第33話 制服デート系TSっ娘
雲一つない晴れた空、眩しい太陽! そして、休日なのに
「お待たせ、待った?」
「いいや、待ってない。というか一緒に来ただろ?」
「それは言わない約束だよ」
まあ、当たり前なんだけどね。住んでるところが一緒だし……でもさ、こういうやり取りって彼氏彼女みたいで嬉しくない?
「真治、行こっ!」
「そうだな」
ボクたちは最寄り駅の改札を通って電車に乗り込んだ。
今日はデートだけど、初めてということもあって何をすれば良いかわからないから、何をするべきか困らない遊園地へ行くことに決定した。
遊園地はボクが事前調べて「ホテル街が近い遊園地」にしておいた。遊園地として充実してたし、観覧車からの絶景も素晴らしかった。ホテルが近いからそのまま帰り際もムフフなことができちゃう素晴らしい遊園地だ。
「結構混んでるね」
「そうだな」
休日なのにも関わらず、電車はとても混んでおり、ザ・密っていう感じだった。
まあ? ボクレベルになれば真治と濃厚接触って感じになっちゃうけどね?
……あっ、アレ痴漢かな? どんな人がされてるんだろ?
身長が低いから痴漢がすぐにわかった。痴漢している男とされている女に目をやると女はとても困ったような表情をしていた。
助けてやろうと思ったのだが、その直後、女のとある部分に目が行いった。
「…………」
女は一部に偏った贅肉をバルンバルンさせやがって、見てるだけでイライラする。ボクの助けてやろう精神が何処かへ吹き飛んで行った。
「千尋、アレ痴漢じゃないか?」
真治が気づいてしまった。たぶん、ボクの視線がそっち向いていたからそれを追ったのだろう。余計なことをしてしまった。
もし、これで助けられた女が真治に一目惚れでもしたら堪ったものではない。何としてでも阻止するべきである!
「おい、なにしてんだ」
決意して真治の方を向き直したときには既に遅かった。真治は痴漢野郎の手を掴み、声を出していた。
そのタイミングで電車が駅へと停まると、真治はそのまま電車を降りてしまった。仕方ないのでボクも電車から降りて真治の後を追った。
そんなわけでやって来たのがこの駅員室だ。
「というわけです」
「わかりました。あとはこちらでお任せください。ご協力、感謝します」
真治が事情を説明し、さっさと退散しようと真治を誘導したときに真治に助けられた女が声をかけた。
「あの、せめてお名前だけでも!」
「ボクの旦那様だから教えなーい。早く行こっ?」
「あ、ああ……」
ボクたちは呆然とする駅員さんと女、痴漢野郎を残して駅員室をあとにした。
あの女、見覚えがあると思ったけど、やっぱりアイツだったか。
「なあ、さっきの女性って……」
「うん……」
きっと面倒なことになるよ。もう半年近く連絡取れてないからね。まったく、どうしてこんな所で遭遇するのかな、姉ちゃん。
「じゃあ気分変えて行こうぜ!」
「そうだね! 早く行こっ!」
というわけでボクは気持ちを変えて真治と共に遊園地へと向かった。
「お兄ちゃんに連れてきて貰えて良かったね、楽しんでおいで」
ちっ、このスタッフ風情が……ボクは妹じゃねぇ、彼女だ! 次は容赦しねぇから、覚えてやがれ!
「何から行くの?」
「手始めにメリーゴーランドから行くか」
「そうだね」
メリーゴーランド、遊園地に入って真正面にある大きな乗り物。ボクは身体が小さいから身長制限が設けられているジェットコースターとかには乗れない。
だから、こういうお手軽なものから遊んで行くしかないのだ。
「真治と同じ馬がいい!」
「そうか……よっと!」
ボクが真治に頼むと真治はボクを抱えて馬に乗せ、その後ろに乗った。一人席を二人で座っているから真治とめちゃくちゃ密着している。シートベルトも止めたら真治の真治がぶつかった。
「えっち」
「すまん……」
そういうのはあとでね? 今はデートしたいから。
それからメリーゴーランドを乗りこなし、コーヒーカップやゴーカート、迷路、その他色々楽しんだ。
「お化け屋敷だって」
「行くか?」
「うん!」
「……お前、お化け苦手じゃなかったか?」
うん、大の苦手だよ? 失禁するぐらいにまでは全然苦手だよ? でもボクはつり橋効果っていうヤツを期待して乗り込むんだよ。
そのためならお漏らしの1回や2回ぐらいどうということはない! ……はず。
でも、お化けみたらボク泣き出すかも……
「……やっぱりやめとくか?」
「うん、真治とくっつければそれでいいや」
「もうすぐ日も暮れるし、観覧車行くか」
「そうだね!」
いよいよメインイベントの観覧車!
ここで真治がキスをしてくれればボクは満足だよ!
「ではごゆっくり~」
ボクたちがゴンドラに乗り込むとスタッフさんはそう言ってゴンドラの扉を閉めた。
……これってアレだよね? ヤれってことだよね? だからごゆっくりとか言ったんだよね? じゃあ、失礼しまーす。
「千尋っ!? お前なにして!」
「元気な真治くんを慰めてあげようかと……興奮するでしょ?」
「そりゃするわ! 俺の憧れのシチュだからな!」
ボクが真治を慰めると暴走した真治がボクを襲ってきました。
きゃーっ♪
「めちゃくちゃ焦ってたね」
「正直間に合わないかと思ったわ」
「ボクは間に合わなかったよ……」
慌てて鞄の中にしまったもん。……え? 何がとは言わないよ。ただ、とても大事なものを身につけてないんだ。だから、溢れちゃうかもね?
「お手洗い行ってきます」
「お、おう……」
トイレで色々と処理をしてベンチに1人で座っていた真治に声をかけた。
「近くにね、良いお店があるんだけど寄って行かない?」
ちょっと顔を赤面させてもじもじさせながら言うと、それまでキリっとしていてカッコよかった真治の目がギラリと欲望に満ちた目に変わった。
「しょーがないなぁ? 1泊だけだぞ?」
「うん♡」
別にホテルに行くとは言ってないんだけど、真治がやる気になってくれたならボクはいくらでも付き合うよ。
だってボクは真治のことが大好きだから!
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