第19話 如月千尋ちゃん系TSっ娘
朝起きたら真治の顔があった。どうやらコテージを借りたのにも関わらず、雑魚寝をしたらしい。
みんなで雑魚寝をしたということは真治がいる反対側には誰かが寝ているというわけであって、確認してみると――――――
美少女がいた。
というかさ。しれっと人の手を握らないで貰えます? ボクの手を握っていいのは真治だけだから。……あれ?
ボクは何かが引っ掛かり、思考錯誤した。
雑魚寝をしているということはエッチなことを起きてないはず。むしろ真治が寝ているボクをお風呂に入れてたり……するわけないか。
まあ、それは置いておくとして、美少女と真治に挟まれて寝ているちびっこが1人。
まさか!? コイツ、それが目的か!?
「美少女退けオラ」
何を勝手に夫婦みたいな感じを作ってんだよ。誰の許可を得て家族ごっこしてんだよ。表出ろや。真治はボクのものだぞ。てめぇごときがボクの許可なく真治に触れようなんぞ、100年早いわ!
「真治はこっち」
眠っている真治の手を引いて美少女から遠ざける。最近流行りのソーシャルディスタンスってヤツだ。真治はボク以外と濃厚接触しちゃダメなんだからね?
……え? なに? ボクの抱き枕作った? じゃあ仕方ないね。ボクの抱き枕となら濃厚接触を許してあげようじゃないか。
「ちひろ……抱き枕なんて作ってねえ……よ……」
突然後ろから真治の声が聞こえてきて、肩がビクリと震えた。
お、おう……なんだ寝言ね。心読まれたのかと思ったよ。もしボクの心が他人に読まれたりしたら、ボクの真治愛の全てがバレちゃうからね。
それだけは真治にも教えられないから。
◇◇◇
あれから三日経ったある日のこと。
「はい、コレ。学生証ね」
静流さんから学生証を受け取る。そこにはボクの顔写真と名前が書いて……
「如月ってだれ?」
「千尋ちゃんよ? お姉ちゃん、千尋ちゃんが旧姓を嫌がると思ったから新しく作ったんだけど……ダメだった? まあ、文句言われても変えられないけど」
じゃあ文句言う意味ないじゃん。でも、旧姓を変えてくれたのはありがたいかな?
ボクはもう、あの家の人間ではないから。
「いえ、大丈夫です。むしろありがとうございます」
「そう、よかった♪ 何かあったらお姉ちゃんに頼ってね。可愛い未来の妹ちゃんのためなら何でも手伝ってあげるから」
静流さんに抱きしめられると顔が急に熱くなる。
未来の妹ちゃんとか恥ずかしいよぉ……!
頬に手を当てていると外からの風で1枚のチラシが目の前に降ってきた。
「夏祭り?」
「そういえばもうすぐだったわね」
その時、ボクの頭の中で真治と一緒に夏祭りでイチャイチャするという素晴らしい妄想が浮かび上がった。
「静流さん! お願いが!」
ボクは静流さんの両手を掴み取り、真治を落とすために必要なアレを用意して欲しいとお願いをした。
すると、静流さんはニッコリと笑った笑顔でこう答えてくれた。
「お姉ちゃんに任せなさい!」
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