paw-21 華の大聖女 - 01

「一体どういうつもり、リーゼ!!」

「どうしたのです、人の顔を見るなりそのような」

「どうもこうも……何を企んでいるの、貴女あなたは!?」

「まぁ人聞きの悪い。わたくしは純粋に、今回の騒動を鎮めたという勇者にお話を伺いたいと……」

よ、信用の置けないのは!!」

貴女あなたねぇ……仮令たといわたくし達の仲でも言って良いことと悪いことがありますよ?」

「本当に何も後ろ暗いところが無いと言うなら、衛兵でも聖騎士でも呼んだらどう!?」

「まぁ怖い怖い。本当に貴女あなたときたら、ぬし殿のこととなると昔から……」

「――それ以上言ったら貴女あなたでも許さないわよ」

「はいはい。まぁ安心なさいな。試合の件は本当に、彼の腕前を見ておきたい、というだけだから」


 姉のその言葉に未だ納得のいかない様子で顔を顰めつつも、彼女は渋々、その部屋を退出した。

 部屋から出てきた彼女を、その重厚な扉の両側に控えた護衛の聖騎士達が最敬礼で見送る。

 その扉には古式ゆかしく花模様で縁取られたプレートが掲げられていた。


『大聖女 執務室』


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「……はぁ、なんかと疲れた(´・ω・`)」

 大聖女の執務室を辞したモンシャはがっくりと肩を落としとぼとぼと歩いて行く。

「だいじょーぶ、ご主人?」

 こちらは至って暢気なコロン。

「まぁ、俺も出来ることなら今後はご遠慮したいな、ありゃ」

 耳の後ろを掻きながらハーシィも同意する。

「なんつーか、威厳はあるし慈悲深い感じは確かにあるんだが……あの妙な威圧感はなぁ……」

 なーんか誰かと似てやがるんだよな、と呟いてハーシィは大きく伸びをした。


 大聖女フロゥレリーゼ自らの事情聴取を受けたのはモンシャ、ハーシィ、コロンの3人。と言っても殆どの質問はモンシャに集中し、ハーシィが時々それを補足、コロンはお茶を飲んでいるだけ、という状態だったのだが。

 兎に角、大聖女の物腰は柔らかいのだが言葉の端々に裏がありそうで、下手な答えを返すのも憚られる様子で、しかもどうもこちらの事情をある程度把握した上での質疑にも思えて、これはもしや自分たちも何らかの嫌疑が掛かっているのだろうかと悪い想像が溢れてきて……。

 そんなこんなで、事情聴取が終わって解放された後はぐったりと精神的に疲労したモンシャとハーシィであった。


「で、午後からは例の御前試合とやらか?」

「そうみたいだね。でも大丈夫かな、コロンも入れて3人パーティで、なんて」

「ボクはだいじょーぶだよっ!!」

「そうは言ってもなぁ、お前は初心者もいいとこだしよ。そもそも相手がどうなるのかさっぱり判んねぇのがなぁ」

 むー、とむくれるコロンを尻目にモンシャと打ち合わせを始めるハーシィ。

 どうも今回の大聖女からの招聘は意図の解らないことが多すぎる。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「うふふ、何やら疲れておいでですわ、勇者様」

「覗き見とは感心しませんね、姫殿下ひでんか

「あら、偶々見えただけですわ。それにしても――」

「えぇ。ハーシィの奴も流石にしている――まぁ、奴は大聖女様のタイプは苦手でしょうから」

「流石にそれは不敬ですわよ、あに様?」

「いや、奴は良くも悪くも搦め手が苦手なので――あのように押しても引いても手応えの解らない方とは相性が悪いのですよ」

「まぁ……そんな、大聖女様を腹黒のように」

「そんなことは言っておりません!!」

「あら怖い。可愛らしい冗談ではありませんか」

貴女あなたも大聖女様といい勝負だと思いますがね……」

 その言葉にむーと頬を膨らませた彼女を押し出すように神殿の奥へと向かう彼。

 向かう先には『貴賓室』とプレートの掲げられた部屋があった。

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