第34話 彼氏が逮捕された系TSっ娘



 ボクが真治とデートから帰ってきたのは翌朝だった。ボクは早速メイド服に着替えていつも通り家事をこなしていく。

 その間、真治にはクリーニング屋さんに服を取りに行くように頼み、真治が帰ってくる前にパパッと家事を終わらせた。



『続いてのニュースです。行方不明になった男子高校生 青山千尋さん(16)を探すため、今日もご家族が警察と協力して捜索を続けています。何か知っている方は……』



 テレビをつけると偶然ボクに関するニュースがやっていた。

 あー、なに? まだ探してるの? 見つかるわけないじゃん。ここにいるんだから。

 だいたい捨てたのはそっちだし、元々ボクなんて都合の良いサンドバッグみたいなヤツだったんだから、今さら探すのもおかしな話だよね。さっさと逮捕されれば良いのに。



『速報です。青山千尋さんを誘拐していたと思われる男が逮捕されました』



 ……はい?



『逮捕されたのは青山千尋さんと同じ高校に通う男できっかけは千尋さんのモノと思われるジャージを所持していたことから逮捕に到りました』



 ……え? なに? 真治、捕まったの? ボクがクリーニング屋さんに取りに行くよう言ったから?


 スゴい罪悪感が出てきた。元はと言えばボクが住まわせてくれと頼み込んだことが原因だし、ジャージを処分しなかったのもボクの責任だ。

 ボクのせいで真治が逮捕されるのはやだ!



 そう思っていたときだった――――



 突然閉まっていたはずの玄関が開き、警察が侵入してきたのだ。



「青山千尋さんですね?」

「いいえ、人違いです」

「こちら突入部隊。容疑者の自宅にて青山千尋と思われる少年の身柄を確保した。

 どうやら記憶が混乱してる模様、つきましては――――」



 どうしよう、話を聞かない系の警察官だ。このまま何の抵抗も示さなければ真治は有罪になってボクはあの忌まわしい家にご返却されてしまう。

 そうなれば女になったボクを見て父さんが何をするか、そんなことぐらいは容易に想像がつく。


 せっかく真治と結ばれたのに、そこに他の男はいらない。もちろん、女もだけど。



「ボクは女の子です!」

「メイド服を着てることから、容疑者に性的暴行を受けてたと思われる。また、自分は女であると言い張り、精神的障害を負っている可能性がある」



 ダメだ……この警察官、ボクの言うことをちっとも聞いてくれない……スカートを捲れば女の子であることは普通ならわかるけど、この警察官のことだ。きっと「男性器が切除された模様」とか平然とした顔で言うんだろうな……



「おじさんと一緒に行こうか?」

「やだ!」

「パパとママに会いたくないの?」



 この警察官さ、ボクが青山千尋と思ってるならその言葉遣いはおかしくない? というかこんなかわいらしい幼女をどうやったらニュースとかで見た写真の人物と見間違えることができるの? 頭おかしくない?

 でも、幼女らしさを全快にして如月千尋と青山千尋は別人であるということを証明させれば良いんだ! 今のボクならできる! というか真治を救うにはそれしかない!



「パパもママもいない!」

「そんなウソはつかなくて大丈夫だよ。もう悪い人は逮捕されたからね? ほら、行こうか」



 何を言っても聞かない警察官はボクを抱き上げて無理やりにでも連れだそうとする。

 そんなときだった、ボクの助け船がやってきたのは――――



「如月ちゃん、どうしたの? 真治は?」

「愛菜、このおじさんニセモノ!」

「えっ?」



 ボクの発言に驚く警察官。その隙を愛菜は見逃さなかった。


「ごふっ!?」


 愛菜の蹴りは警察官の股間にクリティカルヒットし、警察官はその場に跪いた。

 だが、愛菜は他の警察官に取り抑えられ、茶番劇はすぐに終わった。

 すると、近くにいた女性警官がボクに訊ねてきた。



「え? アナタ、青山千尋じゃないの?」



 ボクは首を縦に振る。

 どうやらこの女性警官は聞く耳を持つようだ。聞く耳がないのはあそこで股間を抑えているヤツだけだったようだ。



「ちょっと待って、ならアナタは誰? まさか女児誘拐?」



 女性警官に女児誘拐を疑われたので、ここはきちんと挨拶するべきだろう。

 ボクはスカートの裾を摘まみ、足をクロスさせて軽く膝を曲げ、頭を下げて挨拶をする。


「如月千尋と申します。真治に仕える戸籍、家族、お金なしのメイドさん兼彼女です」

「……参考人として警察まで来てくれる?」

「はい! あっ、そこの女は公務執行妨害で現行犯逮捕して良いですよ」

「酷くないっ!?」



 ボクはパトカーで連行された。愛菜も参考人としてパトカーで連行された。愛菜に関してはもはや容疑者レベルで連行しちゃってよかったのに……



 警察署に到着して始めにされたことは身体検査だった。女性警官に身ぐるみ剥がされてお嫁に行けない身体にされた。

 昨夜、真治とイチャイチャでラブラブな夜を過ごしてしまったから、ちょっと不安になったけど、きちんと掻き出しておいたお陰で変なことは起こらなかった。

 もしここで真治のアレが出てきたら余計に話が拗れちゃうからね。よかったよ。



「一応親御さんにも確認しないといけないから、悪いけどついてきて貰える?」

「……はい」



 えー、家族とか会いたくないなぁ……そんなモノと会わせるぐらいなら真治と会わせて欲しいよ……






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