第30話 林間学校宿泊系TSっ娘 3



 突然意識を失ったボクが目を覚ますと真っ暗な部屋で寝かされていた。愛菜や美少女がいるボクたちの部屋とは違うみたいだから、保健室代わりに使われる部屋だと思う。頭の上にはタオルが乗っているけど、熱でだいぶ熱くなっていた。

 身体はというと熱を籠っていて汗でベタベタ。お風呂に入りたい気分だけど、熱は下がっておらず、身体がダルくて動かない。


 保健室の先生とか居てくれれば助かるんだけど、日射しを見ると昼頃だと思うからお昼休憩でいないと思う。


 迂闊だったなぁ……まさか身体がここまで弱かったなんて知らなかったよ。オマケに美少女に真治を丸一日あげちゃったし……


 こんなだったら熱なんて出さなきゃよかった……


 すると、部屋の扉がノックされた。



「千尋、起きてるか?」

「しんじ……みんなは……?」

「昼食をさっさと食って来てやったんだよ。すぐに戻らないといけないんだが、何かして欲しいこととかあるか?」



 真治にして欲しいこと……?


 告白、プロポーズ、指輪のプレゼント、婚姻届、結婚式、子供……他にも色々あるけど、とりあえずデートしたい!! せっかく彼女になのにデートとかカラオケとか一切したことないもん!



「今ここでできることでな?」

「……じゃあ身体拭いて」

「は?」

「べとべとで気持ち悪いから」

「あ、ああ、わかった……」



 真治は近くに置いてあった桶とタオルを持って出ていき、大浴場から水を入れて戻ってきた。

 真治が戻ってきたので、ボクは上を脱いで真治に背中を見せよう……としたけど、身体が動かなかったので起こしてもらった。



「じゃあ、お願い……」



 体操服まで真治に脱がせて貰って背中を拭いて貰う。汗でベタベタした身体が楽になっていった。



「前は自分でできるよな?」

「できないから真治がやってほしいな……」



 真治の唾を飲む音が聞こえてきた。今のボクは早くベタベタの身体を拭いて欲しかったので、恥ずかしさとかは特になかったけど、ボクの汗がどことなくエロさを醸し出していたようで、真治は若干興奮していた。



「んっ……ふあっ!?」



 真治がタオルで身体を拭く度に変な声が出てしまう。別に意識してるわけじゃないけどどことなく擽ったいというか、変な感じになる。余計に身体が熱くなってるような……



「ほら、これで終わりだ。俺はクラスに戻るが、いいか! ゆっくり寝てろよ!」



 真治はそそくさと出ていってしまった。まだ足がベタベタするんだけど……まあ、さっきよりかはマシになったし、良いかな?

 ありがとね、真治……さて、もう一眠りしようかな?



「おやすみ~」



 ……あれ? ボク、真治に身体を拭いてもらった? これってスゴいことじゃない? 意識しないうちにスゴい進歩してたよ! 美少女なんか屁でもないね! さっ、寝よ。




 ◇◇◇



 次に目を覚ましたときは既に日は沈んでいて、外は真っ暗だった。熱も下がっていたようで、身体も自由に動かせた。



「お風呂入りたい……」

「じゃあ入れてあげようか?」

「ゲッ、美少女!」



 目を覚まして視界に入ってきた初めての人が美少女とか、世も末って感じだわー

 なんで真治じゃないんだろう……



「うわぁ、本当に軽いね」


 美少女がボクのことを容易く持ち上げて抱っこした。


「おろせ」

「お断りします」



 おろせぇ!! おろせよぉおおおっ!! おいゴラァ! 聞いてるか!? おい離せよ! 離せぇえええ!!


 というわけで美少女に大浴場まで誘拐されました。


 ボク、保健室の先生とか一度も見てないんだけどさ、もしかしてサボタージュ?



「如月ちゃんは小さくて可愛いね」



 誰が幼女だ。言い方を変えてもボクにはわかるぞ。この美少女がボクのことをバカにしてることぐらいな! てめぇさっきから自分の贅肉を押し当ててんじゃねーよ。ボクへの嫌がらせか! あんまナメてると殺すぞっ!



「ジト目もかわいいね?」

「今すぐはったおす、おもてでろ」

「けっこう言うけど、そんな可愛い顔した娘に言われてもきゅんとするぐらいかな?」



 こ、コイツもロリコンだったのか……!?

 ろ、ロリコンは真治だけで十分だッ!! ちょっ!? なぜ胸を揉む!?



「ふあっ!?」

「……あれ? また熱上がってきた? じゃあ逆上せないうちに洗い流しちゃうね」



 美少女に洗い流されて部屋へと帰還した。戻った部屋は保健室代わりの部屋ではなく、ボクたちの部屋。その途中で時計を見かけたので時間を見てみると午後9時を過ぎていた。消灯の時間だ。お腹が空いたけど、食べられそうにないし明日の朝たくさん食べよ。



「如月ちゃん、一緒に寝よっか」



 美少女の声を聞くなりボクは愛菜に助けを求めた。しかし、愛菜は顔を逸らしてベッドの中へと逃げ込んだ。

 なんでじゃーーーーっ!! 美少女なんかと寝たくない! 離せよぉおおおおッ!!!



「寝られないの? 子守歌でも歌ってあげようか?」

「寝られるわ!」



 少し黙ってろ! 全く……はぁ、真治と寝たいなぁ。


「…………」


 ……あれ? 身体が熱くなってきた。早めに寝よ。今日とか一日中寝っぱなしだけど、まだまだ寝られるような気がする。


 翌朝、ボクは真治に抱きつくなりすぐに熱を出してそのまま復活することもなく林間学校を終えたのだった――――――




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