第49話2人の戦い①

 学園長室からイザベラ先生の言いつけを守り、寄り道をせず教室に帰ってきた。


「おお、首席様のおかえりだ」


「やっぱり、アルバート様のやることは違うわ」


 なんだか俺が神聖視されているんだが。


 まあ神々の使徒ってステータスには書いてあるけど。


 普通に同い年だしアルバートと呼んでほしい。


「あのさ、皆。自己紹介で言いそびれてたけど、俺のことアルって呼んでほしいな」


 俺の言葉を聞いてクラスメイトたちはパァッと顔が明るくなった。


「アル! 職業体験どこに行くか決まった?」


 そう言ったのはソフィアだった。


 こういうところで率先して言ってくれると後についてくる者たちは言いやすい。


 案の定俺の予想通り、他のクラスメイトも職業体験について聞いてきた。


「まだ決まってないよ」


「え? じゃあさっきまでどこいってたの?」


「ちょっと学園長室にね」


「まあそんなことはどうでもいいの。で、どこに行くの?」


 ちょっと。どうでも良くはないと思いますよソフィアさん。


「ははは、どこでもいいよ」


 本命は陛下へ魔法を教えることだし、できれば楽そうなのがいいな。


「じゃあ決まりね! わたしと一緒に職業体験にいこ?」


 いや、なんでそうなる!?


「ちょっと待ちなさいな。私もアル様と行きたいわ」


 金髪ロングで琥珀色の目をした美少女が俺たちの会話に入ってきた。


「君は?」


「私はターニャ=フォン=ベトスフィア。実家はベトスフィア公爵家です。アル様。私も一緒に行って下さいませんか?」


「別にいいよ。断る理由もないしね」


 俺がそう言った瞬間、ソフィアがそっぽを向いてしまった。


「アルのばか」


 何か呟いていたが俺には声が小さすぎて聞こえなかった。でもなんか悪口を言われたような気がするが気のせいだろう。こんなに可愛いソフィアが悪口など言うはずもない。


「それじゃ、ソフィアとターニャは俺と一緒に職業体験だな」


「……そうね」


「やった! アル様と一緒だわ!」


 まあ行くメンバーも決まったことだし、あとはどこに行くかだな。


「2人はどこに行きたい?」


 その瞬間、2人はにっこりと笑い合い話し始める。しかしその目は笑っていない。


 ちょっと!? こんなところで喧嘩とかやめて!


「ターニャさんかしら? 急にアルに話しかけてどういうつもりなの?」


「ソフィアさんでしたか。私はただアル様と一緒に行きたいなと思っただけなのですが……」


「「ふふふふふふふっ」」


 2人が同時に笑い出す。


 その言葉を聞いた瞬間、教室中の空気が一気に絶対零度を下回った感覚に襲われた。


 彼女たちのその会話は世界の理を捻じ曲げる、そんな幻覚に俺は襲われたのだ。


 彼女たちはその笑いで全てを共有した。


「答えは決まったの?」


「ええ、もちろんです」


「「これよ!」」


 黒板に貼られたリスト表のとある項目を指さす。


 そこに書いてあったのはケーキ屋だった。


 いや、なんで? 俺正直言ってあんまり興味ないんだが。


 しかしこんな空気でそんなことは言えるはずもなかった。


「これで勝った方がアルの優先権を得られる。どう?」


「いいですね。その申し出受け入れましょう」


 てか俺モノじゃないんですけど!? 

 しかも勝負って何? ケーキ屋で何を勝負するんですか?


「アルもそれでいいわよね?」


「いいですわね?」


 2人はニッコリと笑いながら俺に許可を求めた。


 俺はイザベラ先生に助けを求めるべく、先生のいる方向をチラッと向く。


 彼女は堂々と立っているが、指先が震えていた。


 俺は戦力にはならないと判断し諦めた。


「ああ、それでいいよ」



 しばらくしてイザベラ先生が話し始める。


「見た感じ、全員決まったようですね。それでは各自この紙に行き先を書いて私に提出して下さい」



 そうして俺は配られた紙にケーキ屋と書く。



 かくして、俺とソフィアとターニャは何故かケーキ屋で職業体験をすることになった。

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