第5話 忘れ物を届ける系TSっ娘


「海苔を可愛くデコって……完成! ボクと真治のラブラブ弁当!!」



 どうだ! この海苔を駆使して作った『♡』は! これでクラスメイトたちは真治に彼女がいることを認識するよ!!


 あとはコレを包んで真治の鞄に入れておけば完璧!


「ちひろ……早いな……」

「真治、おはよう。お弁当作っておいたからちゃんと食べてね♪」

「おお、約束守ってくれたのか。サンキュ」




 ◇◇◇



 って、言ってたからお弁当持って行ったのかと思ってたけど、なんで家にあるのさ……



「……そうだ!」



 届けてあげよう! そうすればクラスメイトたちにボクの存在を知らしめることも出来るし、真治に会えるし、ボクの分のお弁当を作れば一緒に食べられる! 一石三鳥だね!


 そうと決まれば行くしかないでしょ!!



 メイド服の上から腰丈ぐらいのマントを羽織り、二人分のお弁当と鍵を持ってアパートを出た。



「ちょっとそこのキミ、こんな時間にそんな格好で何をしてるんだ。学校は?」

「は?」



 警察に呼び止められた。

 まだ10時ぐらいだから良いけどさ。あまり時間を取らせないでよ?



「ご主人様がお弁当を忘れたので、届けに行くところです」

「ご主人様ぁ? ……うらやま」



 警察からまさかの本音が聞こえたよ。この人メイドさんが大好きなのかな?



「ご主人様にお弁当を届けないとご主人様が困ってしまうので、ボクはこれで……」

「ピンク髪ロリ系ボクっ娘メイドキャラ……だとッ!? ちょっとキミ属性盛り過ぎじゃないか? そのご主人様とやらに会わせて貰うぞ。1発は殴らないと気が済まねぇ……」



 この警察官のおじさんは本当にメイドさんが大好きで愉快な性格してるね。

 でも――――――



「ご主人様に手を出したら殺しますから。二度と関わらないでください」

「ひぃっ!」



 ボクは警察官を突き放して学校へと向かった。

 真治はボクのお弁当、喜んでくれるかな♪





 ◇◇◇



 授業の終わるチャイムが鳴った時、ボクは唐突にソレを起こした。



「真治ぃ! お弁当届けに来たよォー!!」



 教室に居る者全てがボクを見た。

 そして、「しんじ?」「真治だと?」という声が教室中を包み込み、クラスメイト全員が真治の方を見た。


 当の本人は顔を真っ青にして動揺していたけど、ボクのすることはコイツらにボクと真治の関係を植え付けてやることだ。


 ボクは真治に歩み寄ってお弁当を届ける。



「忘れ物だよ。ご主人様っ♪」

「「「「真治キサマァァア!!!」」」」



 男共の嫉妬混じりの声が教室中にこだました。

 その中には先ほどまで授業をしていた先生も混ざっていた。


 あの先生、何処かで見覚えあると思ったら、去年、ボクたちの担任をしていたロリコン童貞野郎だった。



「アハハっ……」



 すると真治がボクの手を握り、扉の前にゆっくりと動いて――――――



「……さらばっ!!」



 全速力で逃げ出した。



「「「おい、ゴラァ待てェ!!」」」





 ◇◇◇



「はぁはぁ……なにしてくれてんだよ! ちひろっ!」

「真治がお弁当忘れて行くからだよ。それに真治に彼女がいることを証明出来たし、一石二鳥でしょ?」

「ヤメロォ!! クラスの男は全員『童貞ロリコン彼女いない歴=年齢』という属性で固定されてんだよっ! アイツらの団結力舐めんなよッ!? アイツらが本気出したら俺なんて一瞬で木っ端微塵だ――むぐっ!?」



 真治が耳元で騒いでくるので、お弁当に入れておいた卵焼きを真治の口の中に突っ込んであげた。



「どう? おいしい?」

「うまいな……」

「えへへっ♪ よかった♪」






「(にしても……アイツらにこの弁当箱見られたら、どのみち終わってたな……)」





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