第13話 幼馴染み、攻略完了系TSっ娘



「あ、あれ? ここは……」

「愛菜、やっと目が覚めた?」

「千尋っ!? これどうなってんのよ!?」



 倉庫に閉じ込め、両手足を拘束された愛菜が無理やり振りほどこうとする。



「ボクの真治に何を手ぇ出してんの? きちんと立場というのをわきまえてよ」

「立場? 私は幼馴染み枠なのよ!? わきまえるのはそっちよ!」



 は? 何を言ってるんだコイツ。



「3日に一度少し喋る程度の分際で、毎日真治とイチャツキながら話しているボク相手に幼馴染み枠とかよく言えるね?」

「クッ! たかがTSっ娘風情が真治と結ばれるわけないじゃない! そんなことをすればホモに過ぎないのよ!」

「元々ホモなボクには関係ない!!」

「自分で言うのね……」



 まあ、真治が好きなのは事実だったし、それは認めよう。

 だがしかーし! 今の時代、LGTBは世界中で認められているのだ!

 つまりボクのしていることは間違っているわけではない!



「TSっ娘と親友くん。これがあれば証拠は十分だ! モブ風情がボクの真治を奪おうとするなんて笑止千万! 片腹痛し!」

「くっ……!」

「真治はボクのもの。それを理解してくれるなら今すぐ解放してあげるよ?」

「イヤだって言ったら?」


「殺してもいいんだけど、それだと真治に何を言われるかわからないから、放置。トイレとか行けなくてどうなっちゃうんだろうね? あーあ、可哀想だなー」



 愛菜の不安を煽るようなことを言い、愛菜が真治から引くことを誓わせるように誘導する。

 もちろん、あとでとぼけられないように録音器の電源を入れる。



「……わかったわよ。理解はしてあげる。千尋が真治のことを愛してるってことはね」

「それで? 認めるの? 真治がボクのものだって」

「…………」



 愛菜が目を逸らした。

 苛立ちを覚えて思わず足が出そうになったけど、なんとか堪えた。



「もしかして真治を待ってる? 残念だけど真治は老夫婦たちと隣町まで買い物に出掛けてるからあと二時間は帰って来ないよ? それでトイレ行かなくていいの? 朝から行ってないよね? そろそろ限界じゃないの?」

「別にアンタに見られるぐらいなら、これぐらい!」



 そんなこと想定内。だからボクは鞄からカメラを取り出し、撮影を開始した。



「ん? これぐらい何だって?」

「ちょっ!? 汚ないわよ!」

「汚ないのは愛菜のウン――」

「うるさいっ!!」



 ボクが言いかけた言葉を無理やり、大声を出してボクの声をかき消した。



「はいはい! わかりました! 特別に引いてあげます! どうせあの美少女に勝てないのはわかってたし、いいですよーだ!」



 ようやく敗けを認めたね。やっぱり自分に素直にならないとね?





 ◇◇◇



「ただいまー」

「お、おかえりなさい……」



 真治が帰ってきたので、出迎えるとやっぱり恥ずかしくて、マトモに真治の顔が見られない。



「真治、おかえりー! ――フギャッ!?」



 愛菜がいきなり裏切ろうとしたので足を引っ掻けてやる。

 すると愛菜は盛大に転び、そこに丁度一歩踏み出した真治の足が乗っかり、愛菜を踏みつけた。



「「あっ……」」



 真治は足を退けようとするとバランスを崩してボクの方に倒れてきた。



「え?」



 そのまま壁にガンっ! と頭をぶつけ、ボクは気を失った――――――






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