第48話ルクセンドからの手紙

 俺は先生に廊下へ連れ出されてしまった。


 いったい何をされるのだろうか。もしかして今になって穴を開けた壁の修理費を出せとか言われるんじゃ……。


「どうしてそんな顔色がわるいのだ。私はただ学園長室に連れて行こうとしただけなのだが」


 いや、余計怖いよイザベラ先生。


「そうですか…。何をされるんでしょうね〜」


 俺は自分のことなのにどこか他人に起こることのように言った。


「それは、わたしにも分かりません。ただ、アルバート君を学園長室に連れてこいと言われただけなので」


「分かりました。連れていってもらえますか?」


 俺は覚悟を決めてそう言った。


「それではわたしについてきてください」


 そう言われて俺は歩き出した先生の後ろについていった。



 そうして連れられてきたのは重厚で頑丈だと一目でわかる扉が特徴の学園長室だった。


 イザベラ先生はコンコンと扉を叩き中に合図する。


「学園長、アルバート君を連れてきました」


「入りなさい」


 そうして室内に入れられた。


 俺は室内をサッと見回す。


 天井近くの壁には歴代の学園長と思われる写真のような物が飾られていたり、棚の中にはトロフィーのようなものもあった。一目見るだけでこの学園の歴史を垣間見た気がした。


 そうして俺は視線を目の前へ戻す。


「お呼びと聞いて参りました。アルバート=フォン=ハワードです」


「そういう堅苦しいのは良い。5年前からの付き合いだろう?」


 別に付き合いっていうわけじゃないと思うよ、あの出会いは。


「そ、そうですね」


 まあ、そんなこと言えるわけないんだけどね。この王国で羨望の眼差しを受ける賢者の一人に対してそんなこと言えるはずもない。


「イザベラ君、君は先に教室に帰りたまえ。生徒たちを待たせているのだろう?」


 学園長は話が長くなると言いたいのだろう。


「分かりました。アルバート君、教室への帰り道は分かるかしら?」


「はい、来た道は覚えていますので大丈夫だと思います」


「それでは、話が終わったら速やかに帰ってくるように。寄り道は許しませんよ?」


 そう言って、イザベラ先生は教室に帰っていった。


「早速じゃが、これを見てくれ」


 そうして渡されたのは一通の手紙のようなものだった。


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 親愛なるアルバート殿へ

 

 あなたは5年前のことを覚えているでしょうか?


 陛下があなたに魔法の先生になってくれと仰った事です。


 その件なのですが、あなたの学園生活のことも考えて、昼は学園の職業体験をしてもらいたいと考えています。そして夜に陛下に魔法を教えて頂けたらと思います。陛下もあなたの通う学園にいたのですが、先生達が頭をぺこぺこ下げるばかりであまり納得した授業を受けされてもらえなかったそうです。


 どうかこの件、考えてもらえませんか。


 フォルトナンセ王国宰相ルクセンド


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 これ絶対やってくれってことだよね。なんか最後に偉い人が推すハンコがあるんだけど。しかも王家の紋章だし。


 よくよく考えたが、これって労働基準法に抵触するんじゃ……。ゆうに8時間超えてるよ? 残業手当出るのかな。


 でも異世界だし、そんなものないよね。


「読み終えたかの?」


 俺がそんなことを考えていると学園長が声をかけてきた。


「はい」


「して、どうじゃ。考えてはくれんかの?」


 どうやらこの手紙の内容を学園長は知っているらしい。


「もちろんやらせていただきます。こうやって律儀に王家のハンコまで押されていることですし」


「ほほっ、良い判断じゃ。それでは陛下と宰相にはそう伝えておく」


「ありがとうございます。それでは僕はこれで失礼させていただきたいと思います」


「まあ、待て。お主には色々と迷惑をかけさせておる。学園の名所を教えておこう」


「……いえ、兄上と姉上に今日学園に来る時に教えてもらったのですが……」


「生徒がほとんど知らないところじゃ」


「そんなところがあるのですか?」


「無属性魔法『インビジブル』で見えなくなっている。儂には見えるがね」


 そうしてフォッフォッと笑いながら言った。


「なぜ僕にそれを?」


「君の力を見てみたいのじゃ。見つけたらそこを自由に使って良い」


 好奇心、ということか。


「分かりました。それでは失礼させて頂きます」


「また何かあれば遠慮なく来るのじゃぞ。儂はこれでも先生なのじゃからな!」


 それを聞いて俺は一礼する。


 そうして俺は学園長室を出て教室へと歩き出した。

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