paw-23 聖堂御前試合 - 02
『それでは試合開始!!』
コールと共に陣形を取り身構える一同。
こちらは基本的に格闘は全く駄目なモンシャを後衛に、力の発動が不安定なコロンはその護衛として付け、前衛はハーシィのみ。
対する相手側は、後衛に先程のジョドゥ=ローンと名乗った魔術師の女性、前衛にやや細めの剣士と筋肉ダルマのように横幅もたっぷりある剣闘士。
「流石にこりゃ、1人じゃキツいかねぇ……」
ハーシィが唇を舐めて槍を構え直した刹那――。
「近衛隊付き、キーヤ=ボゥ子爵、参る!!」
「辺境伯軍第2隊、ラーズン=トゥ男爵、いざ!!」
前衛の2人が抜剣して同時に斬りかかる。
無論、刀剣の類いは全て刃引きしてある演習用のものではあるが、その斬撃は当たれば無傷では済むまいと思わせる鋭さがあった。
「ちいっ!!」
その剣を長槍の穂先でいなし、隙を探るべく距離を詰めさせないように牽制するハーシィ。
後ろからモンシャが指弾を撃つ構えを見せているものの、彼らの動きが激しいためになかなか狙いが定まらない。
「モンシャ、こっちには構うな! 先にあっちを――」
と、相手の魔術師、ジョドゥ=ローンを眼で示したハーシィに、火の塊が飛んできた。
「おわっ!…とぉ…あっぶねぇ!」
辛うじてそれを躱したものの、姿勢を崩した彼の隙を突いて剣士キーヤ=ボゥ子爵が槍の内側に回り込み、ハーシィは防戦一方となる。
その間にコロンとモンシャの方へ突進する筋肉ダルマ…もとい剣闘士ラーズン=トゥ男爵。
「モンシャ! コロン!」
その時、彼の目に茜色の光が映った。
=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=
横幅の大きい人がこっちに走ってくる。
剣を構えて、ご主人を狙って――
そんなこと、させるもんか!!
ボクがご主人を守るって言ったんだから!!
=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=
「……な、何だ!?」
筋肉…もといラーズン=トゥ男爵は我が身に起こった事に理解が追い付かず、ぽかんとしている。
彼がモンシャに斬りかかった、その時。
突如として眼前のチビスケが朱く輝いたと思ったら――
彼はそれに弾き飛ばされたように尻餅をついていた。
彼の眼前のチビスケは先程の激しい輝きこそないものの、全身から茜色の
「ただのチビスケではなかったか――」
面白い、と舌なめずりをして彼は後衛の魔術師に叫んだ。
「ジョドォ様! このチビスケは魔闘士です! 援護を!」
「承知!」
言うが早いか、ジョドォ=ローンから先程ハーシィに向けて飛ばされた炎の弾―
速度重視のため詠唱の短い基本術式だが、低威力とは言え牽制や攪乱には充分なもの。
生き物は炎を本能的に避けてしまうため、その隙にチビスケを倒すなり回り込んで厄介な魔術師を倒すなりする目算だったのだが――。
「チビスケチビスケってうるさいなぁもー!!」
お構いなしにコロンが突っ込んで来た。
「ちぇーいっ!!」
コロンは飛んで来た3発の
全て彼―というより彼の
「ば、馬鹿な……」
あまりのことにそれ以上の言葉も無いラーズン=トゥ男爵。
「魔法属性の攻撃を肉体で消し飛ばす……だと……そんなことが……」
「今だ!」
モンシャが素早く指弾を撃つ。
「
動きの止まったラーズン=トゥ男爵はその体躯からして只の大きな的でしかなく、モンシャの放った弾丸は容易く命中した。
「ぐぉ! し、しかしこの程度の雷撃など……!」
「ボクの!ご主人にっ!手を出す奴はっ!」
コロンが下から回り込んで全身に力を溜める。
「猫に!蹴られて!」
そして逆立ちからのジャンプ!
「星になっちゃえーっ!」
見事な倒立ジャンプ猫キックが下顎に炸裂!!
「ふぐぁっ!?」
先程の痺れが効いて動きの鈍いラーズン=トゥ男爵は、コロンの猫キックをまともに喰らい、魔術師の手前まで吹っ飛ばされた。
気絶でもしたか、立ち上がれないでいる。
「なっ……!!」
仲間の惨状に驚いたキーヤ=ボゥ子爵、その隙を見逃すハーシィではなく。
「油断大敵! そらよっと!」
長槍で相手の剣を絡め取り遠くへ投げる。
「ちっ!!」
流石にこのままでは不利と見て、剣を拾いに一端ハーシィと距離を取る子爵。
期せずして相手の3人が元の場所に集まる形となった。
「ジョドォ様、防壁を!」
「任せよ!
僅かの時間を置いて魔術師ジョドォ=ローンの周囲に巨大な炎の壁が出現する。
周囲の観客からは大きな響めきが漏れる。
「あれが魔術師団でも最強と言われる炎の壁――」
「なんという大きさか! 流石にこれを破れる者は居るまい」
「――なーんてこと言われてるけどよ、どうよ、モンシャ?」
「いやぁ、流石だねぇ。見事な
「いや、俺が言ってるのはそこじゃねーし(-_-;」
「ご主人、ボクが行ってぶち破ってくるよー!」
「うーん……今のこいつならマジで出来そうだなこりゃ……」
「でも怪我したら痛いよ? 火傷は治るまでが大変だから」
「んじゃどーすんだよ?」
「そうだね、こないだの方法で――」
「――あ、アレをやる気かおい!?」
「アレなら安全だし、向こうもそんなに怪我とかしないでしょ?」
「まぁそりゃそうなんだが……いいのか、この場合……?」
そんなハーシィの悩みを余所に、「
「
先程、筋肉ダルマ―あぁもう―ラーズン=トゥ男爵に撃ったものより更に強力な稲妻を纏った指弾を大量にそこへ放り込む。
燃え盛る炎の壁が、静寂に包まれたように一瞬、間があって――。
「「「ぴぎゃぁぁぁーーーっっっ!!!」」」
3人分の悲鳴が響き渡ると同時に炎はふっと掻き消えた。
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