第52話気絶

 訓練を開始してからしばらくしてから、陛下はボソッと口にした。


「これが魔力か。長らく感じていなかったから新鮮じゃの」


「ええ、やはり慣れが大切です。剣を振るにしても、料理を作るとしても、練習して体に動きを馴染ませることが大切です。手首の動かし方によって切れ方が違ったりします。それとこの訓練は同じようなことです」


「なるほどのう。慣れか」


「ええ、慣れです」


 俺の言葉を聞いて陛下はまた意識を自分に向け直した。



 俺も陛下に教える以外に何もすることがないので新しいことに挑戦しようと考えた。


 魔力操作はLV10ということもあり、極めたと言ってもいい。


 俺はあることに目をつけた。


 陛下や宰相のルクセンドさん、セバスチャンさんにバレないよう、小さな声でスキルボードを出した。


「ステータス」


【名前】アルバート・フォン・ハワード


【種族】人間族


【性別】男


【年齢】10歳


【称号】異世界転生者、神々の使徒、ハワード侯爵家四男、水の大精霊の契約者、殺戮者、英雄、王立フォルトナンセ学園1年生


【レベル】532


【能力ランク】SSS


【体力】50120/50120


【魔力】240100/240100


【魔法レベル】

火魔法LV10

風魔法LV10

水魔法LV10

土魔法LV10

光魔法LV10

闇魔法LV10

創造魔法LV10


【スキル】

アイテムボックスLV10

魔力運用効率化LV10

身体能力強化LV10

物理攻撃耐性LV10

魔法攻撃耐性LV10

隠蔽LV10

無詠唱LV10

手加減LV-

言語理解LV-

魔力操作LV10

精霊召喚LV- 召喚時、魔力増幅


【加護】

創造神の加護、水の大精霊の加護


【契約】

水の大精霊


 このステータスの魔法レベルに注目して欲しい。


 そう、創造魔法という項目があるのだ。俺の知識に間違いがなければ、これは最強のチートだ。何せ自分の思った魔法を作れるのだから。


 創造魔法はおそらく創造神テオス様の権能だろう。

 神々の使徒である俺はその権能を託された? という感じだと思う。


 しかし俺はこういうチートは使い方を考えるべきだと思う。


 全能すぎても面白くない。俺はこの異世界を楽しく生きたいのだ。


 取り敢えず異世界あるあるとして創造魔法でスキルを作ってみたいと思う。


 流石に創造魔法の使い方は本にも書いていなかったので自分で考えるしかない。


 作りたいのは鑑定スキル。物体や相手の能力を瞬時に解析し網膜に直接情報を示すスキルと取り敢えず定める。


 その瞬間、俺の魔力がごっそりと抜ける感覚があり、そのまま俺の意識は暗転した。








「アルバートよ。大丈夫なのか?」


 誰かが俺の名前を呼んでいる。でも待って。もうちょっと寝たいんだ。頭がぼーっとしてる。


「分かりません。今は無事を祈るしか」


 大丈夫だって。意識はあるし。ん? 意識……。


「はっ!?」


 俺は背中を叩き上げられたかの如く、跳ね起きた。


「アルバート! 急に倒れてびっくりしたのだぞ!? 大丈夫か!?」


 それを聞いて俺は、先程のことを思い出す。


「陛下。申し訳ありません。少し意識を失っていたようです」


「そんなことは見ればわかる。30分ほどだ。して大丈夫なのか?」


「ええ、少し頭がぼーっとしていますが体に支障はないかと」


 30分ほど意識を失っていたのか。自分が創造魔法を使って、勝手に意識を失ったなんて言えるはずもなかった。


「そうか。大事をとって今日は王城で夜を明かすと良い」


「いいえ、それはできません」


「どうしてじゃ?」


「……我が家には怒らせると厄介な人がいますので」


「誰じゃ。厄介な人とは?」


 えー、それ言わせるの陛下。まあ話の流れ的にそうだよね。言うしかねえ。


「ジェシカ姉上です。弟思いのいい姉上なのですが、少し過保護でして……」


