第23話 幼馴染みとお風呂に入る系TSっ娘
愛菜の部屋でダラダラと過ごし、夕食を食べ終えて皿洗いをした後のこと――――――
「愛菜、お風呂入ってくる」
「じゃあ一緒に入ろう!」
えぇー……真治となら喜んで入るけど、愛菜と風呂かぁ……
「そんなイヤそうな顔しないの、女の子同士なんだし気にしなくて良いじゃん」
「別に気にしてない。愛菜と入るのが癪なだけ」
「…………本当に元男?」
愛菜に訊かれてボクは首を縦に振る。もはやそこに会話は必要ない。ボクは着替えとタオルを持って愛菜の家にある風呂場へと向かった。
「……なんで付いてくるの」
「千尋ちゃんのお世話をしてあげるため」
「必要ない」
洗い方も全部静流さんに教わったし、今さらコイツと入る義理はどこにもない。
「ほらほら、早く入りなさいロリっ娘」
「……愛菜はロリコンだったのか」
なるほど、それならボクと入りたいのも納得だね。けど――――
「エッチぃのはダメだよ?」
「存在がエッチぃヤツには何も言われたくないわ」
「……エッチぃっていうより犯罪臭だよね」
「たしかに」
鏡で自分の姿を見るとそこには絶壁の胸を持つ典型的な幼女がいた。
うん、これは手を出したら犯罪だよね。真治も居ないし、なんか身体洗うの面倒臭くなっちゃったなぁ。仕方ない……
「特別に身体を洗わせてあげる権利を与えてあげよう」
「洗ってくださいでしょ」
「じゃあ1人で洗うからいい」
「……洗わせてください」
「よろしい」
なんだ、結局ロリコンじゃないか。さっきはBL本なんて出てきたからてっきりそっちのけかと思ってたのに、ロリコン要素まで加わるとは……ちょっと欲張り過ぎだね。
すると愛菜はボクの髪を濡らして洗い始めた。
「そういえばさ、千尋はどうして真治のことが好きなの? 昔っからだったよね?」
「うん、ボクは真治と結婚するために産まれてきたんだからね」
「はいはい、わかってるよ。それで真治のことを好きになったきっかけは?」
きっかけ……なんだっけ?
……ああ、思い出した。アレか。
「初めて真治を見たときにね『この子と結婚する!』って言われたんだよね。アレが原因かな?」
「あー、昔の千尋は女の子みたいだったもんね。当時の真治のドストライクだったんじゃない?」
「今もだよ」
「そだねー」
……さっきからボクが真治について語った時の返事が適当すぎない? 少しはマトモな返事をしてよ。
「それで如月ちゃんはどうして恋に落ちたのかな? まさかそれだけで落ちるわけないよね?」
如月ちゃん言うな。
「……初めてボクに寄り添ってくれたから」
「え?」
「ほら、ボクの両親ってボクのこと嫌いじゃん?」
「言い方」
言い方って、変えようがなくない? ただの事実だし。じゃなきゃ普通、性別が変わったぐらいじゃ捨てられないでしょ。
「それであのときは友達もいなかったし、誰とも話せなくて寂しかったんだよ」
「そこに真治が来たと……つまり一目惚れってことで良いの?」
「否定はしないよ。けど、一緒にいる度に真治が可愛くみえてどうしようもなくなっちゃったんだよ」
竹馬を必死に乗る姿とか、自転車の練習をしてる姿とか、鉄棒で泣いてる姿とか。どれを思い出しても可愛いかったなぁ。今も十分可愛いけど。
「……これ以上放っておくとアンタがノロケそうだからこの話は終わりにするわ」
「えっ!? なんでわかったの!?」
「幼馴染みの勘よ。ほら、目を瞑って」
頭からお湯をかけられて綺麗に洗い流された。
自分の髪を見てみるといつもよりも綺麗で萎びやかな髪になっていた。
「おお! すごい!」
「……リンス」
ボクの肩がビクりと震えた。
静流さんには毎日つけるように言われてたけど、最近は暑い日が続いたせいで早くお風呂から出たいという思考になっていたのでサボっていたのだ。
「わかってるなら使いなさい、真治に嫌われるよ」
真治に……嫌われ……る……?
「ひっく……」
「ええっ!? ちょっと!?」
「使う、使うから嫌わない……で……」
「わかった、わかったから。泣かないの!」
真治から嫌われることを想像しただけで涙が溢れた。突然泣き出したボクを見て慌てた愛菜はボクを抱きしめて頭を撫でた。
「千尋、そろそろ大丈夫?」
「すぅー……」
「泣くだけ泣いて風呂場で寝るとか、本当にただの幼女みたいになってるんだけど……」
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