第41話叙爵の持ちかけ

俺はソフィアと別れた後、マーサさんが待っている馬車に向かった。


 来た道を折り返し、目的の馬車が見えた。


「ごめん、マーサさん。制服とかもらってたら遅くなっちゃった」


「構いませんよ。さ、早くお乗りください。王城に馬車を走らせますので」


「分かった、よろしく頼むよ」


 マーサさんは俺の言葉に、うなづきそのまま馬に乗った。


 俺もそれを見て馬車に乗り込む。


 しばらくすると馬車が走り出し王城を目指した。


 



 数十分後、馬車が速度を緩め、やがて止まった。


「アルバート様。王城前へ着きました。あの兵士の方に事情を話してきますのでしばらくお待ちください」


「うん、分かった」


 そうしてマーサさんは兵士の人に話をつけ、王城内へ馬車を通してもらえることとなった。




 王城はとても広い。王城内には騎士団の訓練所や倉庫が沢山ある。


 しばらくすると来客専用の馬車スペースに馬車が止められた。


「アルバート様、ここでお降りください」


 それに従い、俺は馬車を降りた。


「これからどうすれば?」


「それは私にお任せください」


 そう言って音もなく俺の目の前に現れたのは、執事のセバスチャンさんだった。


 え? この人何者? もしかして瞬間移動とかあるのかな?


「……あ、分かりました」


 俺はそう返事をしていた。


「それでは着いてきてください。そちらのメイドの方もどうぞ」


 そんな事で俺とマーサさんはセバスチャンの後についていき、王城内を案内された。



 王城内はとても広く、経路を覚えるのも一苦労だと思う。


「陛下は謁見の間にてお待ちです。貴方様がいつ来てもいいように」


 セバスチャンさんは歩きながら俺にそう言った。


「それはどういう……」


 説教じゃないのかな? なら一体なんだろう?


「陛下がそれほど重要視しているという事ですよ。今回は宰相閣下もご一緒だそうです。ちょうど5年前のように」


「は、はあ……」


 あまりしっくりこなかった。追々分かることだし今考えても無駄か。


 俺はそんな分かっているかいないか分からない曖昧な返事をしてしまった。




 しばらくすると見たことのある場所に着いた。


 5年前と変わらず俺の目に映ったのは謁見の間の扉だった。


 この先に陛下がいるのか。


 俺はそんな事を思いながら、その時を待つ。


「メイドの方はここでお待ちください」


「分かりました」


 そうしてついにその時が来た。


「ハワード侯爵家四男アルバート様をお連れしました!」


「通せ」


 扉の奥から低い声が聞こえる。


 それと同時に扉が開けられた。


 俺は目の前に見えるレッドカーペットの切れ目まで急がずゆっくり歩いた。そして片膝をつき、顔を下に向け、合図を待つ。


「面をあげよ」


 その指示を聞いて俺は顔を上げた。


「お呼びに従い、参上致しました。ハワード侯爵家四男アルバート=フォン=ハワードでございます」


「よくぞ我の急な願いを叶えてくれた。だが今回我がここに呼んだのはお主だけではない」


「え? それはいった………」


「王立フォルトナンセ学園学園長、エジムンド=フォン=ハーゲンをお連れしました!」


「通せ」


 俺の疑問を遮るかのように後ろから大きな声がした。


 扉から現れたのは年老いたお爺さんだった。


 どこか見覚えのあるような……。


「ほっほっほっ、まさかこんな偶然があろうとはな。いつぞやの少年かな?」


「まさかあなたは……」


「うん、あなたは?」 


 なんか、期待してるような目でこちらを見られても困るのだが。


「5年前、ハワード領の裏路地で女性に声をかけて怖がられ蹴られた挙句、何故かカツラを取られたお爺さん、で間違い無いですか?」


 俺は事実確認をした。


「そ、そうなのだがな。ちょっともう少しオブラートに包んでくれてもいいのではないかの?」


 俺は忘れていた。ここが謁見の間であるという事に。


「はっはっはっ、2人は以前から面識があるのか?」


「っ!! 陛下の御前であるにも関わらず、申し訳ありませんでした!」


「構わぬ」


 陛下は俺の態度を気にすることは無かった。


「して先の質問だが、どうなのだ」


「あ、はい。以前ハワード領でお会いしまして」


「まさか、こんな所で再会するとは」


 本当に偶然だった。こんな偶然ってあるんだね。てか学園長ってどーゆー事だよ。


「あの陛下、質問よろしいでしょうか?」


「ああ、構わんぞ」


「なぜ、私と学園長が呼ばれたのでしょうか?」


「ああ、そうだったな、アルバートよ。それは学園長の話を聞くと良い」


 その言葉を聞いたお爺さん学園長こと、エジムンドさんは口を開いた。


「儂はこの国最強の魔法障壁を張ることのできる『現、水の賢者』だ。その魔法障壁を破ったということがどういうことか分かるかの?」


 ん? なんか今すごい単語が聞こえたんだが。


 水の賢者、って聞こえたんだが。


「あの、もう一度お願い出来ますか?」


「水の賢者の魔法障壁を破ったということがどういう事か分かるかの?」


 水の賢者だと? この国に6人しかいない魔法士の頂点の1人が今俺の目の前にいるということか?


 俺はエジムンドさんの問いについて真剣に考えた。


「賢者の威厳が損なわれる、ですか?」


「それもある。お主のことはどうなる?」


 なんか問いを投げかけてくるところは先生って感じがする。


「何も知らない人が聞いたら、賢者の力を超える謎の少年、というように映るかと」


「そう、そうだ。だが、それではこの国の賢者の地位が失墜する恐れがある」


 なるほど、王国として都合が悪いということか。


「そこでだ、君を名誉騎士爵として叙爵したいと考えている。幸い君にはハワード領を一人で守った功績もあるし、大精霊様が契約精霊としている」


 エジムンドさんに代わって陛下が口を開いた。


 なるほど、なんやかんや言ってるけど、結局俺の力を他国に渡したくないから国に縛りつけるということか?

 まあ俺自身、この国が好きだし。でも冒険者になっていろんなところを見てみたいっていう夢もあるし。


「名誉騎士爵はあくまでも称号と思っておけばよい。どうだ?」


 どうやら決めに来たようだ。しかしここまで陛下に言わせておいて、いいですとはちょっと言いにくい。


「家にこの話を持ち帰ってもよろしいでしょうか? この話を一人で決めることは出来ません」


「そうか、分かった。ならこうしよう。期間は1ヶ月。お主の入学式までじゃ。それまでを返答の期限とする」


「分かりました」


 なんとか保留にはできたが次はないということだ。


「それでは今日のところはこれにて謁見を終了する」


 そうして俺はセバスチャンさんに連れられ謁見の間を出て行った。

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