「そ、それは帰らねばなるまいな。女を怒らすと後々面倒だからな。機嫌を損ねないうちに帰ると良い。来客用の馬車を使うといいだろう。今日は歩いて来たと聞いておる」


 流石にそこまで言われているのに、断るのは逆に失礼だよね。


「ご厚意に感謝します」


「遠慮せんでよい。何せ我の先生なのだからな。それくらいして当然じゃ。して先生、宿題はあるかの?」


 陛下、ちょっとふざけてますよね。


 俺は微笑みながらそう言って来た陛下の顔を見てそんな感想を抱いた。


「陛下は公務で忙しいと思われますので宿題は結構です。しかし、できれば自主的に空いた時間でも良いので魔力操作をしてください。短期間ですので質も重要となりますのでお忘れなきよう」


「ああ分かった。なら次来るのは明日ではなく1週間後で良い。倒れたこともあるし、出来るだけ休んだ方が良い。昼の職業体験は2人の公爵令嬢とケーキ屋でやっているようだな」


 いや、なんで知ってんだよ。ストーカーか何かっすか?


「どうして知っている、という顔をしているな。ほほっ、お主のそんな顔を見たのは初めてじゃ。ほほっ」


 上機嫌で何よりですね。でもなんで知ってるの?


「王都内にはわしの子飼いの目が見ておる、と言うことじゃよ」


「それは、僕だけですか?」


「いいや、そんな事はない。ここ数年、帝国の動きが怪しいのは知っているだろう?」


「ええ、父のジャックからそれは聞いております。なんでも5年前のハワードの魔物掃討作戦の魔物のスタンピードも帝国の仕業だとも言われていますが、真相は分かりません」


「そう、そういうことにいち早く察知するために目を放っているのじゃ。そのついでにお主の行動も監視させておる」


「流石にトイレまでは監視させてませんよね?」


「さあ、どうであろうな?」


 いや、冗談のつもりだったんだけど。陛下、そんなことさせてないよね? プライバシー侵害してるからねそれは。


 しかし、陛下は笑った顔を保つばかりで何も言ってくれない。


「……まあ、いいです。今日はご心配をおかけして申し訳ありませんでした」


「気にするな。では1週間後、また来てくださいね。“先生”」


 最後までからかわれたが、それに反抗する体力と魔力は残っていなかった。


 その後、セバスチャンさんに来客用の馬車に連れられそれに乗った。


 馬車内で俺は呟く。


「ステータス」


【名前】アルバート・フォン・ハワード


【種族】人間族


【性別】男


【年齢】10歳


【称号】異世界転生者、神々の使徒、ハワード侯爵家四男、水の大精霊の契約者、殺戮者、英雄、王立フォルトナンセ学園1年生


【レベル】532


【能力ランク】SSS


【体力】8040/50120


【魔力】5240/240100


【魔法レベル】

火魔法LV10

風魔法LV10

水魔法LV10

土魔法LV10

光魔法LV10

闇魔法LV10

創造魔法LV10


【スキル】

アイテムボックスLV10

魔力運用効率化LV10

身体能力強化LV10

物理攻撃耐性LV10

魔法攻撃耐性LV10

隠蔽LV10

無詠唱LV10

手加減LV-

言語理解LV-

魔力操作LV10

精霊召喚LV- 召喚時、魔力増幅


【加護】

創造神の加護、水の大精霊の加護


【契約】

水の大精霊


「体力も魔力もとんでもなく減ってる。スキル取れてないし。最悪だ」


 そうして俺は馬車に揺られ、ようやく屋敷に着いた。


「それではお気をつけて。おやすみなさいませ」


「ありがとうございました。それでは」


 そうして俺の長い長い異世界初職業体験は幕を閉じたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

前世が官僚の俺は貴族の四男に転生する〜内政は飽きたので自由に生きたいと思います〜 ピョンきち @daiki1106

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