paw-05 コロコロとモンシャ

「それならそれで、なんか名前付けないとな……んー……なんかとにかくやたらとコロコロしてるから……コロコロ!!」

「――!!」

 間違いない!! ご主人ー!! やっぱりご主人だー!!


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 ――翌朝。

 寝苦しさに目を覚ましたモンシャは、ゴルゴンにでも睨まれたかのように固まっていた。

 先ず思ったのは『僕の社会的生命オワタ』。

 毛布の下には、子供がひとり。みたところ10歳くらいだろうか。

 しかも、ものの見事に丸裸。即ちすっぽんぽん。大事な所なので二度言ってみました。

 寝苦しさの原因は、間違いなくこの子。しかし――

「ぼ、僕、一体何やったんだっけ……ってか、この子、誰?」

 ぐーるぐると最悪の状況を想像しながらふらふらと立ち上がり、室内を見回す。

「――!! あ、コロコロ!! コロコロ!! 何処行ったー!?」

 そう言えば、昨夜ここに帰るなり諸共に寝落ちした筈の子猫の姿が無い。

「――出て行っちまったのかなぁ、やっぱり」

 がっくりと肩を落としかけたところに、

「~ふぁい!! お呼びですか、ご主人~!!」

 むにゃむにゃと眠気の覚めぬ声で欠伸半分に応えたのは――その子供だった。


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 この世界には様々な人種が各々の国に纏まって暮らしている。

 犬の半獣人ヌビア族、獅子の半獣人クメ-ト族、羊の半獣人ヌーム族、牛の半獣人ハトール族、鰐の半獣人セーベ族、鳥の半獣人トート族やムゥト族、等々。

 そして、モンシャ達が暮らすここ、ランドーシャ王国は猫の半獣人であるバステータ族の国。

 とは言っても、国ごとの交流は細々とながらあるので、殊更対立したり鎖国している訳では無く、少ないとは言え他人種の姿もある。

 現にモンシャのように無徴種ピュレと呼ばれ半獣の特質を持たない人種も稀にではあるが存在するのだ。


 そして先程、寝ぼけまなこで返事をした子供は、というと。

「おふぁよぅごさぃまふ~ご主人~」

 頭の上でピンと立った三角形の耳がぴこぴこしている。鼻の横からは長い髭が何対か伸びている。

 バステータ族――猫の半獣人だ。

「えっ……と、ご主人……って……てか君、誰?」

 そう訊かれて一瞬見開いた縦長の瞳孔。その色の瞳から涙がじわぁ、と溢れたかと思う間もなく。

「……ひっ、酷いっ!! 昨日はボクに名前付けてくれて、あんなに"わしゃわしゃ"してくれたのにーっ!!」

 わっと泣き出したものだから堪らない。

「えーっ!? おい、いや、ちょ、ちょっと待って、もー何がなんだか……」


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 暫しの後、漸く泣き止んだその子――自称"コロコロ"は鼻を啜り上げながら言った。

「だからボクがコロコロで間違いないですぅー!!」

「そ、そうなんだ。なんか色々とごめんね……」

「解ってくれたらいーよ! んじゃご主人、"わしゃわしゃ"してー!!」

 一転、満面の笑みになった"コロコロ"は、ぴょんとモンシャに飛びつく。

 ――いや、この絵面、誰がどー見ても僕が犯罪者認定待ったなしなんだけど。

 はぁ、と溜息を吐いた彼は、妥協案として"コロコロ"の頭髪を"わしゃわしゃ"した。

 彼のオレンジがかった茶色の癖っ毛はとても柔らかい。あ、この感触は確かに"コロコロ"だ。

 くだんの"コロコロ"はと言うと、気持ちが良いのかうっとりと目を閉じている。

 "わしゃわしゃ"を続けながらモンシャは、"コロコロ"の服をなんとかしないとなぁ……でもお金無いしなぁ……と思い悩んでいた。


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