第26話王命受理

「アルバート、お前には我の相手をしてもらわねばならん。我も鍛錬を怠るつもりはない。お主の力量は先ほど見て分かった。先生になって欲しい」


 俺は最初、陛下が何を言っているのかがわからなかったが徐々に頭の中で理解が追いついた。


そしてこれが俺の答え。


「えええええええええええええっっっっ!!!!!」


 俺の声が謁見の間に響き渡る。

 

「びっくりするのも仕方ない。しかし我には魔法を教える先生がいないのだ。王という立場ゆえにね。しかし、職業体験として我に先生として教えてくれ」


「し、しかし僕はまだ1回しか師匠に教えてもらっていません」


「師匠とはいったい誰のことだ?」


「ブレット師匠のことです」


それを聞いて陛下は少し考えているようだった。


「ブレット……ブレット、どこかで聞いたような……」


そんな時父さんが陛下に進言した。


「ブレット・モーガン、かの有名な賢者であるラルフ・モーガンの孫です」


「っ! そうだそうだ、思い出した。賢者殿はいったい今何をしておられるのだろうか?」


「様々な国を回っているのだとか。最近はこの国に戻ってきたと耳に挟んでおりますが、どこにおられるのか正確には孫のブレットにも分からないようです」


俺は賢者という言葉に敏感に反応してしまった。 ファンタジー世界あるあるの賢者だ。反応しない方がおかしい。


「あの、賢者とはいったい?」


「アル、お前にも分からないことがあるのだな」


「当たり前ですよ父上」


「ははっ、賢者とは6大魔法のどれかを極めし者に与えられる称号のことで、国から贈られる称号のことだ」


「6大魔法を極めし者、ですか。というと、火、水、土、風、光、闇でしょうか?」


「その通りだ。さっき国から贈られる称号と言ったが、魔法検定試験でS級認定をもらっても贈られない。魔法検定試験とは国が主催している一種の資格試験だ。国に多大な恩恵を与えた者に贈られるのが賢者という称号だ」


「なるほど、凄いですね」


「ちなみにお前の先生、ブレットの祖父は火の賢者だ。ああ見えてブレットも結構凄いんだぞ? 俺と同級生だったから学園在籍時は切磋琢磨し合ったものだ」


「そうだったのですね」



まとめるとこんな感じ


【賢者】

・6大魔法(火、水、土、風、光、闇)を極めし者のことで国    

から贈られる称号のこと。

・魔法検定試験でS級認定かつ国に多大な恩恵を与えた者

(魔法理論の発表、国防など)。S、A、B、C、D、Eの順で評価される。

・属性ごとに一人しかいない。つまり賢者は最高でも6人。


これら全てに当てはまりかつ属性ごとに選ばれた一人しか賢者という称号はもらえない。



まあ、賢者に選ばれることがどれだけ凄いかが分かるよね。


賢者は称号が贈られると同時に名誉騎士爵を与えられる。名誉騎士爵は世襲制ではないためブレット師匠は爵位を持っていないらしい。


そんな会話をしていると陛下が口を開いた。


「話が逸れてしまった。アルバートもう一度いう。5年後、職業体験という名目で我に魔法を教えてくれ」


そうして陛下は頭を下げた。


横にいる宰相もびっくりしている。


俺は流石に断れないと思い返事をした。


「おやめください、陛下。是非魔法を教えさせてください」


「約束だぞ、アルバート。5年後、楽しみにしている」


そうして謁見は無事終了した。ちなみにアクアは終始嬉しそうに俺のことを見ていた。



まあこれら全て、俺が学園に合格したらの話なんだけどね。でも元官僚としては受からないわけにはいかないよね?







謁見が終わった後、父さんと俺は王城を出た。


「王都で1日ぐらいゆっくりしていくか」


そう父上は言って、第一夫人のアリシア母さんと兄上達が王都の学園との通学に使う屋敷に馬車を走らせた。

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