第22話王都へ
俺は眠れぬまま朝を迎えた。
横にはすやすやと寝息を立てているアクアとジェシカがいた。いいご身分ですこと。
俺は起こさないように小さな体を駆使して2人の束縛から逃れた。
フラフラとしながら俺は一足先にリビングに向かった。
リビングには少し顔の険しい父さんがいた。
俺は疑問に思って声を掛けた。
「どうかされましたか?父上」
すると父さんは顔を上げて俺にいった。
「実はな……昨日お前がジェシカと寝た後、通信宝珠で王都から緊急連絡があった」
俺は何を言っているのか分からずキョトンとしてしまった。
通信宝珠?何それ?現代日本でもあるまいし。
「父上?通信宝珠とは一体……」
それを聞いて父上は何か覚悟を決めたと、俺には映った。
「通信宝珠とはアーティファクトの一種だ。製法も、どこで作られたのかも、何もかもが謎のまま。ただ通信できると言うことだけが分かっている。同じ時間、違う場所で会話ができる。しかし危険性も鑑みて世にはほとんど知られておらず、王都との緊急連絡時のみ使用を許されている。持っているのは貴族の当主と王都の国王陛下のみだ。このことは子供たちには他言無用だ」
やっぱり俺信用されてる?ふふっ、まあ官僚ですからね。一応何でか聞いてみるか。
「何故僕にそれを?」
父さんはテーブルに置いてあったメイドが入れてくれた紅茶を飲んだ後、答えた。
「通信宝珠での会話で決まったからだ」
ん?何を言っているんだい父さん。話が見えないのだが。
「一体それはどういうことでしょうか?」
「国王陛下、宰相、大臣と昨日の魔物掃討作戦の話をした。陛下は何故そんなに早く終わったのかと言われた。私はお前の名を出した。本当なのだから。陛下は俺とお前で王城へ出頭せよと言われた」
「はひ?」
「もう一度言うぞ。お前は俺と共に王城に行くのだ」
「はああああああああああッーーーー!!」
いや、もう眠気なんて吹っ飛んだよ、こんちくしょう。
「はははっ、お前は5歳らしい態度もできるのだな。いや、5歳だから普通なのか?はっ、まあいい5歳が王城に出頭など前代未聞だ。一体何を言われるのか心配だな。」
「そ、それで一体いつ王城に向かえば良いのですか?」
「いつだと思う?」
また俺を試してるな、これは。
恐らく今日中に出発だ。理由は国王陛下が出頭を直々に命じられた。それを断る権利は貴族にはない。かつ待たせるわけにはいかない。ということで今日!
「今日、でしょうか?」
父さんは嬉しそうに笑った。
「ははっ、正解だ。分かってるじゃないか、ということで俺たち親子は特急で王都に向かわなければならない」
「はい」
俺が返事をした後、父さんはいつになく真剣な表情で言った。
「そこでだ!ジェシカが寝ている間に王都へ行きたいんだが協力してくれるよな?」
どうやらジェシカ姉さんにバレずに行きたいようだ。もしバレたらぐずってしまうだろう。
アルくんと離れ離れなんてイヤ!、みたいな?
「もちろんです」
「さすが我が息子だ。外にはメイドに言って馬車を用意してもらっている。お前の服も用意してある。ついてこい」
いや~、準備良すぎでしょ、とっつぁん。
「はい!」
そうして俺たち親子は現在、馬車に乗って王都へ移動中。
馬車に乗ってから父さんに聞いたけど、
まさかの王都まで10日だってよ。今回はフルスピードで行って7日で着くらしい。
それを聞いて俺は現代日本は恵まれてたんだなあ、と改めて思った。
そうして時は流れ、7日後の昼、王都へついた。
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