第44話入学式

 俺がレーベンブルク公爵家の屋敷を訪れてからおよそ1ヶ月後、ついに待ちに待った入学式の日がやってきた。


 この間、俺がやったことといえば王都の冒険者ギルドに行って、色々とクエストを受けた。

 その結果、ランクアップ試験を受けたりしたりして現在Dランクの第8位階までランクを上げることができた。

 王都周辺の魔物討伐とかもやらせてもらったりした。

 

 まあ、もちろん瞬殺だけどね。


 そんな感じで特に何も起こることなく過ごしていた。


 ステータスはこんな感じだ。



【名前】アルバート・フォン・ハワード


【種族】人間族


【性別】男


【年齢】10歳


【称号】異世界転生者、神々の使徒、ハワード侯爵家四男、水の大精霊の契約者、殺戮者、英雄


【レベル】552


【能力ランク】SSS


【体力】50120/50120


【魔力】240100/240100


【魔法レベル】

火魔法LV10

風魔法LV10

水魔法LV10

土魔法LV10

光魔法LV10

闇魔法LV10

創造魔法LV10


【スキル】

アイテムボックスLV10

魔力運用効率化LV10

身体能力強化LV10

物理攻撃耐性LV10

魔法攻撃耐性LV10

隠蔽LV10

無詠唱LV10

手加減LV-

言語理解LV-

魔力操作LV10

精霊召喚LV- 召喚時、魔力増幅


【加護】

創造神の加護、水の大精霊の加護


【契約】

水の大精霊



 そこそこレベルアップもした。この世界の人のレベルは俺には分からないが、明らかに俺はずば抜けていると思う。


 創造神であるテオス様が言っていた、恐らく魔王だろうがいつ出現するか分からない。来るべき時に備えて俺が出来ることはただ一つ。


 レベルアップしまくって強くなる事だ。


 そのためにはこの世界最高峰のフォルトナンセ学園では知力を高めなければならない。


 強さとは様々あり、単純な腕や足の力が一番に浮かぶだろうが、俺がこの学園で求めている力は知力だ。腕や足の力が強くても相手の不意な攻撃には対処できない。そのために『知る』ということも大切だ。


 そんなわけで俺は今とても気持ちが昂っている。


「それではいきましょうか?」


 俺はグレーを基調とした真新しい制服を着て言った。


「ああ、そうだな。行くとしよう」


「ええ、行きましょう」


 マーク兄さんとジェシカ姉さんは在校生ということもあり朝早くから家を出ている。

 俺の入学式というのもあり、父さんも王都の屋敷に来ている。長男のオリバー兄さんに公務を任せているという。


 マーサさんが御者の馬車に乗って学園に着いた。


「ありがとうマーサさん」


「頑張ってくださいね」


 俺はうなづいた後、父さんと母さんと一緒に学園の大きな門をくぐった。


 俺はその先を見て驚く。


 1ヶ月前には蕾しか無かった校舎と門を繋ぐ道路脇に生えている木は花が開き、満開に咲いていた。まるで俺たち新入生を歓迎しているように見えた。


「桜か、綺麗だな」


「へぇー、これって桜っていうんだ~」


 後ろを見るとそこにはソフィアとベクターさんがいた。


「お久しぶりです、公爵閣下」


「俺のことはベクターさんと呼べ」


 そんなこと言われたら従うしかないよね。


「久しぶりだな、ベクター。何年ぶりだ?」


「そんなこと忘れてしまったよ。ジャック」


 俺の父さんとベクターさんは久々の再会だ。嬉しくないはずがない。


 邪魔しちゃ悪いし、離れるとするか。


「久しぶり、アル! 先に一緒にいこ。どうせ親とは後で別々になるし」


 なんていいタイミングなんだ。


 俺はうなづいて、ソフィアの横に並んで歩いていく。


「あれ? 制服の色……」


「制服は男子と女子で違うの。男子はグレーを基調としたもので、女子は赤を基調とした制服なの」


「そうなのか、初耳だ」


「始めからそんなので大丈夫?」


「あはは、恥ずかしい限りだよ」


 確かに姉さんの制服が赤を基調としたものだったと今思い出した。


 ソフィアの着ている赤を基調とした制服は、白銀の髪とマッチしていて、周囲の生徒から視線を集めている。

 もちろん俺もその一人だ。

 プロポーションもよく、比喩的な表現をすると歩く女神と言っても過言ではない。


 私服のソフィアの姿を知っているのでそのギャップもまた美しいと思った。


「クラス発表が掲示板に出てると思うからそれを見よ」


「分かった」


 さっき指摘されたばかりなのに、知らなかったとは言えるはずもなく俺はうなづきながら言った。




 そうして俺たちは満開の桜のトンネルを進み、広場についた。


 広場には大きな掲示板があり、大きくA、B、C、D、E、F、Gと書いてありその下に名前が書かれている感じだ。


 7クラスということか。


「……ッと、あったあった」


「あ、私もあった!」


「俺はAクラスだ、ソフィアは?」


「私も同じ! これからよろしくね!」


「ああ、こちらこそよろしく!」


 まさか同じクラスとは。知り合いが同じクラスだと気が楽だ。


「クラス確認もできたことだし、体育館に行こっか」


「分かった」


 入学式は体育館でやるらしい。


 体育館に着くと、その先には大勢の人が座っていた。


 取り敢えず俺たちは用意されていた席に座ることにした。


 数十分後、席がほとんど埋まり、体育館が暗くなっていく。


 そろそろ始まるのだろう。


 しばらくすると、前の演壇が照らされる。


「新入生諸君! 入学おめでとう!」


 そう話し始めたのはこの学園の学園長であり、水の賢者であるエジムンドさんだった。


 かなりテンションが高い。


「まず始めに新入生代表挨拶からしたいと思う。今年の新入生代表は素晴らしい」


 そんなにすごいのか。


「筆記テストで満点を取り、実技試験で私の魔法障壁を破ったのだ。間違いなく学園創設以来初の快挙だ」


 体育館内がざわざわし始める。


 おい、ちょ待てよ。それって……。


「新入生代表アルバート=フォン=ハワード! 前へ」


 でしょうね。てか俺はどうすれば……。


 少し考えた後、俺は前へ行くことにした。



 俺は壇上に上がり学園長と目を合わせる。


 なんかにっこりしてるんだが……。話せということか。


 こういうのは前世でもしてきた。


 俺は話し始めた。


「本年度新入生代表アルバート=フォン=ハワードと申します。今この場にいる新入生たちは難しい試験を受け、そして勝ち抜いてきた人たちです。そんな人たちにも分からないことがあります」


 そうして俺は聞き手に考える時間を与える。


「それは何かね?」


 それを察した学園長は俺に質問をしてきた。


「この学園のことです。初めての学園ではどこに何かあるのか、何をすればいいのか、分かりません。学園の先生や先輩方にはこれから色々迷惑をかけると思います。どうか優しく接してほしいと思います。新入生代表アルバート=フォン=ハワード」


 そう俺は締めくくり、一礼した。


 数秒後、盛大な拍手に体育館中が包まれた。


 聞き手に考える時間を与えたこともあり、聞き手は終始話す俺に釘付けになっていた。


 

 そのあと、俺は席に戻り、式の続きを見守る。


 王立ということもあり、国王陛下の挨拶もあった。


 そうして入学式が終わった後、各自クラスに移動することになった。


「アルって首席だったの? 知ってるなら言ってよね!」


 いや、知らなかったから。


「ああ、ごめん。恥ずかしくて……」


 そんなこと言えるはずもなく、誤魔化すしかなかった。

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