第11話魔物襲来

気がつくと教会の祈りの間にいた。

急に送還されたので少々戸惑ったが後ろには司教のエドモンドさんや家族がいる。動揺を悟らせないように少しの間、祈ったフリをした。


その後、立ち上がり家族のいるところへ戻っていった。


「父上、マーク兄上の合格を神様に報告いたしました」


「少し長かったように感じたがそれだけマークの合格を喜んでいるのだな、お前は」


確かにマーク兄上のことは嬉しく思う。しかし、創造神テオス様や上級神様たちに会って動揺していたなど言えるはずもない。父上がいい意味で捉えてくれて良かった。


「家族の幸せが僕の幸せですから」


俺、ちょっとキザな事いってない?カッコよくない?


「本当に5歳とは思えないな。さすが俺の息子だ。これからも期待してるぞ」


スーザンも続いて言った。


「アルは可愛いんだから、もう少し甘えてくれてもいいのよ?」


俺は思った。


言質は取ったぞ?精一杯甘えたいと思いまーす。家に帰ったらたっぷりいただきたいと思います。


「分かりました、母上」


「おねーちゃんにも、甘えてくれてもいいんだからね?」


ふふっ、異世界サイコー!


「もちろんだよ、おねーちゃん!」


ちょっと幼児に退化してみた。いや、俺幼児だっけ?

まあ、これで可愛さは十分アピールできた。ブラコンの姉さんには大ダメージだろうな。


バタン!!!


姉さんが鼻血を吹いて倒れていた。


ごめん、姉さん。そこまでダメージが入っていたとは…。







そんな事があってから時が進み、今は馬車で屋敷に向かっている途中だ。


姉さんの意識も戻り、現在家族みんなで仲良く話に花を咲かせながら帰っていた。


そんな時だった。馬車が急に止まった。

父のジャックは何ごとだと思い馬車の扉を開けた。


するとそこにはヘトヘトになった兵士の方がいた。


そしてその兵士が口を開く。


「突然馬車を止めてしまい申し訳ございません。罰なら後でいくらでもお受けいたします。」


ジャックが口を開く。


「構わん。何か火急の用があったのだろう?言ってみろ」


「はっ!それではご報告をさせていただきます。現在ハワード領近郊の常闇の森にて魔物の大群が確認されました!そして現在このハワード領に侵攻しております!」


「なっ!?あの森の魔物が活発化したというのか!?」


「これは私の推測ですが森の主の行動が活発化し、その結果他の魔物がそれを恐れ逃げてきたと考えられます。」


「だが、あそこの森の魔物はほぼBランク以上の魔物だったと記憶しているのだが…。」


「はい、それ故Bランク冒険者以上しか応援を要請できません」


「困ったな…。」


そんな会話を聞いていたアルバートは口を開いた。


「父上!この国の貴族はなんのためにいるのですか?民を守る力があるから国王陛下から領地を預かっているのでしょう?信頼されているから任されているのでしょう?そんな陛下の信頼をこんな事で失ってはいけません。強き力を持つものは弱き者に手を差し伸べ助ける。かっこいい生き方だと思いませんか?」


そんな言葉を聞いたジャックは落ち着きを取り戻し、悩みが吹っ切れた清々しい顔で答えた。


「そうだな、アル。お前のおかげでやるべき事が分かった。さすが我が息子だ」


ジャックは兵士の方に向き直り口を開いた。


「この街の8割の兵士とBランク冒険者達を常闇の森方面を向いて陣を張れ!指揮は私がとる。全兵士に告げよ!」


それを聞いた兵士は疲れが吹っ切れたのか、大きな声で答えた。


「はっ!!」


そうして全速力で走っていった。

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