第7話 クラスで一番の美少女に話しかけられる系TSっ娘



「真治大好きぃ……」

「お前やめろ……俺を殺す気か……」



 クラスメイトたちの嫉妬が混ざった怪しい視線が真治を包み込む。

 ちなみにコレは部外者が教室でイチャついてるわけではない。


 というのも、真治の担任が「そうか! 岡崎の婚約者か! 折角だし、授業でも見て行きな!」というノリで授業参観を許可してくれたのだ。



「真治くーん? ちょーと大事なお話があるんだけど、いいかな?」

「お、おう……千尋、ここで待ってろ」



 真治はクラスメイトの1人に呼び出されて廊下へ出ていった。そして、真治を追いかけるかのごとく、クラスの男子たちが教室から出ていった。


 そして、教室が女子のみになり、女子生徒たちが一斉に押し寄せてきた。恋愛という概念が存在しないこのクラスにおいて、ボクと真治の関係について興味を示さない女子は居なかった。



「ねえねえねえねえ! 岡崎とどういう関係なの!? もしかして付き合ってる!?」



 ふっ、仕方ない。キミたちに真実を教えてあげよう。だから真治には近寄るなよ?



「付き合ってはないかな? でも将来は結婚するんだよ! 今だって一緒に暮らしてるし、ご飯だって作ってあげてるし……」

「「「ど、同棲ッ!?」」」



 キャーとか色々と騒がしい女子たちだったが、これで真治がボクのものであることがクラス中に知れ渡った。

 あとはクラスメイトたちが勝手に広めてくれるはず。

 愛菜ですら手に追えなくなるだろう。


 だから、これで真治はボクのものになったと――――――


 そう思っていた――――――




 ◇◇◇




「…………」

「…………」



 ボクは何故か真治の家で、クラスで一番可愛いと評判のある少女。立花たちばな美咲みさきとお茶を飲んでいた。


 ……気まずい! なんでこの人一切喋らないの!? というかボクと真治の愛の巣になんでこんな部外者がいるの!?



「貴女、いったいどういうなの? 佐倉さん程度の存在でしたらそこまで気にしなかったけど、私から岡崎くんを取らないで」

「は?」



 コイツ何を言ってんだよ。真治はボクのものだから! お前みたいなヤツに真治は釣り合わないんだよ。さっさと消え失せろ。


 ……でも、愛菜を『佐倉さん程度』と呼んだ度胸だけは褒めてやろう。ボクにとって、『真正面からぶつかるウザったいことで定評のある愛菜』を簡単に退けてくれそうだからね。



「岡崎くんは私を守ってくれたの。貴女と違って私には恋愛ストーリーがあるの。それなのにメイドだかなんだか知らないけど、私の邪魔しないでくれる?」



 彼女は全てを言いきったような顔をした。

 そんな彼女にボクが返した答えはたった1つしかなかった。




「知らんよ」




「え?」

「だってボクから見たら何の真実味もないただの架空の事実じゃん。証拠もなくして変なこと言わないでくれる? あと、アナタは真治に釣り合わない。真治に釣り合うのはボクだけだから。わかったらさっさと帰って」



「えっ、ええー……

(話が通じない厄介なタイプの人種ね……でも、岡崎くんから言ってくれればすぐに折れてくれそうね)」



 って、思ってるだろうなー……。でもね。ボクは真治に好きじゃないと言われた程度じゃ終わらないよ。好きじゃないなら好きにする。それがボクのやり方だから。



 すると、このタイミングで真治が部活を終えて帰ってきた。



「え? 立花さん?」

「岡崎くん。千尋ちゃんとお話してただけだから気にしないで。じゃあ、私帰るから。また明日ね」


「あ、ああ……」



 邪魔者は立ち去って行った。これで真治はボクのモノだ!!



「真治おかえりー!!」






 ◇◇◇




 ……あれ? 真治のワイシャツが1枚足りない? おかしいな……ボクの1人遊び用のワイシャツを含めても足りないぞ?



「ご主人様ー」

「その呼び方ヤメロ」

「ボクの真治ワイ……真治のワイシャツが1枚足りないんだけど、知らない?」


「おい、今なにを言いかけた?」



 ボクは真治から必死に目を逸らす。

 すると、真治はため息を吐いて、質問に答えた。


「いや、知らないな。クリーニングにでも出したんじゃないか?」



 いや、真治の家に来てからはクリーニング屋には行ってない。……まさか。



「アーッ!! やられたー!!」

「千尋? どうした?」



 くそっ! まさかあの女、ボクがお茶を淹れてる隙に盗んでいたのか! 手際の良いチンパンジーめ!


 覚えてろよぉ……!




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