第6話 幼馴染みの女を嫌う系TSっ娘



 真治と屋上で仲良く昼食を食べてると怪しげな女が現れた。



「真治が知らない女の子連れてるー。珍しいね。千尋のことは捨てたのかな?」

「グルルルル……」



 ボクはこの女に警戒心を持ち、真治と女の間に入り、真治の視界からこの女が見えないようにした。

 そして、ボクは女を強く睨む。



「千尋……? でも可愛すぎる……私の知ってる千尋はもっと真治にべったりしてるホモだったはず……」



 女は真治の左手を掴んだボクの右手に注目した。



「うん。千尋だ……ずいぶん可愛くなっちゃったねー?」

「黙れクソババア」



 真治に聞こえないぐらいの大きさで呟く。

 すると女は突然、真治の元に駆け寄り、右腕を掴んだ。

 真治の右腕は女の谷間に挟まり、真治の頬が若干弛む。



「真治、私ね。お弁当作り過ぎちゃったの。よかったら食べてくれない?」

「わりぃ、愛菜あいな。千尋が作った分でもう腹一杯だ……」



 へっ、ざまぁないね! このボクがソレを計算しないわけないじゃん! お前ごときにラブコメチャンスをくれてやると思うな!


 この女の名前は佐倉愛菜さくらあいな。ボクと真治の幼馴染みにして、ボクから真治を寝取ろうとする大悪党である。


 ちょっと胸が大きくて、ちょっと頭が良くて、ちょっと顔が良いだけである。性格はウンコ未満。真治の前だけイイコぶって、裏では真治に告白した女の悪口を言いふらす。


 コイツはそんなクズみたいなことをやっている女だ。


 対して今のボクは真治=命で、ピンク髪でロリ。ちょっと胸が小さいけど、家事も出来て、真治のことをご主人様と呼んでくれる、とても可愛らしいメイドさん。そして、現在同棲中。


 もうこれほどにまで真治の彼女に向いてる女はいるだろうか? いいや、いない!

 ボクこそが真治の彼女に相応しく、ボクだけが真治のお嫁さんになる権限を持っているのだ!



「真治ぃーちょっと疲れちゃったから、チャイム鳴ったら起こしてー」

「「は?」」



 真治の肩に寄りかかったまま寝たフリをし始めた愛菜。

 おまけに真治の腕をガッチリと掴み、離さないようにしている。



 ふっ、面白い余興だな。







 ……だが無意味だ。



「ご、ご主人様ぁ……ボクよりも……その女が好き……なの……?」

「えっ!? い、いや、そんなことは……」



 秘技、ウソ泣き。予測通り真治は慌て始めた。

 それに対してこのクソ女は真治の腕をより強く掴み、真治を惑わす。



「ボク、ご主人様が大好きだから毎日あんなことやこんなことまで、色んなことをしてあげてるのに……ご主人様はボクのこと好きじゃないんだ……」

「い、いや! そのだな……俺も好き(親友として)だ! 千尋のことは大切に思ってる! だから泣くな! いつもお前に色々と助けられてるしな!

 だからさ……今夜も頼むよ……」



 よしっ! とった!



「はあッ!? 今夜もッ!? アンタら真夜中になにしてんの!?」



 寝たフリをしていた愛菜が大声で怒鳴り散らした。ボクは肩を震わせて真治の後ろに隠れる。



「なにって……マッサージだが?」

「マッサージ!? ちょっとアンタなにしてんのよ!? こっち来なさい!」



 愛菜に首根っこを掴まれるが、ボクは真治に掴まり、必死に抵抗する。



「愛菜落ち着けって! マッサージって言っても変なことはしてない! ただ肩を揉んで貰ってるだけだ!」

「えっ? そうなの? よかったぁ……」



 このクソ女が。もう近くにいるだけ無駄だ。さっさと離れよう。



「真治ぃ……この女の人、すごくこわい……あっち行こっ……」

「え? あ、ああ。じゃあな愛菜」



 ボクたちは屋上から逃げ出したのだった。





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