最終話 ただいま系TSっ娘



 資料を集めたボクは懐かしの我が家真治の家へと帰ってきた。玄関に耳を当てると中からは美少女が真治を慰めるようなふざけた声が聴こえてくる。


 もとはと言えばてめぇがボクを追っ払ったんだろうが! もう許さないよ! ボクだって怒るときは怒るんだからッ!!



「真治ただいまぁあああああああッ!!!」



 真治に玄関から跳び跳ねて真治に凄まじい勢いで抱きつくと真治と美少女は驚いた表情をしていた。



「千尋っ!? お前どうして!?」

「真治がいるところにはボクがいるものなんだよ! ただいま、真治!」

「……ああ、おかえり」



 真治がボクのことを抱きしめてくれた。その様子を見ていた美少女が今にもハンカチを噛み締めそうなぐらいにまで嫉妬しているように見える。そんな美少女をボクは睨んだ。



「美少女、お前はやりすぎた」

「なんのことかしら?」

「ボクが気づかないとでも? 麻薬とか」

「……そんな証拠、どこにあるの?」



 真治が驚いた顔で美少女を見ると美少女は何気ない顔で証拠を求めてきた。

 そんなことを言うヤツって犯人ぐらいしかいないと思うんだけど、それってボクだけかな?



「これは何かな?」

「っ!?」



 警察署で印刷してきたブツを見せると美少女が目を見開いた。やはり黒だったようだ。

 真治も美少女を疑い始め、距離を取った。



「ずいぶんやってくれるわね。でも、警察が私を逮捕できないことぐらいわかるよね?」

「そりゃもちろん。でもね、ボクはそれだと甘いと思うんだよね。もっと重い罪状が必要だ」

「そんなこと、どうやって?」



 美少女がボクをバカにするような表情で聞いてくる。見ていて腹立たしい顔だ。その顔面ごと潰してやりたい。



「決まってるじゃん」



 ボクは真治の股間に手をかけた。



「今からここでボクと真治がセックスする」

「「…………は?」」



 二人の間抜けな声が部屋に響く。けれど、ボクはそんなことに気を配ることもなく、真治の社会の窓をフルオープンして勢い良くブツを取り出す。

 そして、スカートを捲り上げて行為をするために必要な準備をする。



「美少女、そこで見て嘆くがいい。真治はボクにこそ相応しく、他の女では釣り合わないことを思い知れ!」

「やめてぇえええッ!!」



 ボクは叫ぶ美少女を無視して腰を落とし、真治の上に乗っかった。




 ◇◇◇





 それから数時間後、真治はボクだけを見つめ、マトモに相手をしてもらえなかった美少女は床に頭をつけて涙でできた水溜まりを作っていた。

 どんだけ涙流してるのさ……まあ、ボクの方も色んな液体が混ざりあってぐっしゃり濡れてるけど。



「今日の真治、ずいぶんハッスルしてたね」

「溜まってたんだよ……」



 あっ、そっか。あの日以降ボクが真治のお世話係りになったから、真治は1人でできないんだったね。通りで濃いわけだよ。



「真治、キスしよ! 深いの!」

「もうやめてやれよ。瀕死の重体だぞ」

「ボクがしたいの!」

「まったく、仕方ないな……」



 ボクと真治の口唇が重なりあう。



「んっ……」



 真治とのキスが徐々に深いものになっていく。この苦しいけど気持ちいい謎の感覚がまた良いのだ。初めの頃はボクも真治もあまりキスが上手くなくて歯が当たったりして変な感じだったのだが、今となってはすっかりプロフェッショナルだ。


 あっ、またシたくなってきちゃった。でも今は我慢しないと……



「わかった? 真治はボクのモノ。美少女ごときが生半可に触れて良い代物じゃないの。わかったらさっさと家に帰って。ここはボクと真治の愛の巣なんだから」

「そんなわけない! きっとアレよ! 洗脳されてるのよ!」

「そんなわけないでしょ。さっさと帰れ」



 美少女を外へと放り出して鍵を閉めた。


 まったく、涙ぐらい掃除して帰れって話だよね。ボクが追い出したんだけど。



「真治」

「なんだ?」



 真治に抱きついて真治の耳元で囁いた。



「だいすき」

「……ああ、俺もだ」



 真治もボクを抱きしめてきてくれた。真治の温もりが感じられてとても落ち着く。もう二度と手放さないよ、真治。これからはずっと一緒だよ。



 長い時間、二人で抱きしめ合っていた。気がつけば日が暮れていた。それほどにまでボクは真治と離れることが寂しかったのだ。


 それから夕食を済ませて、一緒にお風呂へ入った。女の子になって初めて身体を洗いっこした。真治の力が強すぎて痛かったけど、ボクの様子を見て不安がってる真治がとても可愛かった。


 そして、その夜――――



「真治、今日は一緒に寝ても良い?」

「ああ、いいぞ」



 ボクは枕を抱きしめて布団で寝ている真治の横に立って聞いてみた。

 すると、あっさりと了承してくれたので、ボクは真治の布団に入った。


 目の前には真治の顔があって互いに向き合ってる状態で、真治の顔がよく見える。

 こうして見ると、真治の顔は結構バランスも取れていて、デキる男の雰囲気がある。


 美少女に目をつけられたのも納得できるね。でも、今度からは大丈夫だよ、真治……



「んっ」



 真治がボクの手を掴んで恋人繋ぎをしてくれた。



「おやすみ、真治」



 ボクは真治に笑顔を向けると真治の頬におやすみのキスをした。



「ああ、おやすみ」

「ひゃあっ!?」



 い、いきなりはひどいよ! まったく……



 スイッチ入っちゃったじゃん……!




――――――――――――――――――――

【あとがき】


 まだもう少しだけ続きます。


 ただ、切りの良い場所がなかったので今回を最終回とさせて戴きました。


 次回はクリスマスのお話です!



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