第8話 休日に映画デートする系TSっ娘


「すー、はぁー……」

「おいヤメロ。普通に恥ずいわ」



 今日は真治と映画デートする日だ。見る映画はもちろんアレだ!



「ででんでんででん!」



「いやー、今日という日を待ちわびたよな」

「そうだね! でもデートならもう少しドラマチックな映画の方がよかったかな?」

「誰がデートと言った」



 え? 違うの? デートでしょ? デートだよね? うん、デートだ! これはデートだよ! イエーイ!!!


「まったく……コイツ、そんな簡単に言ってわかってんのかな……(ボソッ)」

「え? 今なにか言った?」

「いや、なんでもねー。ほら、行くぞ」



 ボクと真治は電車を降りて映画館へと向かった。



 ◇◇◇



「すいません、カップル割ありますか?」

「おい」


 真治を無視して店員さんに問いただす。


「申し訳ありません。こちらの作品、カップル割は無いんです」



 まあ、カップルで見る作品じゃないから仕方ないね。

 ボクはポップコーンを半分こに出来ればそれでいいよ。



「では高校生1枚と……小児1枚ですね」



 ちょっと待ってよ。誰が小児だって?

 聞き捨てならないなぁ? よくわからないから1発殴らせろ。



「おい、千尋。やめろって! すいません、高校生二枚で!」

「はっ、はいっ!」



 真治に抱き上げられ、動きが制限された。でもこれはこれでアリなので、店員さんよ。特別に許してあげよう。むしろ真治と濃厚接触だから褒め称えてあげよう。



「チャイルドクッションいるか?」

「必要ない! 見えなければ真治の膝の上に座るッ!!」

「1時間半も膝の上に座られたらさすがに死ぬんだが……というかそろそろ降りろ。ポップコーンが持てないだろ」

「ボクが持つから大丈夫。真治はお姫様抱っこでもしてれば良い」

「俺がロリコンの目で見られるからヤメロ」



 えっ!? 真治ってロリコンじゃなかったの!?!?

 それってつまり、今のボクは真治にとって恋愛対象外ってこと……?



「この世の終わりみたいな顔をすんな。失礼だろ」

「真治がロリコンじゃないわけない! 真治はロリコンだ! ロリコン! ロリコン!」

「ちょっ!?」



 周囲の人たちが真治に謎の視線を送っていたが、真治はボクを抱えたまま逃げるようにポップコーンを購入し、映画館内へと向かった。



「はぁ……どっと疲れた……」

「膝枕する?」

「いらんわッ!」



 そして、映画が始まった。ボクの座高では前の席でスクリーンが見えなかったので、結局真治の膝の上で真治に密着しながら映画鑑賞を行なった。




 ◇◇◇



「面白かったね。真治!」

「ああ……(思ったよりも千尋の感触が柔らかかった……)」



 やっぱり1時間半も上に乗ってたからキツいのかな?

 少し休ませてあげよ……



「真治、そこのお店で何か食べて行こうよ。ポップコーン買ってくれたから、今度はボクが奢ってあげるよ」

「いや、悪いし自分で――――」

「いいの! 住まわせてくれてるんだからそのお礼! だから好きなもの頼んでよ」

「……じゃあ折角だし、ありがたく奢ってもらうとするか」




 真治と共にお店に入り、メニューを見る。



「おいしそう……」

「頼めばいいじゃん」

「これ、カップル限定なんだよねー」

「いいんじゃね? 食べきれなかったら俺も食べてやるから頼めよ」



 ボクがカップル呼ばわりした時は文句言ってたくせに自分からは普通にカップルだって言うなんて、ズルいよ……



「じゃあ、頼むからね。後悔しないでよ!」

「は?」





「すいませーん。『カップル限定、この空間は二人のモノ。誰にも邪魔されない黄金のゴッドパフェ! ~二人でイチャイチャイチゴ盛り、閉店まで楽しみなさい!~』をお願いします」

「めっちゃ恥ずかしい名前のメニューだなッ! おい!」




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