第28話神殿へ行く

昨日の夜は大変だった。アリシア母上に抱き枕にされ、危うく凶暴な二つのメロンに顔を挟まれ死にかけた。


 俺は今、朝食を食べている。


「父上、一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」


 父さんは急にどうしたんだという顔で俺の方を向いた。


「なんだ? 言ってみなさい」


「王都にきたのはこれが初めてですので少し観光したいと思いまして、一人で行ってきても宜しいでしょうか?」


「……一人はダメだ。万一があってはならん」


 そこで俺は切り札を切ることにした。


「父上は大精霊を軽んじているのですか?」


「むむむっ、そんなことはない」


「護衛としてアクアに僕を守らせれば大丈夫ですよね?」


 そうして俺は返答を迫る。俺の考えでは、アクアと契約する前、声だけが聞こえていた。つまり人から見えなくすることもできるはずなのだ。ラノベではこういうのは定番だと思う……。


※あくまで持論なので


「分かった。お前が一人で回りたいというのは何か理由があるのだろうが聞かないことにしておく」


「感謝します。この後すぐに王都を回りたいと思います」


「ゆっくり回ってこい。聞いたり読んだりして学ぶよりも、たまには見て学ぶのも良いかもしれんしな」


 


 そんな会話をした後、俺は屋敷から持ってきていた服に着替えて王都の街に出かけた。


 



今日は王都の神殿に行くつもりだ。テオス様が待っているからね。


 てなわけで、王都の道ゆく人に神殿の場所を聞いてようやく辿り着いた。


 神殿の外観は圧倒的だった。壁が全て白色で他とは違うと一瞬で理解できる。まるで別世界に来たように。


 神殿にはたくさんの人がいた。俺は受付の列に並んで順番を待った。




 そして待つこと数十分、俺はようやく神殿の中に入る事ができた。


 神殿の受付では名前を聞かれたが、俺はアルバートと答えておいた。変に家名を名乗ってなんかされたら嫌だし。


 神殿は来るもの拒まずの姿勢で名前を言うだけで通る事ができた。子供も大人も入れる。



 神殿の中は壁は白なのだがうっすらと光っている。窓はステンドグラスでそこから入る日光が幻想的な空間を醸し出している。


「……すごいな」


 そうやって眺めていると優しくおっとりした声が聞こえた。


「それでは皆さん。こちらの神様方に祈り始めましょう」


 そう言われて俺は祈り始めた。


 瞬間、風が吹いて俺は目を開けた。そこは前に来たことのある、あのお花畑だった。


「待っていましたよ。アル」


 声の聞こえた方を向くとそこにはテオス様がいた。


「お久しぶりです。テオス様」


「早速ですがお願いがあるのです」


「何でしょうか?」


「実はあなたの住んでいる人界に、不穏な動きがあります」


 そうしてテオス様は始めた。



 話の内容をまとめるとこんな感じ。


・俺が住んでいる人界に魔力だまりと呼ばれる場所があり、そこから強力な生命体が生まれるという


・テオス様は未来をある程度見る事ができ、その生命体は世界を侵略していくらしい



 といつになるか分からないが、その生命体が現れたら倒して欲しいとのこと。



【結論】

どう考えてもその生命体は魔王。そして俺は勇者。




「アル、あなたには神々の使徒としての義務を果たしてもらいたいのです」


と、心苦しそうに話す。


「もちろん構いませんよ」


死と隣り合わせだが、なんたって勇者とかもうラノベの王道でしょ?やらないわけにはいかないよ。


「か、構わないのですか?」


「ええ、使徒としての義務ならば仕方のない事でしょう」


「そ、そうですか。てっきりダメだと言われると思ったのに……」


 でもなんで神様は自分たちで魔王を倒さないんだろうね。力があるなら任せず倒しちゃえばいいのに。けど理由は聞かないでおく。夢が壊れちゃうから。



 そうしてテオス様は続ける。


「本当にありがとうございます」


「ええ、それでは」


 そう言葉を交わした瞬間、俺は神殿に戻っていた。

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