第45話自己紹介

 入学式が終わった後、俺はソフィアと教室がある棟に向かった。


 この学園は一クラス40人編成の一学年280人だ。


 棟に入った後、俺とソフィアは掲示板の発表にあった通りAクラスなのでAクラスに向かった。


「ここか」


「そうね」


 俺はゆっくりと教室の扉を開ける。

 開けた扉から頭を少し出して中を見ると数十人の生徒が先に来ていた。

 瞬間、教室がざわざわし始めた。


「首席様と同じクラスなんて光栄だな」


「賢者様の魔法障壁を破ったって聞いてびっくりしたよ」


 ふと今気づいたが、国王陛下と学園長はグルだ。


 俺の力を公表することにより、叙爵の件に関して断りにくくさせるために先手を打ってきたに違いない。


 まあ、すでに父上と話はして、了承してもらったが今日が返答期限だ。学園が終わったらすぐに王城に赴こう。


 


 教室に入り前の黒板に貼ってあった座席表を確認する。


「お、一番後ろの窓側の席だ」


 いわゆる主人公席だ。


「あ、私アルの隣ね」


 どうやらソフィアはヒロイン席のようだ。


 いいのか悪いのか、この世界に名前順は存在しないようだ。


 しばらくすると全員が着席し、その後20歳くらいの若い女性が入ってきた。


 女性は黒板前の教卓で止まり、俺たちの方を向いてきた。


「皆さん、入学おめでとう。Aクラスの担任をするイザベラ=フォン=ティルベーダです。先に言わせてもらいますが、私は貴族や平民だからと言って差別しません。皆さんと分け隔てなく接することができれば嬉しいです。それではまずはこの学院のことについて分かっていると思うけど説明するわね」


 イザベラ先生が言うにはこの学園は今年度から貢献度制と言うものが導入されるらしい。

 花のバッチと雷のバッチがあり、花のバッチが多いほど学院内で色々な優遇がきくらしい。逆に雷のバッチが多ければ多いほど自由は制限されていく。雷のバッチが7個貯まると退学処分だと言う。

 この制度が導入された背景は、世界最高峰の学術機関としての誇りを常に意識するようにと国王陛下から勅令が下ったからだという。常に高みを目指す姿勢を良しとしている。


「じゃあ新しいことも説明したことだし、次は自己紹介をしましょうか。それでは君から」


 そうしてイザベラ先生は先生から見て左手前の男子から当て始めた。


 当てられた生徒は席をたつ。


「はじめまして、ディーノ=フォン=ロッテンドと申します。ディーノと気軽にお呼びください。実家は伯爵家です」


 なるほど、好きな食べ物は言わないんだね。定番だと思ったんだが……。


 教室中が拍手に包まれ、ディーノは着席する。


「では次」


「は、はいっ! わ、私はシルファ、です! 平民ですが、よ、よろしくお願いしましゅ!」


 なんだか教室中の空気が和んだ気がした。


 シルファは恥ずかしがり屋なのか、手をもじもじさせながら自己紹介していた。



 そんな感じで自己紹介されていき、ソフィアの番が来た。


「はじめまして、私はソフィア=フォン=レーベンブルクと申します。実家はレーベンブルク公爵家です。ソフィアと気軽にお呼びくださいね?」


 最後ににっこり笑ったのがダメだったのだろう。周りを見てみると、男子の目が虚になっていた。


「……はっ! つ、次っ!」


 どうやら先生もソフィアの虜になっていたらしい。


 そうしてようやく最後に俺の番が来た。



「それでは最後に、どうぞ」


 そうして俺は席をたち話しはじめた。


「皆さんはじめまして。アルバート=フォン=ハワード

です。実家はハワード侯爵家です。よろしくお願いします」


 なんかむちゃくちゃキラキラした目で見られるんだが、俺はどうすればいいのだろうか。


 


 まあそんな感じで自己紹介が終わった。


 その後、授業に必要な教科書などを配布され、解散となった。


「アル、じゃあね!」


「ああ、それじゃ」


 ソフィアはベクターさんと帰るらしい。


 俺は父さんと母さんに事情を話した後、王城に行くことにした。


 ちょうど父さんと母さんは王都でデートをするようだ。


 仲睦まじくていいことだと思った。


 流石に手紙は陛下に失礼だろうと思い、顔を合わせる形を取ろうと考えた。


 学園の馬車スペースにマーサさんが御者の馬車が止まっていた。


「マーサさん、王城に向かってくれる?」


「かしこまりました。それではお乗りください」


 俺はうなづき、馬車に乗った。


 そうして馬車は王城へ向けて出発した。

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