第36話 周囲がおかしい系TSっ娘
父親に犯されると思ったらこの家族が突然親子喧嘩を始めた。
え? どいうこと? 全然理解が追い付かないんだけど?
すると千夏がボクの元へ歩み寄ってきて、首輪を外した。
「ごめんね、関係ないのに捲き込んで……」
千夏はボクを抱き締めて頭を撫でてきた。千夏はそれで満足しているかもしれないが、ボクは千夏の贅肉に押し潰されて死にそうだ。ぶっちゃけさっきよりも苦しい。
「理由を聞かせてもらうよ」
「うん……」
話を聞くと千夏は数ヶ月前に麻薬取り引きのアルバイトを引き受けたそうだ。それがどういう経緯かはわからないが、美少女にバレて脅されたらしい。
そのときの美少女の要求がボクを真治から突き放して、心を無茶苦茶に壊して欲しいというものだった。
家族は二週間ぐらい前からボクのことを調べ始め、どうするべきか悩んだ結果出した答えが今回の件だったらしい。だから、この家族はボクが青山千尋だとは思ってないし、疑ってもないようだ。
色々と頭がおかしいこの家族に対して思ったことはたくさんあったけど、これだけは言わせて欲しい。
未成年で麻薬に手を染めるな。
もちろん、大人でも手を染めてはいけないものだが、未成年でそんなものに触れられてしまっては例え相手が元家族だったとしても将来が不安になってしまう。
それにしても美少女のヤツ、どうやってここまで調べあげたんだ? 麻薬取り引きのアルバイトなんてよっぽどの立場じゃないと調べることは無理だ。それこそ麻薬取り引きの関係者ぐらい。
深く考えないで真治の元へ帰る方法もあるけど、そうなるとまた美少女が何を仕掛けてくるかわからない。今回は逮捕で済んだけれど、次回は通り魔でいきなり殺人なんてされたら堪ったものではない。
できる限り、最速で仕上げる必要がある。
◇◇◇
「というわけでどうにかなりませんか?」
「ウチ、喫茶店なんですけど……」
相談相手が思い付かなかったからボクと唯一関わりがある例の喫茶店の少女に相談してみることにしたけど、やっぱりムリそうだ。
「でも麻薬か……あの人なら何かわかるかな?」
「あの人?」
少女が連絡を入れると警察署に行くように言われた。
今回の手間賃として少女の飼っている犬の散歩も任せられたので、ボクは二匹の白い犬を連れて警察署へと向かった。
それにしてもこの犬、ずいぶん大きいね。ボクよりちょっと低いぐらいだし……なんか乗れそう。
「乗っていい?」
「わふんっ!」
尻尾でぺちんと叩かれてしまった。どうやらこの犬はお仕置きされるのが大好きのようだ。
仕方ないからボクが特別に大人なおしおきというヤツを教えてあげようじゃないか!
「キミが如月千尋ちゃんで間違えないかな?」
「あっ、はい」
突然ボクに話しかけてきた男の人は名刺を渡してきた。そこにはこう書かれていた。
「警部……?」
「ああ、警部だ」
警部ってメタボで茶色い服を着た人っていうイメージがあったけど、そうでもないんだね。喫茶店の幼女も警部さんとパスを持ってるなんて、さすが喫茶店経営者って感じだよね! あの喫茶店、事件でも起き捲ってるのかな? だとしたら草生えるんだけど。
「概ねの話は聞いてるよ。詳しくは中で聞こう」
警部さんはボクを抱き上げると二匹の犬を追っ払うかのような動きを手で示すと二匹の犬が来た道を辿るかのように帰って行った。
……あれ、大丈夫なの? 勝手に逃げたりしない?
もし逃げられたら申し訳ないんだけど……
それからボクは警部さんに抱えられて警察署に入った。今度は留置所ではなく、仕事場だ。
警部さんはボクを普通にパソコンの前に座らせ、パソコンを立ち上げたところで「腹が痛いからうんこしてくる」と言って何処かへ行ってしまった。
仕事場には誰もおらず、警部さんが出ていくときに鍵をかけて行った。
警部さんの意図を読み取ると好きに調べろっていうことかな?
「よいしょっ……」
ボクはマウスに触れてそれっぽいファイルを探す。
麻薬麻薬麻薬……あれ? これってバレたら違法じゃない? ま、まあ、カメラもないし、最悪幼女が間違えて操作しちゃっただけで誤魔化せば良いか。
「あった、三ヶ月前の麻薬だ」
逮捕された人たちの名簿を見ていると気になる名前が出てきた。
「立花 美少女……」
いやいやいやいやいや! ないって! そんなわけあるわけないでしょ!!
1人で腹を抱えて踞る。
いくらなんでも名前が美少女とか安直過ぎるでしょ!
でも、その横の欄を見てみると赤い文字で『脱獄中』と書かれていた。ついでに指名手配中の顔写真もあったからそのファイルを開いてみるとまんま美少女だった。
「うそん……」
だとしたらなんで気づかないの? 警察無能? いくらなんでも無能すぎじゃない? 警察は何をしてるんですか? 怠惰?
なんかウザいから印刷しておこ。
美少女の顔写真とその逮捕リストを印刷してポケットの中に入れる。
その後、警部さんが帰ってくると適当な話をされて真治の家へと帰された。
こんなものが使えるとは思ってない。今回の件でわかったけど、警察は無能だ。
だから、ボクはボクなりの方法で美少女を後悔させてやる――――!
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