第31話冒険者になる

 王都を出て10日後の昼、ようやくハワード領にある本邸に到着した。


 馬車をおり屋敷に入ろうとすると、玄関がバッと開けられ、そこから何者かが出てきた。


「ア……ア……アル……」


 その声を聞いて俺はものすごく寒気がして体をぶるッと震わせた。顔に生気がなくしわしわになっている。

 

 誰だろう、こんな人見た事ないんだが……。


 そうしているうちに俺に近づいてくる謎の人物。


 うーん、この顔どこかで……。


 ついに俺の体に抱きついてきた。


 するとしわしわだった顔が一変、ハリツヤの顔になり正気を取り戻した。


「アルくん成分補給できた!」


「ジェシカ姉様!?」


 そう、俺に抱きついているのは俺の姉であるジェシカ姉さんだった。

 しかしなぜ、俺に抱きついた途端生気を取り戻したのだろう。弟に抱きつき生気を回復するのがこの世界の摂理なのだろうか。

 

 俺はまた神様に会う時に聞くことが一つ増えた。


「アルくん、王都に行ってたんだよね。何で私も連れて行ってくれなかったの?」


「あ、それは父上に聞いた方がいいと思います」


「お、おいっ! なぜ俺に話を振った!?」


「あっ! 用事を思い出しました。それでは父上、後はよろしくお願いします」


「用事とは何だ? 帰ってきてすぐなのに用事などあるものか!」


 面倒ごとは全て父さんに任せた。5歳の俺にそんなことできるわけないよね?

 たまには親に頼るのもいいだろう。


 すまない父さん。あなたのことは忘れない。


 この後、ジェシカ姉さんは父さんにいろいろ聞いたらしいが、それはまた別の話。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇










 5年後。


 俺は10歳になった。


 10歳になると冒険者登録をする事ができる。


 ようやく異世界での俺の夢の1つが今日叶う。


 俺は家族と朝食を済ませた後、すぐさま街にある冒険者ギルドを目指した。

 父上に言うと、快く送り出してくれた。四男だからかそこら辺は自由なのだ。


 ちなみに5年間毎日欠かさず魔力操作の訓練をし、たまにぶらりとくる師匠ことブレッドさんに魔法や少しだけ剣術も教えてもらった。


 師匠曰く


『お前にはもう何も教えることはない。でも俺のこと忘れんなよ』


と。


 もちろん俺は


『師匠は世界でただ一人の師匠です。忘れるはずがありません』


と言った。


 師匠は喜んでくれた。


 そんな事があり今現在俺のステータスはこんな感じだ。 



【名前】アルバート・フォン・ハワード


【種族】人間族


【性別】男


【年齢】10歳


【称号】異世界転生者、神々の使徒、ハワード侯爵家四男、水の大精霊の契約者、殺戮者、英雄


【レベル】524


【能力ランク】SSS


【体力】49870/49870


【魔力】234250/234250


【魔法レベル】

火魔法LV10

風魔法LV10

水魔法LV10

土魔法LV10

光魔法LV10

闇魔法LV10

創造魔法LV10


【スキル】

アイテムボックスLV10

魔力運用効率化LV10

身体能力強化LV10

物理攻撃耐性LV10

魔法攻撃耐性LV10

隠蔽LV10

無詠唱LV10

手加減LV-

言語理解LV-

魔力操作LV10

精霊召喚LV- 召喚時、魔力増幅


【加護】

創造神の加護、水の大精霊の加護


【契約】

水の大精霊


 この世界でかなりの上位ではないだろうか。


 このステータスに自信があり、俺は冒険者登録をする事にした。



 冒険者ランクはS、A、B、C、D、E、の6段階がありランクの中にも階位というものが存在する。第1位階から第10位階の10段階で、第1位階がランクの最上位である。


 例を挙げるとSランクの第1位階の方がSランクの第10位階よりも階級が上という事だ。


 第1位階になる事で次のランクアップ試験を受ける事ができる。


 などと本に書いてあった。





 そして冒険者ギルドハワード支部にたどり着いた。


 扉に手をかけゆっくりと開ける。


「失礼します! 冒険者になりにきたアルと言います!」


 こういうのは勢いが大事だと思うんだよね。

 侯爵家の四男である事がバレると親のコネとか思われたら嫌だしニックネームを使う事にした。


 中を見渡すと、冒険者がポツポツとおり、全員が俺の方を向いていた。


「あははは! お子ちゃまが冒険者になりにきたのか?」


「ここがどんなとこか分かってるのか?」


 いや、分かってるから冒険者になりにきたって言ったじゃん俺。


 まあ、期待を裏切らないな。ラノベでもこういうのあったし。怒ったら負けだし、できるだけ穏便に済ませたい。


「はい、冒険者ギルドですよね? 10歳になったので冒険者になりたくてきました」


「分かってるよ。けどやめときな。もう少し大きくなってからの方がいいぜ」


「ご忠告ありがとうございます。でも、僕は冒険者になりたいので」


「そこまで言うなら止めはしねえが……。後悔するなよ?」


 俺は忠告してくれた冒険者に礼をして奥の受付らしきところに行った。


「冒険者になりたくて来ました。アルと言います」


「はじめまして、受付嬢のララーナと申します。こちらの用紙に必要事項をお書きください。これをもとに冒険者専用のギルドカードを発行いたします」


 俺の対応をしてくれたのはプラチナブロンドのロングヘアに整った顔立ちの美人のお姉さんだった。


 俺は指示に従い必要事項を書き、ララーナさんに返した。


「それではギルドカードを発行いたしますので少々お待ちください」


 そして少しの間待った後、鉄製のカードを渡された。


「このカードは無くさないようにして下さい。再発行は時間がかかりますし、お金も掛かりますので」


「分かりました」


「それでは、説明をします。あなたはEランク第10位階の冒険者です。そこからクエストなどをこなして位階を上げていく事ができます。第1位階になるとランクアップ試験を受けて受かれば次のランクに上がることができます。ここまでで分からないところがありますか?」


「いえ、ありません」


「そうですか。では今からクエストを受けに行かれますか?」


「は、はいっ! どんなクエストがありますか?」


「そうですね。他の冒険者さんは朝早くからクエストを受けに行っていますので残り物となると、今なら薬草の採取クエストがあります」


「ならそれでお願いします!」


「はい。これからはそこの依頼ボードから依頼を自分で取って来てください」


 なるほどそういうシステムなのか。依頼が重複するのを防ぐためだろう。


「分かりました」


「それではいってらっしゃいませ」


「うん行ってくるね、ララーナさん!」


 俺はそう言ってギルドを出た。


 去り際、ララーナさんが少し顔を赤くしていたのが見えた。


_______________________


アルは着実にファンを増やしていっているようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る