paw-32 Believe me - 02

モンシャは右腕でリータをしっかりと抱き寄せ、空いた左手を突き出すと、詠唱した。

天破流水オゥドシェル一気通貫ペネトラシォン


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


 土壁から何かが噴き出したのを見た面々は、理解が追い付かなかった。

 何しろ、極大炎弾ギガ・ファイア・バレットの火力にも耐えうる強度を誇る防壁である。

 おそらくは攻城槌や岩石を撃ち出す投射器でも刃が立たない。ましてや、刃物で切ろうにも強度と厚みに阻まれてどうにもならない。

 にも関わらず。

 そこから噴出した何か―只の水にしか見えないが―は、やがてその分厚い岩盤を綺麗に丸く切り抜くと、切り抜かれた部分は鈍く大きな音を立てて外側へ倒れた。

 中から何事もなく歩いてくるモンシャと彼に抱き寄せられたままのリータを見た面々の目が信じられない物を見るかのように見開かれる。


 そのリータからして今、眼前で起こったことが信じられなかった。

 何をどうすればあの強固無比な岩盤を穿てるのか。

 未だ思考停止状態のリータに含羞はにかむように笑いかけたモンシャが囁くように言った。

「だから言ったじゃないですか、何とかしますって」


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「な…な…な…何じゃ…と……」

 それを目の当たりにしたジョドォはわなわなと震える手でモンシャを指差し叫ぶ。

「お、お主、何をしたっ! 炎も通さぬその防壁を穿つなど…!」

「あー、えーと、これ、水です」

「水、じゃと!?」

「はい。疾風槍擲ウィンド・スピアとかの応用で、空気の代わりに水を高圧で打ち出せば、大抵の硬い物は切れますから」

わらわの絶対防壁が……水如きに…負けた…じゃと……」

「そう馬鹿にしたもんでもないですよ? これ、上手く使えば岩の切り出しとかに便利ですから――」

 モンシャとジョドォの漫才のような遣り取りを夢心地で聞くともなく聞いていたリータだったが、今の自分の状況にと気が付き、耳の先まで真っ赤になる。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「ねっ? 何とかなったでしょ?」

「う……うん……そうだね……(( ;゚Д゚)))」

 ――もしかしたら、以前言われた"僕に足りない物"はこれなのかも知れない。

 心中深く思うところのあった仮面少年であった。


=^ΦωΦ^= =^・×・^= =^◎ω◎^= =^・д・^= =^Φ*Φ^=


「――は、はははっ!! あーっはっはっ!!」

 再び、天を見上げて哄笑する仮面紳士。

「――おい、何がそんなに可笑しいんだよ?」

「いやいやいや、だって、あの出鱈目な魔法……ここまで来るとジョドォ殿が気の毒になってきたよwww」

「ま、アイツが出鱈目なのは今に始まったこっちゃねぇけどな――ところで、てめぇ?」

「ははは……何だい?」

「ンな妙ちきりんな仮面付けてやがるが、まさか――」


 その言葉が最後まで出る間もあらばこそ。


 ジョドォが頭上に展開させたままの大火球に目に見えない巨大な何かが激突した。

 巨大な火球は制御を失いかけ、そのまま大聖女の坐します貴賓席に向かおうとする。

 慌てて防壁を展開しようとする護衛の魔導師。

 しかし彼女も流石に王国魔術師団随一の遣い手だけに、どうにか堪えてその軌道をずらすことに成功した。

 ただ、その火球が向かった先には――


「いかん、逃げられよ!!」

 そう言われた仮面少女だが、咄嗟に動くことが出来ない。

 巨大な火球は本能的に身を竦ませ、動きを縛ってしまうのだ。

 その瞬間、茜色の光と黄金の光が趨った。

姫殿下ひでんか――!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る