第21話 閑話 王国の影で動く者達
この世界の夜、それは街灯がポツポツとあるだけで、明かりは夜空に浮かぶ月や星々に頼っている。
常闇の森の深部は尚更だろう。
そこには甲冑を着て、剣を帯刀している者や黒いローブを着ていて顔があまり見えない者など数十名が集まっていた。
そこに1人の男が走ってやってきた。
それを見て集まっていた者たちが一斉に走ってきた男に目を向けた。
待っていた者達の中の1人が男に向かって聞いた。
「ど、どうだったのだ!?成功したか?」
走ってきた男は勢いよく頭を下げた。
「申し訳ございませんっ!作戦は失敗しました!」
それを聞いて、集まっていた者達は息を呑んだ。
「そ、それはどういう事なんだ!?」
息を整え落ち着いてから走ってきた男は答えた。
「詳細を報告致します。我々はこの常闇の森の魔物の殆どを使役し、かつ魔物を増強させてハワード領に侵攻させました。それまでは我々の計画通りだったのですが……。」
「どうした?続きを言ってみろ」
そうして走ってきた男は思い出したくない記憶を思い出し答える。
「………はい。私は無属性魔法『透明化』を使ってハワードの兵士や冒険者達の動きを遠くから見ておりました。閣下の予想通りハワード領近郊に堀、土塁を築き上げていました。我々の支配下の魔物達は最初は優勢に攻めて大打撃を与えておりました。しかし突然空中に大量の水球が現れ、魔物達はなす術もなく溺れ死ました」
それを聞いて集まっていた者達は口々に言った。
「それは、どういう事なんだ?意味がわからない!」
「そんな魔法使い、ハワードの冒険者にいたっけ?私達、バレないように徹底的に調べたのよ?」
「ああ、俺達の手際は皇帝陛下にも認められている。だが俺たちはどうやら見落としちまっていたようだ」
「見落としたって言っても、そんなのいったい誰なんだよ?」
それを聞いた閣下と言われた者は答えた。
「分からない。だが、いずれにせよ我らの前に立ちはだかる者はこの世から消さねばならぬ。皇帝陛下の密命により極秘に事を進めていたからまだ王国は気付いていないだろう。単なる魔物のスタンピードとな。しかし計画が失敗したという事実は変わらない。皇帝陛下の信用を得てこそ我らに存在価値があるのだ。次の計画は絶対に成功させなければならない。各々気を引き締めて事を進めろ。いいな?」
最後に閣下と言われた者は全員に向け鋭い殺気を放った。
しかし集まった者達はそんな事で物怖じするような輩ではない。
それを聞いた者達は手を胸に当て、忠誠を誓う。
「「「「「「「「はっ!!!」」」」」」」」
そんな事が起こっているとも知らず、王国民は今日も生きている。
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