食い逃げから始まる異世界逃亡生活〜チート転生者、自己防衛しまくってたらいつの間にかSSSランク犯罪者となっていた〜
紅蓮
第1話
「え、え、えぇ……これマジかよ」
俺はショックから全身の力を一気に抜いてしまい……そして、そのまま地面にしなしな〜と、座り込んでしまった。
まあ、なんの前触れもなくこんな行動に出れば、不審がる人物が出るのは当たり前だが……俺の周りには、というかここ一帯には滅多に人が来ないので、そんな心配をする必要は無い。
これは偶然でも何でもなくて、俺はとある事情で色々なところから身柄を狙われている。だから人の通るところはなるべく避けるようにしているのだ。
そして、今日もコソコソと人気のないところを選んで歩いていたのだが……俺は遂にとあるものを見つけてしまい、今こうした状態になっていた。
俺の視線の先にある物……それは、木製のひとつの掲示板である。……いや、掲示板はどうでも良いのだ。そこに貼られている一枚の……本当に薄っぺらい一枚の紙に書かれている内容が問題だった。
これー、ドッキリとかそういうのかなぁ?(現実逃避)
……とまぁそんな事は置いておいて、改めて見るとかなりショッキングな内容である。
ヒラヒラとそよ風で引きちぎられそうな、その一枚の紙にはこう印刷されていた。
『冒険者ギルドより通達。
本日を持って、現在指名手配中の凶悪犯罪者『
HAHAHA……つまりは冒険者だけでは無く、この世界の全人類が俺の敵になったって事かな?
「いやマジで……全く、笑えねぇよ」
……これ、詰んだんじゃね?
◆ ◆ ◆
「あぁ……腹減ったなぁ。なんか食べるものとか無いかなぁ」
太陽がジリジリと体力を奪っていく中、俺はとある森の中をふらふらと彷徨っていた。
キョロキョロと不審者のように辺りを見渡してみるが……そこに存在しているのはどこを見ても木、草、木、草ばっかりであるので、俺は萎えそうになる。
「……とりあえず、腹が減ったよぉぉぉぉっ!!!」
我慢ならず大声で叫ぶと、驚いたのか何匹もの小鳥が飛び去っていくのが見えた。焼き鳥にしてぇ。
……俺はもう、3日は何も食っていない。
水はとある事情で確保できるのだが、しかし食料ばっかりはどうしようも無かったんだよ!
だからこうして森の中で、食えるものを探してるんだけど……山菜どころか生き物一匹すら捕まえられないのが現状なんどす。
干からびる〜、ミイラに……はならないか。
「やっと見つけたぞぉっ!!」
すると俺の前方にある草茂みの中から、そんな威勢の良い女物の声が聞こえてきた。
……この声、どこかで聞いたことあるような。
「……ぐえっ」
ガサゴソと茂みが揺れたと思ったら、その中から一人の女騎士が勢いよく飛び出してきたのだが……おいおい、着地失敗してんじゃねぇか。
「……お?お前はたしかエルザとか言ったっけ?」
しかし、そいつは一応顔なじみの相手だった。……いや、俺はさらさらそんな気は無かったのだが、いくら振り払ってもこいつが付きまとってくるから自動的に脳内にインプットされてしまったというべきだな。
「ようやく見つけたぞっ!東雲麗乃!!」
いつもは黄金のような美しいサラサラした髪の毛なのだが……今は草や土で汚れ、木の枝なんかが突き刺さっており髪型もボサボサに崩れているので、かなり残念な感じだ。
だがエルザはそんな事には気付いていないのか、不敵な笑みを浮かべてこっちを見てきた。
「今日という今日は、貴様を捕らえて冒険者ギルドに突き出してやる!!」
鋭い金属音をたてながら、エルザは腰にある美しい鞘から一本の剣を引き抜いて県の切っ先を俺に向けてきた。
太陽の光がその刀身でキラリと反射するので、思わず俺の股間がキュンと反応してしまった。危ねぇ……俺の息子が息子たる所以を証明するところだったぜ。
あ……多分これからもバンバン下ネタ挟んでくからそこのとこよろしくな。
「おい!!これで何度目だ!人に刃物を向けちゃいけませんって母ちゃんから教わらなかったのかよ!?」
俺はそう怒鳴り散らかすが、彼女はムカつく程に澄ました顔をしながら、鼻で笑う。
「ふん……凶悪犯罪者が何を言っているんだか」
く、くそぉ……地味に反論しづらいところを突いてくるのが辛い。
「だからそれは誤解で──」
「問答無用!!貴様の様な奴の言葉など信じられるかっ!!」
さっきから思ったんだが、いちいち怒鳴りすぎだろ。その上話を聞かないお年頃ときた……どうにもこういうタイプは相手しにくいんだよなぁ。
……生理か?
「……ん?」
と、そこで俺はエルザの剣を見て疑問に思う点が一つあったので……そのまま質問してみる。
「そういえば……お前の武器は、こう……もっとキラキラキャハキャハしてる、見かけだけを重視した儀礼用のような剣じゃなかったか?」
「くそぉ、思い出させるなクソ野郎!!あのペガサス1号は先日貴様が壊したじゃないか!?」
「あ……そういえば、そうだな」
やべぇ、すっかり忘れてた。火に油を注いじまったよぉ。いやだってあれ想像以上に脆かったんだもん。
「ってか、ペガサス1号って何だよ。クソダサい名前に壊滅的なネーミングセンス(どっちも似たような意味)……これもテンプレといえばそうかもしれんけどさぁ」
「ごにょごにょと、一体何を言ってるんだ貴様は!?」
やれやれと俺が頭を抱えていると、その様子にイラついたのかエルザはさらに眉間に皺を寄せて激怒してきた。
まあ、テンプレとか言われてもエルザには分からんか。
「……しっかしそれにしても、それとてつもない名剣じゃないか?なんというか、オーラが凄いというか。なにより実践的だな」
とりあえずご機嫌取りのために、彼女のその剣を褒めてみた。……いやしかし、冗談抜きで普通にヤバそうだぞこの剣。
「ふふん、そうだろうそうだろう。貴様のような下賎な者でも少しは見る目がある様だな」
いちいち態度が鼻についてうぜぇ。……というか、そもそもお前を褒めてるんじゃなくて、俺は剣を褒めてるんだよ。
「これは我が家に伝わる伝説の聖剣!!スキル『勇者』か『剣聖』を持つものしか、そもそも抜くことすら出来ないこの世界で最強の剣だ!!」
えぇっ……なんだってぇ!!(驚き)
特に『勇者』と『剣聖』を持つ者しか使う事の出来ないというセリフが重要。ならば、こんなエルザだがそのどちらかを有してることになるのだから。
「お前の性格とアホさと脳筋からして勇者ってことは無いだろうし。……じゃあ剣聖?」
「お前今まで何度も手合わせたのに気づいていなかったのか?……。というか、今アホっていたなぁ!?アホって言った方がアホなんだぞぉ!!」
「おいおいまじか。……こんなのが剣聖とか、世も末じゃないか?」
ピーピーと子供の理論を口にするエルザは一旦置いておいて……とりあえず意外な事を聞いて、驚きを隠せない俺だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます