第40話合格発表

 セバスチャンさんが王城へ帰っていった後、俺は合格発表に行く事にした。


「母上、合格発表に行ってきます!」


「いってらっしゃい、アル。王城へ行く事、忘れてはダメよ?」


 母さんの語りかけるその声は、まるで初めておつかいにいく子供に言い聞かせるような口調だった。


 まあ、子供なんだけどね。


「ええ、分かっています」


「アル! 早く帰ってきてね! 帰ってきたら学園についてたくさん教えてあげる!」


 うん、姉さん。俺まだ受かってないからね?

 

 どうやら我が姉は弟が受験に失敗するという事は頭にないらしい。


 まあ、あの問題で落ちたらやばいよね。こちとら中学、高校、大学と入学試験受けて受かってるんだよ。


「うん! ありがとうおねーちゃん!」


 そんなことを家族の前では言えるはずもなく俺は姉の好感度をさらに上げることを選択した。


「アル、いい報告を待っているよ」


 マーク兄さんは俺に微笑みかけながら言った。


「期待しておいてください、兄上!」


 俺がそういうと、マーク兄さんはうなづいた後視線を先ほどまで読んでいた本に戻した。


 これが兄の余裕というものだろうか?


「それではいってきます」


「あ、そうだわ。馬車を使いなさい。貴族としての最低限の振る舞いをしなくてはならないわ。前の試験は急いでいうの忘れていたけど、今日からは馬車を使って移動するように」


 そう母さんが言った。


「分かりました。そうさせてもらいます」


 そうして俺はマーサさんが御者の馬車に乗って学園を目指した。



 30分後、俺は1週間前に来た学園の巨大な門の手前に着いた。


「ここでいいよ、ありがとうマーサさん」


「分かりました、他の貴族様の邪魔にならないようあちらの方で待っていますので」


そう言ってマーサさんは馬車が停まれるスペースのようなところに馬車を移動した。



 合格発表場所は校舎手前の大広場だという。


 門から大広場までの長い道をまだ少し肌寒いのか蕾を出している木々が包む。


 桜の木だろうか? あまりそこら辺は詳しくはないが咲けば綺麗に通りを覆うのだろう。


 




 長い通りを歩き、漸く大広場についた。


 少し着くのが早かったのか、受験生らしき姿がポツポツと見えるだけだった。

 どうやらあのどでかい掲示板に合格者の受験番号が張られるのだろう。


 俺は少し足を休めるようと思い、大広場にあるベンチに座り、張られるのを待った。


 




 数十分後、受験生たちも続々と集まってきた。

 

 近くの校舎からぞろぞろと大きな紙を持った人達が出てきた。


 漸くだ。


 しばらくすると風の魔法で紙を浮遊させ掲示板に貼り付けた。


 どうやって貼り付けたのかは分からない。無属性魔法かな?


 俺はすぐに掲示板に張り付けられた張り紙から自分の受験番号を探す。


 俺は一番最後に試験を受けたから、最後から見れば早い。


 予想通りだった。


 俺の受験番号が一番最後に書かれていた。


 何故か俺の受験番号だけキラキラと光っていたがまあいい。最後だからラッキー的な感じだろう。


 受験に合格した事も確認できたし、すぐに王城へ向かわねば。


 俺はそんな事を考え、来た道を引き返そうとする。


「あ、アル! 久しぶりね!」


 そう俺に声をかけてきたのはレーベンブルク公爵家次女のソフィアだった。


「お、ソフィア。久しぶりだな。元気にしてた?」


「もちろん! いつもアルのこと考えてたの!」


「え? 俺のこと考えてたってどういう……」


 そういうとソフィアは顔が紅く染まった。


「そ、そういうことじゃなくて、受験受かるかなって考えてたの!」


「そ、そうだよな。ははは」


 まあ、俺が考えている事は現実ではなかなか起こらないのかもしれない。


 少し残念だ。


「あ、そうだ。アルは受かったの?」


 いや唐突だね。まあいいけども。


「ああ、無事合格したよ」


「なら私と一緒だね!」


 どうやらソフィアも学園に受かったらしい。

 知り合いに合格者がいると安心した。


「これからどうするの? 今から制服受け取りに行くけどアルも一緒に行く?」


「え? 制服受け取りとかあるのか?」


「え、知らないの?」


「ああ。てか制服っていっても人によってサイズ違うだろ。採寸とかしないのか?」


「そんなのとっくの昔に終わってるよ?」


 俺はそんな事を言われ、意味がわからなかった。


「どういう事だ?」


「入学試験の時に、受付に名前言う人いたでしょ? あの人が採寸しているの。なんでも見るだけでその人に合ったサイズが分かるんだって。世の中には凄い人もいるんだねー」


 いやいや、ソフィアさん。あなた普通にサラッと流しましたけど結構凄いこと言ってますからね?


「そ、そうだな……。それじゃその制服を取りに行くか」


 そんな事で俺とソフィアは一緒に制服をとりに行く事になった。




 ソフィアは制服の受け取り場所を知っているらしく俺は付いていった。


 しばらくすると受験生が並んでいる列が見えた。


 そうして俺たちは並んで無事制服をもらった。


 制服の代金は王国持ちらしい。授業料などは普通は払わなければいけないけど、例外としてエドガー兄さんとリリーお姉さんは首席、次席合格だったので学費は全て免除だった。


「アル、これからどうする? よかったら前のお礼をしたいんだけど屋敷に来ない?」


 俺は危うくイエスと快諾しようとしたが、思いとどまる。


「あ、ごめんね。今日は国王陛下が俺を呼んでるらしいんだよ。何もした覚えはないんだけどね」


「こ、国王陛下からお呼び出し!? そ、それじゃ仕方ないね。その後とかどうかな?」


 俺の脳裏に頬を膨らませたジェシカ姉さんが浮かんだ。だがしかしこんなに誘ってくれている女の子がいるのだ。男としてここは了承しよう。


「分かった。時間があったらすぐにそっちの屋敷に向かうよ」


 幸いこの前屋敷の場所は把握できたし、経路には困らないだろう。


「そ、そっか。えへへ、やっとアルとお茶できる」


 ソフィアのその満面の笑みで陛下の呼び出しの不安は吹っ飛んだ。


 可愛いは正義だ。


「じゃ、俺はこれで」


「うん、また後でねー」


 そうして俺はマーサさんが待っている馬車に向かった。

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