第12話厳戒態勢

俺たち家族はすぐさま馬車に乗り込んだ後、急いで屋敷へ戻った。





屋敷へ戻った後父上が使用人たちにさっきの兵士の事を伝えると

すぐさま領民たちに厳戒態勢を取るようにアナウンスを行った。


無属性魔法の振動魔法で声を増幅させているらしい。


本には書いてなかった魔法だ。実際見てみないと分からないことがあると言うのはこのような事だ。


『現在ハワード領に魔物の大群が押し寄せています。ハワードの兵士、およびBランク冒険者以上の方々に臨時クエストを侯爵権限で発行します。冒険者方はギルドにクエスト受注を行った後、常闇の森がある北門に集合してください。繰り返します…』




それを聞いた兵士たちは屋敷の警備を最低限にして北門へ向かっていった。


その動きに迷いはなかった。





その頃ハワード領内のCランク以下の冒険者たちは各々のパーティーで話し合いをしていた。


「なあ、侯爵様はBランク冒険者以上とか言ってたけど俺らCランクとか他の下のランクの人たちも何かできるんじゃないのか?」


「そうだな、報酬は貰えないけど、この街を守りたいってみんな思ってると思う。」


「ハワード侯爵様のような領民たちに寄り添う貴族はなかなかみないな。そんな優しい侯爵様に恩をお返ししたいと思ってるのは俺だけなのか?いやもっといるはずだ!」


「なら、俺たちはやれる事をやろう。この街の内部の人たちの避難を誘導したり、戦場に行って怪我した人たちに回復魔法をかけたり、そんな些細なことでもいい。みんなで力を合わせればBランクの魔物なんて怖くないだろう?」


「そうだな、この話を他の冒険者パーティーにもしよう。きっと力になってくれるはずだ。」


そんな動きがハワード領内で数十、いや、数百見られた。


おそらくこのような動きは全てハワード侯爵ジャックの領民の評判が良かったのだろう。







アナウンスが領内に響いてから数十分後、冒険者ギルドハワード支部はBランク冒険者以上のパーティーが大勢集まってきていた。


ギルド内の広場はざわざわしている。


「これからどうなるんだ?」


「そんなの決まってるだろ?この街を守るためにある程度力のある俺たちが招集されたんだ。この街はいい人ばっかりなんだ。笑顔溢れるこの街を俺は守りたい。」


その言葉に大勢の冒険者たちが頷く。


「俺も同じ気持ちだ!」


「俺たちの力を合わせて魔物たちを蹴散らしてやろうじゃないか!」


そうやって士気を上げていった。




冒険者ギルドの2階から1人の男が降りてきた。


屈強な体、引き締まった二の腕が見えていて、相当なトレーニングを積んでいるのが目に見えてわかる大柄の男だ。


冒険者たちは、コツコツコツ、と階段を降りてくる音が聞こえて次第に静かになっていった。


そして足音が止まる。


コツン!!


そしてその大男が息を吸ってから口を開いた。


「冒険者諸君!俺は冒険者ギルドハワード支部ギルドマスター、ベッケン・ストーンだ。先程皆も聞いたようにギルドで臨時クエストが発行される。報酬は金貨1枚と命をかけるにしては安すぎる。参加したいものは手をあげよ」


そして、ギルド内にいる冒険者全員が手を上げた。


「クエストに参加したものはもちろん、死ぬ気でこの街を守り抜いてもらいたい。その過程で生命を落とすものも少なからずいると思う。それでもやるか?」


その言葉を聞いたある1人の冒険者は言った。


「そんなの、とっくの昔に決まってるだろ!俺はこの街の孤児院で育った。侯爵様が孤児院に支援金を出していなかったらこの命は無かったものなんだ!ここにいる人たちはいろんな人を守りたくて己の命をかけて戦おうとしてるんだ!」


それを聞いた冒険者たちは口々に言った。


「俺だってこの街を守りたい。この風景、家族、仲間、そして子供たちの笑顔を守りたい!」


「俺だってそうだ!」


「俺も!」


と。


それを聞いていたギルドマスター、ベッケンは笑顔で言った。


「ありがとう!この街を一緒に守ろう!」


それを聞いた冒険者たちは一斉に声を上げた。



『うおおおーーーーーっ!!!』



そうして冒険者たちは常闇の森のある方向である北門の外へ向かっていった。

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