第10話

 俺のスキルが無事に影響したのだろう。ガクンッと意識を失った男盗賊を見た俺は、そのままため息を吐いた。


「あぁ……疲れた。ここまでスキルを多用したのは久しぶりじゃないか?」


 まるで氷河期が通り過ぎたかのように包まれている、冷たく分厚い氷の上で俺は一人げにそう呟く。


 こんな風に余裕そうに見える俺だが……いや実際のところめちゃくちゃ寒い!!こういう能力は普通自分には影響しないのがセオリーなのだが。うん、異世界に普通を求めるのは間違いだな。


「……というかこいつ、本気で俺が能力を教えるとでも思っていたのか?」


 俺は改めてリーダー格の盗賊に視線を向ける。

 先程と違いもう意識が無いので、愛しのお仲間と同じく全身氷漬けにした。

 なんというかこう……こんな奴らでも氷漬けにすればどこか神秘的に見えるのだから、とても不思議だ。


「まぁとりあえず冒険者ギルドに自首するようにしたし、これ以上は勘弁してやろう」


 ふふん俺って優しいなどと考える。


 なぜ俺がこの男にスキルのことを馬鹿正直に話したのか……それは俺が『森羅万象』によってとあるスキルを手に入れているからだ。


 ……聞いて驚くなよ?めっちゃレアスキルであろう『記憶操作』である。俺の任意の相手の記憶の一部を好きなままに改ざんするという破格の能力だ。


 ……いやヤバくね?洒落になんないくらいヤバい。俺も全ての能力を認知できてる訳では無いけど……その中でも最上級に価値があるスキルだろう。


 ……まあしかし強力な分扱いが難しいという点もある。端的に言えば俺に対する恐怖心によって発動が左右されるのだ。

 うーん……詳しくはよく分からないが、とりあえず俺の名前を聞いて怖がる一般市民なら多分いける。けどそこそこ実力があって恐怖耐性もついている騎士や冒険者ぐらいになると無理だと思う。


 とりあえず非常に区分けが難しいのが難点だ。


 そして今俺が彼目掛けて使ったのがこの『記憶操作』スキルだ。まともな精神状態であったのなら通用しなかっただろうがしかし実際に俺と対面した事によって恐怖心に支配されていたのだからもう簡単だ。


 あとは狙いを定めてスキルを使用するだけ。

 まぁその結果は言うまでもないだろう。

 結果として野郎から俺についての記憶を全て抹消し、冒険者ギルドへと向かうように記憶を植え付けた。


 ……ふふふ。これまでの罪悔い改めるといい。


「……しかしそれにしても、『森羅万象』って本当にチート能力だよな」


 俺がSSSランク犯罪者たる所以がこのチートスキルなんだよな。……あまりにこの力が強すぎるので、俺は未だに負け知らずだ。敗北を知らない男って感じ?


 いや話が脱線したな。『森羅万象』についてだけど……このスキルの本質は瞬間解析にある。俺の視界内で使用されたスキルを瞬間的に解析し、その情報をもとに全く同じスキルを生み出すというのが強みだ。


 オリジナルからコピーを生み出すのではなく、オリジナルからもう一つのオリジナルを生み出す。


 超学習型ラーニング系スキルの中でも、他が馬鹿っぽく見えるほどに強力なんだとか。


 ……ま さ に チ ー ト !!


 そしてその解析された情報は、この世界のどこかにあるというヨハネ大図書館の最下層に設置されているアカシックレコード……つまりは原初の記録に刻まれるらしい。

 普通の方法ではそもそも大図書館自体の場所が特定不可のため、俺の能力は盗まれる心配は無いのだとか。


 ……うん。自分で言っていてよく分からんな。この辺は転移の際に女神から教えられた事なのだけど、聞き流していたことが悔やまれる。


 まぁもちろんこんな凄い力を厨二病の俺が貰ってしまったら、調子に乗るのは必然のことで……。あ、もちろん自重はなるべくしたよ?それで自爆するのはお約束だからさ。

 しかし俺は自己防衛の為に片っ端からスキルを増やしていったわけで、今では把握出来ない……とまではいかないが数えるのが少々面倒臭くなるぐらいにはスキルは増えていた。


「あぁ、まあスキルは増えてないよな。……というかいらん。こいつらのスキル増やしたところで弱すぎて使う機会がまずないと思うし」


 実際にスキルの能力を使われていないので、俺は彼らのスキルをひとつも習得していなかった。

 俺はスキル『自己分析』を用いてそれを知ることが出来る。……まあ、今も言った通り彼らのスキルなど全く欲しいとは思わないが。


 ちなみにあまりにも多すぎて『自己分析』も『記憶操作』も……もちろんほかのスキルもだが、そのほとんどは誰のから作り出したかなどは覚えていない。

 いちいち覚えてられっかよ!て感じだな。


「あのぉ……王子様。私は──」


「あっ!!」


 と「ふふん……」と自画自賛していると俺の背後から服の裾をチョイチョイと引っ張られる。その細く白く美しい指を見て……俺は思い出す。


 ……美少女を放り出していた事に。なんてこった!淑女を放ったらかしにするなど紳士の恥だろう。俺はすぐさま「はいっすいません!」と背後を振り向いた。


 ◆ ◆ ◆


 ……ここいらで少し文字数稼ぎ。


【スキル『自己分析』による東雲麗乃のステータス】


 名前:『東雲麗乃』

 性別:『男』

 年齢:『18歳』

 種族:『人間種』

 称号:『世界を渡りし者』『SSSランク犯罪者・指名手配犯』


 《身体スペック》


 体力:213

 魔力:22658397

 攻撃:316

 敏捷:312

 防御:100

 技能:39

 幸運:21


 《スキル一覧》


森羅万象しんらばんしょう』──『剣聖』『炎熱操作』『氷結操作』『思考加速』『記憶操作』『黒鎖』『魔力操作』『耐久強化』『冷凍保存』『威力強化』『身体強化』『冷気操作』『???』×169

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