第34話 ノーブラ作戦

「それで丹後くんが三ツ井さんじゃなく私を信用してくれたんです」


 人狼ゲームで三ツ井さんじゃなく私を信用してくれたことを説明すると蘭花さんは生暖かい目で私を見た。


「それってつまりはゲームの話でしょ?」

「そうですよ」

「単に三ツ井さんを人狼だって判断しただけなんじゃないの?」

「それはそうですけど」


 でも私の意見を選んでくれたことは事実だ。

 ゲームには負けたけれど満足だった。


「それにしても聞く限りその三ツ井って子は間違いなく丹後くんに気がありそうね」

「やっぱりそうですか!」

「しかもかなりの強敵だと思う」

「そうなんですよね……可愛いし、性格いいし、甘え上手だし……おっぱい大きいし……」


 具体的に私より優れているところを列挙していくと気が滅入ってきた。


「私なんか太刀打ちできる相手じゃなくて」

「奏が勝ってるところもきっとあるよ! 大丈夫!」

「具体的にどこですか?」

「勉強とか!」

「そんなところで勝っても嬉しくありません」

「あ、あとは……そうねぇ…………にらめっことか?」

「もう無理! やっぱり私には勝ち目なんてないんです!」

「嘘うそ。冗談だってば!」

「このままどんどん丹後くんは三ツ井さんに惹かれていって、きっと私のことなんてどうでもよくなっちゃうんです。あ、泣けそう。丹後くんが私に最後に与えてくれた表情はきっと泣き顔なんです」

「もう、奏。そんな風にネガティブだと本当に丹後くんに嫌われちゃうよ」


 蘭花さんは私の頭を撫でながら慰めてくれる。


「奏はこんなに可愛いんだから。自信持って」

「でもこのままじゃ本当に三ツ井さんに勝てそうもなくて」

「あ、そうだ! いいこと思い付いちゃった!」


 蘭花さんは閃き顔でポンッと手を打つ。


「なんですか? 前回の擽り作戦みたいなのは駄目ですよ。すごく恥ずかしかったんですから」

「ちょっとくらい恥ずかしくたって我慢しなくちゃ。丹後くんと付き合いたいんでしょ?」

「そ、それは、そうですけど」


 蘭花さんはニヤッと笑って秘策を教えてくれた。


「ええーっ!? それは無理! 無理ですってば!」


 それは前回の擽り作戦より更に激しいものであった。

 露出部屋着といい、擽りといい、なんだか蘭花さんの作戦はエッチなものが多い。

 余計なお世話だけど蘭花さん本人の恋愛もちょっと心配になる。



 ────

 ──



 ピンポーンとチャイムが鳴り、心臓が破裂しそうに暴れだした。

 ドアを開ける前にもう一度鏡の前に立ち、自分の姿を確認する。


「大丈夫……だよね……?」


 キュロットスカートにダボッとした大きめのTシャツ。

 そしてTシャツの下はなにも着ていない。

 つまりノーブラだ。


 これはもちろん蘭花さんのアイデアだ。


 男の子は基本えっちなことが大好きというのが蘭花さんの見解らしい。

 もし丹後くんがノーブラだと気付いたらかなりドキドキするはずで、そのドキドキを恋愛に変換してしまうのが男子の脳を利用した作戦だそうだ。


 それにノーブラだと私も恥ずかしくていつもより二割増しで可愛くなると蘭花さんは予想していた。


 もちろん拒んだがそう簡単にバレないし、バレても丹後くんの性格上襲いかかってきたりはしないと押しきられてしまった。

 もちろん今日も蘭花さんは隣の部屋で待機してくれている。


 万が一丹後くんが狼と化した場合はすぐに助けに来てくれるらしい。


 胸元がポッチリしてないことを今一度確認してからドアを開ける。


「こんにちは、奏さん」

「いらっしゃい。どうぞ」

「お邪魔しまーす」


 ガチガチに緊張したが、今のところバレている気配はない。


 また期末試験が近づいてきたので、今日は二人で勉強をする予定だった。

 真面目に勉強してきたのに、こんなはしたない格好でごめんね、丹後くん……


「あ、そうだ。奏さんにお土産があるんだ」

「そうなの? 気を遣わなくていいのに」


 なにやら大きめの箱だ。


「開けてみて」

「うん」


 リボンを解いて箱を開ける。


「ッッ!?」


 中からびよーんっと蛇のおもちゃが飛び出してきた。


「ごめん。ビックリして表情の変化があるとあると思ったんだけど……バレバレだった?」

「全然気付かなかった。すごくビックリしたよ」

「えっ!? そうなの? 目が大きくなったくらいで、ほぼ無表情だったけど」

「ごめん」

「謝ることじゃないって。こちらこそいきなり驚かせてごめん」


 私のことを思ってビックリ箱を用意してくれたと思うと、ちょっと嬉しかった。


 そんなやり取りのあと、早速勉強を始める。

 普段と変わらない流れなのにブラ一枚つけてないだけで妙に胸がサワサワと落ち着かない。心理的にも、物理的にも。


 丹後くんに質問されても問題に集中できなくてうまく教えることが出来なかった。

 無音のまま勉強を始めて一時間半。

 ほとんどなにも頭に入ってこないまま時が流れていた。


「んーっ! 疲れた」


 丹後くんは大きく伸びをする。

 私も緊張で固まった身体を伸ばしたいが、そんなことをしたらTシャツが胸元で引っ張られてとんでもないことになってしまう。


「ちょっと休憩しようか?」

「そうだね。賛成」

「やっぱり休日の昼間から勉強なんて気が滅入っちゃうよね」

「そ、そう? じゃあ今日はやめておこうか?」


 このまま帰ってくれたら助かる。

 そう思ったが、そんなことは口が裂けてもいえない。



────────────────────



次第に過激なる奏さんの作戦。

果たして丹後くんは気付くのでしょうか?


最近またたくさんの読者様が増えたみたいでありがとうございます!


物語もいよいよ佳境です!

これからもよろしくお願い致します!


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