第19話ジェシカの暴走
アルバート達は屋敷の中に入った後、全員一旦自室に戻り、着替えてからリビングに集合することになった。
自室に戻る前にジャックに少し引き止められた。
「アル、まだ言ってなかったのか?」
言ってない、というのは当然俺が家を出て戦闘に参加したという事だ。
「はい、父上、申し訳ありません」
「しかし、お前には何か考えがあるんじゃないのか?お前はいつも考えてから行動している。そうだろ?」
父さんはどうやら俺を試そうとしている。ここで期待に答えないわけにはいかない。
「はい、父上。確かに大方考えてから行動するようにしています。もし僕が自ら家を出て戦闘に参加した、と家族に言えば、父上が戦闘に参加して心配しているのに、余計に心配事を増やしてしまいます。だから全てが終わった後に話せば、怒られはしますが、生きていてよかった、と、安心させることが出来ると思ったからです」
父さんは俺の言葉を聞くと、驚いたのか目を見開いて、一時フリーズしてしまった。
「驚いた。本当に5歳なのか?まあ、小さい頃から本を読んでいるからな。他の子と違うのは普通か。夕食のとき家族の前で言いなさい。きっと許してくれるはずだ」
「はい!父上」
そうして俺は父さんと別れ部屋へ向かった。
父さんの期待に答えれるように、これからも頑張らなければならないな。
考える事はいっぱい前世でしてきた。現世では魔法はもっと特訓が必要だと思うけど。アクアがいないと、まだ魔法を撃つことに体が慣れていない。チートという宝の持ち腐れなんてもってのほか。せっかくテオス様にもらったんだから、精一杯努力したい。
そうして意志を固めたアルバートだった。
部屋に戻った後、すぐに服を着替えてリビングに向かった。
まだ偽アルバートは残っていた。一体いつ消えるんだ?
リビングに着くやいなや、席に座った。
少し待っていると父さんがリビングに入ってきて、席に座った。
父さんと目があった。
今が言いどきか。
覚悟を決めて、深く息を吸って声を張った。
「あの!みんなに聞いて欲しいことがありますっ!」
それを聞いてスーザンは頭の上にハテナを浮かべた。
「どうかしたの?アル」
マークやジェシカもはてなマークを浮かべている。
「どうしたんだ?アル」
「悩み事?おねーちゃんに言ってみて!」
それを聞いてから言った。
「実は今日僕は、父上の約束を破って戦闘に参加したんだ」
「どういうことなの?アル。さっきまで屋敷にいたんじゃないの?」
「僕は屋敷を抜け出して、北門へ向かって戦闘に参加したんだ」
「嘘、よね?」
「本当だよ」
「でももしそうだとしても、あなたは5歳よ?戦えるわけないじゃないの。確かにあなたは他の子よりもずば抜けた知能を持ってるのは認めるわ。でも、流石にそんな事はないでしょう、ね?」
母さんはそんな事は信じられないと否定した。
でも、信じてもらわないと先には進めない。
「母上、ここに客人を連れてきてもよろしいですか?」
「何?急に。まあ、ジャックがいいって言うならいいけど…。」
そう言いながら母さんは父さんの方を向く。
父さんは腕を組みながらうなづいた。
「それじゃあ、呼ぶね?」
『アクア、召喚!』
すると、リビング全体が虹色に照らされ、俺たちは手で目を覆った。
「な、何っ!?」
「な、何だ!?」
「アル!?悪戯はおねーちゃん嫌いだよ?」
「ごめん、みんな。もう大丈夫だよ?」
そうして、手を顔から下ろすやいなや、視界にさっきはいなかった人、いや精霊がいた。
水色の髪を腰辺りまで伸ばし、純白の肌、青く透き通った目、そして体の周りに浮遊している水滴。
俺は大精霊ウンディーネを召喚したのだ。
「この子は大精霊ウンディーネ、名前はアクア。そして僕の契約精霊なんだ」
それを聞いて母さんは驚いた。
「だ、大精霊ウンディーネ様!?何でアルが契約してるの?」
「たまたま僕を見つけて、悩みを聞いてくれたんです。そしたら助けてあげると言ってくれて契約したんです」
「そ、そんな簡単に契約できる存在じゃないわよ!?ウンディーネ様は文献にしか姿が記述されていなくて、その姿を見た人はごく少数…。でも、確かに存在の格が違うわ、本当のようね。お目にかかれて光栄です、ウンディーネ様」
それを聞いていたアクアはウンウンとうなづく。
とっても可愛い。
マークは声が出ないくらい驚いている。
ジェシカはなんか不機嫌そうだ。なんでだろ?
「ね、姉さん、どうしたの?」
「やっぱりおねーちゃんに隠れて可愛い女の子と遊んでたのね!?」
え?そこなの姉さん?自分で言うのもあれだけど大精霊ウンディーネだよ?何で驚かないの?
もしかして世界一強い能力って、ブラコンなのかな?
「ち、違うよ姉さん。ウンディーネ様だよ?」
「ウンディーネ様は知ってるけど、そんな事どーでもいいの!今日は絶対に、ゼーッタイに一緒に寝てもらうんだからねっ!」
も、もういいや。なんか覚悟を決めてたオレがバカだったみたいだ。
父上が少し悲しそうにしている。
「う、うんそれはもう承知済みだよ」
それは全然オッケーだから。
そんな事があって、一応家族には伝えられた。
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