第41話
「えと……何か?」
ウィリアム公爵達を助けるために
……って、まぁよくよく考えれば当たり前か。ローズを助けたとはいえ、ただの旅人であるはずの俺がスケルトンの群れを瞬殺したんだからな。
……俺、なんかやっちゃいました?にはならないぜ。そんなものは鈍感系主人公に任せとけば十分。
つまりは俺。……あれ、なんか矛盾してない?
「れ、レノ殿か……?」
「え?ああはい。そうですけど、一体どうしたのですか?何かついてます?ジロジロ見てますが」
「いや、今朝とは随分違う格好だな……」
ウィリアム公爵はまさに何か現実離れしているものを見るような視線を向けてくる。
「格好?……ああ、これの事ですか。すいません目立ちますよね」
ウィリアム公爵は「こほん!」と咳払いをし、気を取り直して、俺にそんな事を話してきた。
そこで俺はかなりキワドイ格好をしている事に気づく。まぁ……これ、初見で見たら驚くよなぁ。
スキルに使用した魔力が可視化するほどに濃密され、俺の身体の周りに展開されていたのだ。
美しい全くの縫い目のない桃色の羽衣に、手足には七色の文様、加えて身体は虹色に発光しているし……よくよく考えなくてもめっちゃ目立つな。
全て身体強化系スキルの弊害?である。
という事で、このままの格好ではスケルトンを引き寄せそうな気がするので俺はスキルを解除した。
「危ないところでしたね。結構ギリギリでしたが……間に合ってよかったです」
「……うむ。感謝するレノ殿。貴殿のおかげで我々も九死に一生を得ることが出来た」
いや、でも本当に危なかったな。あと数分遅れていたらどうなっていたか分からなかったぞ。
ウィリアム公爵を助けられなかったとか、洒落にならないところだった。……というか、そうだ。ローズだ。こんなこと話してる時間はない、彼女の事を話し合わなければ。
「もう少し雑談していたいですが……至急ウィリアム公爵にお話したい事があるんですけど、」
ローズをあの場で殺害しなかった事を見ると、狙いは彼女の命である可能性は低い。
……が、しかし安全が保証されている訳でもないので一刻も早く救出するのが最善手だ。
「話……?この謎のスケルトンの事なら」
「いえ。……いやそれもあるのですが、最もはローズの事で少し……」
俺が少し俯きながら話すと、ウィリアムは大きく目を見開き「まさか……」と絶望的に1人げに呟いた。
今朝、ローズと共に出かけたのに今は彼女が俺と共に居ないことを理解して、何かがあったという事に気付いたのだろう。
俺の事をじっと呆然と見つめてくる騎士達の余計な混乱を引き起こさないためにも、俺は1歩踏み出してウィリアム公爵に耳打ちした。
「周りの騎士達にはなるべく聞かれたくない内容です。少しだけで良いのです2人でお話することは出来ないでしょうか」
俺の呟きを聞いて、ウィリアム公爵は考え込む。
この場においてウィリアム公爵が絶対的な指揮官的役割を担っているのだ。つまり彼が抜ければその分穴が出来る。それについてを考えているようだった。
だがしかし俺としてもそう長い時間を取るつもりはないし、彼も父親としてローズの事が心配だったのか最終的には「……うむ。分かった」と頷くのだった。
そしてそうなればそこからの行動はさすがに速い。ウィリアム公爵はすぐに側近の騎士数名にこの場の指揮権を一時的に委ねる。信頼できる部下を持つウィリアム公爵だからこその大胆な行動だった。
これでマルファスの各地でスケルトンと戦っている者達にも十分な指令が行き渡るであろう。
そして移動する準備が完了する。行き先は……俺と彼が初めてであった場所である執務室であるらしい。
「2人きりで話すのならば、あそこ以上に適している場所はない」と、屋敷に入って歩いているとウィリアム公爵がそんなことを教えてくれた。
「あぁ……良かった。リゼラ様も含めて、屋敷の皆さんは無事だったんですね」
道中、大広間でメイドや執事などが忙しなく動いているのを見かけた。恐らくはこの混乱で不足している物資などを補給したりのサポートをしているのだろう。
そしてその中にはウィリアム公爵の妻であり、ローズの母親でもあるリゼラ様が居るのも見つけた。
怪我をした者を謎の光が癒している。恐らくはリゼラ様は回復系統のスキルを持っている。それもかなり強力な。
「リゼラは元々……我が妻になる前は癒しの聖女などと呼ばれていたのだよ。怪我の回復に加えて解毒なんかも出来る」
へぇ……解毒もできるとは凄い。というか癒しの聖女か。あの性格とは見事にマッチしないな。
……距離が結構離れていて、具体的なスキルが見えないのが辛い。制限の問題で『森羅万象』でうまく解析が出来ないのだから。回復スキルは貴重だから出来れば解析しておきたかったんだけど……。
いやまぁ、それは今度の機会で良いか。
「……レノ殿はあのスケルトンが、どのようなものか知っているのか?」
するとかなり進んだところで……清潔感ただよう廊下を歩いているとウィリアム公爵から質問される。
「えと……あのスケルトン自体の正体は分かりませんが、ですけどあれが発生要因なんかは……多分」
先ほどについてを思い出しながら答える。
が、いや……なんか弱気になってないか俺。ウィリアム公爵と話しているとなんか萎んじゃうというかなんというか。
今朝まではそんなこと無かったのに……。
(……あっ!!)
ながら思考をしていると、俺はひとつの懸念に辿り着いた。多分無意識にそれを感じていたんだと思う。
……俺、今ウィリアム公爵と協力しようって考えてたけど、彼側からしたらローズを易々と奪わしてしまった俺に対して怒りなどの感情を持つんじゃないか?
いやまぁ確かに俺の力不足が原因なんだけどさ。
そうなったらどうしよう。……もう逃げるしかないくない?そして1人でローズを探すしか。
……でも現実的に考えて、ローズが何処にいるのか全く予想がつかない俺には厳しいものがある。
うん。そうならない事を祈るばかりだな。
……と、そんなことを考えて移動することさらに数分。ようやくウィリアム公爵の執務室の両開きの扉の前まで到着した。相変わらずデカい。
「……さて、まぁここまで来れば大丈夫だろう。誰かに聞かれる心配はないだろうし……レノ殿、ローズが今君と一緒に居ない事について……説明して欲しい」
執務室に入り、執務用の社長椅子に座ったウィリアム公爵は重苦しい雰囲気を発する。
俺は先程の考えもあり少し身構えてしまったが「ええいままよ……!!」と流れに任せて話すことにした。
ちなみにソファに座って。俺だって度重なる戦闘で疲れてるんだ。これぐらいは許して欲しい。
「実は──」
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