういや、アイツ、どうしてるかねぇ?」

「あっちはあっちで忙しいんじゃないかな?」

「まぁ、お貴族様はイロイロとあるだろうしな。と言いつつ舞踏会で並み居る御令嬢を墜としまくってたりしてなw」

「うーん……否定する材料が無いのがなんとも(^^;」

「ご主人、貴族の友達がいるの?」

「ここの訓練学校のね、同級生なんだよ」

「お前のご主人と俺とそいつと…まぁ4人でパーティ組んでな、あのパーティなら今でも負ける気がしねぇぜ」

「――そうだね。僕もそう思ってた……」

 遠くを見る目で呟くモンシャに「しまった!」という顔のハーシィ。

「ま、まぁ、もしかすりゃ明日の御前試合とやらでお目にかかれるかも知れんぜ?」

「うん、試合は兎も角、列席はしてるかも」

「周りにずらっと御令嬢が侍ってたりしてなw」

「それは流石に大聖女様に怒られると思う(^^;」

 ハーシィとモンシャの会話に、ご主人の友達ってそんなにモテるのかーと些かズレた印象を持ったコロンだった。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「きゃっ!! あ、あに様、こんなところで、いきなり……」

「――静かに! ――よし、行ったか」

「ま、まぁ、わたくしは何時でも宜しくてよ?」

「やれやれ、奴の鼻の利くことときたら油断も隙も無い」

「ちょ、ちょっと、あに様!! 乙女の覚悟を何だと――」

「乙女はこんな処で覚悟完了なぞ致しません。それより――」

「?」

「あわやこちらが見つかる所でした。騒ぎにならないうちに帰りますよ」

「え!? 見つかる筈が有りませんわ。わたくし不可視アンヴィジは、そうそう――」

「いや、ハーシィの鼻は誤魔化せませんよ、おそらく」

 それに――と彼は訝る彼女に向かって言葉を継ぎ、

モンシャが本気でいれば、やはり同じことでしょうし」

 煙に巻かれたような面持ちで疑問符を浮かべる彼女をここぞどばかりに急き立て、彼は帰途に就いた。

 ――やれやれ、また言い訳を考えておかないとなぁ、と小さく溜息を吐きながら。

 金色と銀色の影が王城まで駆け抜けていったという噂が村に広まったのは翌日のことだった。

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