第32話 デートの服選び系TSっ娘



「ふへへっ……」

「なによいきなり気持ち悪い」



 いやぁ~だってさ、真治と……ふへへっ。



「デート、楽しみだなぁ……」

「あー……それでそんなに気持ち悪いことになってるんだね。じゃあせっかくだし服でも買いに行く?」

「そうだね、じゃあ付き合ってよ」



 以前にも言ったけど、ボクは私服をほとんど持ってない。だからデート用のお洒落な服を買いに行く必要がある。

 好きな人とデートするならお洒落とかは万全な状態にするべきだ。

 だけど、ボク1人では選んだ服が似合うのか全然わからない。そこでボクは強力な助っ人として愛菜を同行させることにした。



「買い物か? 俺も行こうか?」


 真治が横から話しかけてきた。


「真治、女の子のお洒落はデート当日のお楽しみだから付いてきちゃダメだよ」

「そっか……」


 ちょっとしょんぼりしてる真治、可愛い。


「じゃあ、楽しみにしてる」

「うん♡ 楽しみにしてて♡」

「……二人とも、なにかあった?」

「えっ!? い、いや、何もないよ!?」



 別にエッチしたことぐらいボクは話しても良いとは思ったんだけど、真治が逮捕されるような気がするからやめてくれと言ってきたので渋々内緒にすることにしたのだ。だから隠し通さないといけない。

 例え隠すのが下手でバレちゃってもそれはボクの責任じゃない。



「はぁ、もういいわ。じゃあ千尋、放課後にね?」

「うん!」



 ボクたちがデートすることを話していたその頃、教室の窓際で1人、聞き耳を立てていたクソビッチ美少女が動揺していた。



「(な、なんで!? こんなことないって確信してたのに! この私が負けた……? そんなこと、許されるわけがないじゃない)」



 それから、時間が過ぎて放課後になった。

 ボクと愛菜は予定通りショッピングモールへと洋服を探しに向かった。



「それで、どんな服にするの?」

「そうだね。千尋はおさな……小さいから大人っぽい服より可愛らしい服の方が良いね」



 今、「幼い」とか言いかけてた気がするけど、今回は教えて戴く立場なのであまり強く出られない。だから、今のは許してあげようじゃないか。



「ワンピースとかスカートも良いけど、あえて短パンにしてみても良いかもね」

「どうして?」



 スカートの方がかわいいし、真治を観覧車で誘惑とかできそうだし良くない?



「普段スカートばかりでズボンとか体操服ぐらいしか持ってないでしょ?」

「そうだね」



 スカートばかりというかメイド服ばかりという方が正しいような気はするけど。



「だからギャップよ。ギャップに勝てる人間は存在しないの。というわけで短パン。わかった?」

「うん」



 スゴい力説に思わず頷いてしまった。

 実際ボクも真治に対するギャップ萌えはスゴい理解できる。あの男らしい見た目でニンジンが嫌いとか言われて萌えないことがあるだろうか? いや、ない。絶対に萌える。



「次はトップスね……これは白いTシャツで良いかも」



 というわけで無地の白いTシャツを渡された。それから靴下は白のソックスに決まった。

 そして、ボクたちは最大の関門に当たった。



「うーん……どっちも似合いそう……」



 愛菜が掲げているのはジッパー付きの白い半袖パーカーが二つ。違いはジッパー付近にあるラインの色とフード付近にある紐の色が水色かピンク色かということだ。


 水色は普通にかわいいけど、ピンク色はボクの髪色とマッチして良い感じになる。たしかにこれは悩んでしまう。


 悩むならどうするか?


 答えはもちろん、両方買うだ。



 そして、ボクが会計するためにレジへと持って行こうとしたそのとき、ボクは気づいてしまった。



「……これ、別にデートじゃなくても着られるよね?」

「あっ……」



 肝心のデートの服を買いに来たのに、全然デートというのには相応しくないような気がしてきた。こんなのはただの私服だ。デートに相応しい服装ではない。

 思い出せ、男のときは真治とデートするという妄想をしていたときの服装を……!


 そのとき、ボクの脳内に失われた記憶が蘇ってきた!



「制服、デート……?」

「それだ!」



 ボクの身長に見合うデートに相応しい服が見当たらなかったこともあって、制服デートということになった。

 選んだ私服は結構かわいいし、気に入ったのでお小遣いを使い果たして購入した。



「というわけで制服デートね!」

「まあ、学生らしくて良いかもな」

「でしょ? そうと決まれば――――」



 真治を押し倒して上に乗る。今日は帰ってきてすぐに夕食を作ったため、制服如月ちゃんから着替えていない。前回はメイド服で襲ったけど、制服如月ちゃんで襲うと普段学校に着ていく服でイヤらしいことをしてるから変な気分になる。


 なんか、間違えて授業中にも襲っちゃいそう……



「千尋?」

「……だいすき♡」

「ああ、俺もだ」



 真治と深いキスをして心が満たされた。

 キスを終えると真治がひっくり返って体勢が逆になり、真治がボクに覆い被さった。



「もう、真治はエッチなんだから……!」

「悪いな。ならやめるか?」

「……いじわる」

「冗談だよ」



 その日もボクと真治は熱い夜を過ごしたのだった――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る