第16話 幼馴染みと水着選びをする系TSっ娘


 あれから三ヶ月が経過し、真治も夏休みに入った。

 この三ヶ月間であったことといえば、真治が学校に行ってる間に1人で勉強したり、真治にテスト勉強教えたりしただけ。



 ……うん、本当にそれだけなんだ。


 せっかく彼氏彼女の関係になったのにデートはしないわ、キスはしないわ、ハプニング1つ起きないわ……なんで?

 男女が1つ屋根の下で一緒に生活してるんだよ?

 エッチなことの1つや2つぐらい起きてもよくない?



 あとね。最近影が薄かったあの美少女なんだけどね。この夏休みを利用して真治にアタックし始めたんだよ。

 あり得なくない? ボクと真治付き合ってるのにアタックしてるんだよ?

 『夏休みにコテージでも借りてみんなで何処か行きましょ?』だってさ。クラス1の美少女が誘ったら誰だって断れないでしょ。汚なくない?


 しかもさ、メンバーだって真治と美少女の2人だけで行こうとしたし。

 もちろん、そんなことボクが許すわけないよね♪


 きっちり妨害してやったさ。愛菜と静流さんを利用してね。

 保護者が居ないとどうとか、ご主人様が何処で何をしてるか不安だとか、千尋行くのに私だけ仲間外れやだーとか。


 結果としてハーレム状態が生まれてしまったけど、静流さんという頼もしい味方がいるので、変なことにはならないでしょう!



 というわけで今日はコテージが川の近くにあるとのことなので、愛菜と水着を選びにやって来ました!!


 だけど――――――



「如月ちゃんにはこれがお似合いよ」

「だまれ」



 この身体に合うようなマトモな水着が見つからない悲劇。中学生が着るような水着しかなくて……いや、1年前は中学生だったけどね? 高校生にもなれば一味違うでしょ?


 それに真治に見せるならもっと可愛い水着じゃないと……



「愛菜、このヒモとかどう?」

「絶対ダメ」



 三角形の形をしたヒモを見せると愛菜はボクから取り上げてそっと戻した。


 ……変だったかな?



「そういえば如月ちゃんって元男としての恥じらいとかないの?」

「ない! むしろ前よりも自分をさらけ出してる!!」

「そうだったわね如月ちゃん」



 今さら何を言ってるの? というかさ……



「如月ちゃんはやめてって言ったよね!?」

「えー? なんでー? 可愛いじゃん」

「如月ちゃんは制服の名前だよ!!」

「え? 千尋の名前じゃないの?」



 コイツ、何年間ボクと一緒に過ごしてきたんだよ。他人の名字ぐらい覚えろって……言おうとしたけど、よくよく考えたらボク戸籍なかった。


 つまりボクは名前がないから、名無しの権兵衛さんだね。



「もう如月ちゃんでいいや」

「良くないでしょ! というか早く水着選んだら? もうすぐお昼よ?」

「……お昼?」



 携帯を取り出して時間を確認すると画面には11時55分の文字が見えた。



「やばっ! 美少女が来る!」



 考える隙も無かったので、スク水でいいやという結論に至り、ボクは愛菜の手を引いて美少女がアパートに来る前に帰る。


 あの女と真治を二人っきりにさせるわけにはいかない!



 走ってアパートまで戻ったボクは玄関を開ける。



「真治! 大丈夫!?」

「は?」



 別になんともありませんでした。それどころか美少女は近所のお婆ちゃんを助けてたらしく、遅れて来た。


 ……別に慌てる必要なかったじゃん。




「お前らは何をしに出掛けたんだ?」

「「水着を選びに……」」

「水着は?」

「「買ってない」」

「おい」



 やっぱりヒモでも買ってくるべきだったかな?




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