第46話 集結する三人

 プール当日。

 俺は真奈と音色を連れて大型プール施設に向かっていた。

 奏さんは真奈や音色も参加することを快く受け入れてくれた。

 一応ちょっと変わった奴とは説明しておいたけど、奏さんは特に気にした様子もなかった。


「健斗とプールなんて久しぶりじゃない?」

「小学生の頃以来か?」

「なんかテンション上がるね!」

「頼むから大人しくしてくれよ?」


 真奈のことだ。なにをしでかすか分からない。


「あのサキュバスも一緒なんでしょ?」

「音色。その変な呼び方やめなさい」

「なにそのさきゅばすって?」

「サキュバスとは西洋の悪魔で、淫─」

「音色。お兄ちゃん怒るぞ?」


 こんな二人を連れていくなんて先が思いやられる。


 プールに到着すると既に晃壱と奏さんは到着していた。


「音色ちゃん、久し振り! ますます可愛くなったね!」

「ちょ、近い! 下賎の者が無礼だよ!」


 二人のやり取りは相変わらずだ。


「はじめまして。安東奏です。丹後くんにはいつもお世話になってます」

「ど、どーも。丹後真奈です」


 真顔でズイッと近付いてくる奏さんに真奈は怯んだ。

 成り行き上奏さんは表情の変化が少ないことは説明していたが、それでも驚いているようだった。


「噂には聞いていたけど、本当に美人だね」

「えっ……そんなことないよ」

「いやいやいや。謙遜したら嫌みになるよ? それだけ美人なら認めないと」

「私から見たら真奈さんの方が美人ですけど」


 奏さんが素で返すと真奈はきょとんとしてしまった。

 奏さんは自分が美人だという認識がまるでない。

 謙遜してるとかではなく本心だ。

 というのもどうやら彼女のなかで『美人』というのは表情が豊かであるということらしいからだ。



「ごめーん、お待たせ!」


 少し遅れて三ツ井さんがやって来る。

 慌て気味に小走りなので胸元がたゆんたゆんと揺れていた。


「えっ……ちょ、なにあれ……ホルスタ──」


 失礼なことを言いそうな音色の口を塞ぐ。

 こんな調子で一日過ごさなきゃいけないのかと思うと、早くも疲れてきてしまった。



 早速入館し、更衣室に入る。


「ありがとう、丹後! 音色ちゃん連れてきてきてくれて!」

「まあ本人も行きたがってたし」

「テンション上がるなー」


 晃壱は笑顔で着替えていく。


「っていうか晃壱。こんなこと聞くのもなんだけど、この状況なのに音色だけにテンション上がってるの?」

「え? どういうこと?」

「いや、ほら……三ツ井さんも安東さんも、おまけ程度だけど真奈もいるのに、音色まっしぐらだなって」


 同い年の三人に比べ、音色は明らかに幼い。

 その上言動も変わってるし、どう考えても見劣りする気がした。

 まあ、兄だからそう思うのかもしれないが。


「そりゃ当たり前だろ。音色ちゃんは特別なんだよ」

「特別?」

「なんていうか、汚れなき天使みたいな感じ」

「天使って……あいつ自称魔王の血を引く悪魔なんだろ?」

「そういうところが可愛いんじゃない」

「変わってるな、お前」


 人の好みは様々ということなのだろう。


「そんなことより丹後は大変なんじゃないの?」

「まぁな。俺のいとこが音色に負けず劣らず変わった奴だから。今から心配なんだよ」

「……へぇ」

「なに、そのリアクション?」

「いや。お前はこのままずっとその鈍感キャラを貫き通してくれ」

「は?」


 着替え終わってからプールサイドに行き、ワニ型のボートを膨らませる。

 まだ女子は着替えているのでそのうちに済ませておきたかった。


「お待たせー!」


 駆け寄ってきたのは真奈だった。


「ちょうどよかった。いま浮き輪とか膨らませ──」


 真奈を見て言葉が詰まった。


 ホルターネックで乳間がくり貫いたような際どい水着を着ていた。

 しかもお尻も半分くらいしか隠れていない。


 本人よりも後ろをついてくる三ツ井さんや奏さんの方が照れていた。


「な、なんだよ、その水着!」

「やっぱり健斗もそう思うよね? 本当はもう一着の方がよかったんだけど、それはやめとけって三ツ井さんと安東さんに止められちゃって」


 いったいどんな水着だったのだろう?

 想像するのも恐ろしかったのでスルーしておく。


 三ツ井さんはTシャツにショートパンツといった感じの水着だ。

 体型が露にならないタイプなのはコンプレックスからくるものなのだろう。


 奏さんはオーソドックスなタンキニだ。ギンガムチェックで可愛らしさと品の良さを感じる。


 ついでに妹の音色は飾りっ気のないワンピース水着だった。


「健斗の目、やらしい」

「はぁ? そんな水着着てる奴に言われたくないんだけど」

「安東さんも三ツ井さんも露出が少なくてがっかりしてるんでしょ?」

「普通だろ! むしろ真奈が露出過多なんだよ!」


 真奈の水着が過激すぎてせっかくの二人の水着が霞んでしまう。


「さすがは音色ちゃん! 水着姿も可愛いね!」

「へ、変な目で見るな! 恥ずかしいし……」


 それに比べて晃壱は全くブレない。

 その精神力は見習うものがあるな。




────────────────────


ついに三人の美少女による丹後くん争奪戦の開幕です!

審査委員長は妹ちゃんか?


押しの弱い三ツ井さんとエロ絡みばかりの真奈と自滅しそうなヒロイン奏さん。

どんな戦いになるのでしょう?


それと本日より新作

『妻に浮気された夜からJKと同居することになりました。しあわせに暮らしているので今さら謝られても相手にしません』

をアップしました!

おっさんとJKのザマァありのじれじれラブコメです!

よろしかったら読んでくださいね!

本作共々、今後ともよろしくお願い致します!

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美少女アンドロイドと呼ばれる無表情の安東さんが、俺にだけデレてくる 鹿ノ倉いるか @kanokura

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