第17話 美少女はモノローグだけで十分だと思う系TSっ娘


 今日は美少女がボクと真治のデートのために計画した旅行。本当にありがとう。キミの計画は全て、このボクが引き継いであげるよ。



「みんな忘れ物はない?」

「「「はいっ!」」」



 静流さんの運転で旅行先であるコテージまで向かう。


 真治と美少女が横に並んでいるけど、ボクはその程度で嫉妬する程度のヤツじゃない。

 ボクだって成長しているのだから。



「あの……千尋さんや。どうして俺の膝に座ってらっしゃるのでございましょうか?」

「だめ?」

「いや、良いけどさ……」

「なら良いじゃん」



 美少女が真治に会話を試みようと話しかけるが、そんなことはボクが許さない。全てボクが受け答えしたやった。

 真治を寝取ろうとするような美少女ごときにセリフを与えてやる価値もない。こんなヤツはモノローグだけの存在で十分だ。この旅行ではひと言も喋らせんぞ!



「如月ちゃん、真治が辛そうな顔してるよ」

「如月ちゃん言うな。……でも真治ってアレだよね。車酔いするんだよね」

「うっぷ」

「退いてあげなさいよ。というか退かないとリバースしたら降りかかるわよ」

「それはそれで本望だ!!」

「えぇー……」



 まあ、真治が辛いなら仕方ないから、退いてあげよう。



「ほら、美少女。ボクにそこを譲りなさい」



 美少女に真治の横を開けるように言うが、美少女はイヤだと言って退かなかった。



「退かないと真治のゲロはボクが飲んじゃうよ」



 美少女は顔を引き摺りながらもボクのような真治に見合う可愛い女の子がゲロまみれになるのを許容できなかったようで、しぶしぶ席を譲った。



「真治、大丈夫?」

「ああ……お前が退いてくれたおかげで少しはな。立花もありがとな」



 美少女が真治に気にしないように言った。




 それから車を乗り継いで1時間ほど経ち、ボクたちは高速道路のサービスエリアに立ち寄った。



「ねえ、少しは喋らせてあげたら? 本当にモノローグだけの存在になってるじゃん」

「え? いいじゃん別に」



 だってあんなモブにセリフを与える余裕なんてないぞ。むしろアイツに喋らせるわけにはいかないんだよ。真治に余計なことを吹き込まれるかもしれないからな。



「良くはないでしょ! 相手はあのクラスで1番可愛い美少女なのよ!? ラブコメ部門においてクラス1の美少女に好かれるというのは定番中の1つなのよ!? それなのにアンタはそれをないがしろにして許されると思ってるの!?」


「うん、許させるよ。だってこれは親友くんとTSっ娘が六畳1間でイチャイチャする物語だもん。他の奴らは全員モブと一緒だよ」

「イチャイチャはしてないけどね……」



 ホントにね! おかしいよね!

 タイトルにもイチャイチャって入ってる癖に真治が今まで通りの接し方してくるせいで何も進展が起きないんだから!


 普通はボクみたいなTSっ娘が親友くんに対して恋心を抱いて、それに混乱しつつも、恋愛を成し遂げてゴールするって流れのはずなのにさ!


 真治のヤツ、ボクがどれだけ色仕掛けしても「服を着ろ」とか言ってさ。酷くない?


 夜だって真治の布団に潜り込んで触ったりしてるけど、真治寝るの早いからつまらないしさ!

 なんなの? いつになったらイチャイチャできるの?


 というかイチャイチャ以前にファーストキスはまだですかッ!?



「もういいや。今日は真治がお風呂に入ったら乱入してやる」

「そう上手く行くかねー」

「行くよ。というか行かせる!」


「ああ、そう……」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る