あとがき

 十二万文字に渡る長編をお読みいただき、ありがとうございました!

 長いです! 作者わたしが読んでも長い!

 これから改稿したいと思ってるんですけど、これは紙に出力したら一体何枚になるのかしら……と今から不安に思っています。黒のインクタンクはなくなるかな?

 とにかく今作は何度も通読するのが難しかったです、なぜか。前作も同じくらい長かったんですが。


【書き始め/きっかけ】

 きっかけは他サイトの『白』をテーマにしたコンテストです。『白』ということは冬だったと思うので、何気に書き上げまでに半年かかったようです。(しかも改稿予定)

 ドアを開けたら外は一面の雪で……というような話を考えたのですが、うちの専属編集である娘から、辻村深月さんの『冷たい校舎の時は止まる』とイメージが被るからやめなさいと言われまして、じゃあ青で行こうかと。

 なのでそもそも『すべて、白』で『すべて、青』となったわけです。

 つまりイメージとしては、一面が一色で覆われている、という景観だったのです。つまり楳図かずおさんの『漂流教室』みたいに砂漠でもよかったのです。


 この連載を始める前、ちょっとした(?)スランプになりまして。と言ってもカクヨムコン終わると脱力される方は多いと思うんですが。なんだか短編はちらほら一次通ったりしながらも、長編が……。

 こういうのが書きたいという明確なイメージがあるのに「それで」という結びに当たる部分が見つからない書きかけの小説を何本か書く羽目になりました。

 それでもう長編は書けないかとしれん、と頭を掻きむしり、小説はもうやめようと思い詰め(短編を真面目に書く気が毛頭ない)、コロナ対策のマスクを50枚くらい縫いまくり……。


 出したいと思った公募はひとつ、ふたつと過ぎていき……。

 今年は長編をじっくり書く年にしたいと思ってたので、長編を書けそうにないことがまず辛かったし、公募にぜひ出したいと思っていたのに目標としていたものは過ぎ去っていくし、悲しかったですね。


 それで、いわゆるセオリーを無視して、毎日その場当たりで連載をしてみたらどうだろうかと。幸い、この作品はかなりわたしにしてはしっかりしたプロットがありましたし、もし毎日が無理なら不定期でもいいや、プロットがあればエタることもないだろう、という気持ちで始めることにしました。

 コンテストも、公募も〆切も設定はしない。

 とにかく毎日少しずつ書いて長編をなんとか書こうと思ったわけです。

 要するに長編へのリハビリだったわけです。

 いまは書き上がって本当にほっとしております。


 ※いわゆる公募というのは未発表作に限り応募可能で、Webで公開するともう応募不可能になることがほとんどです。Web主催のコンテストの場合、Web公開は未公開作としてみなされるので、ここで公開していても応募できるのですが、要するに公開すると応募できる『門』が減ってしまうという現実もあり、難しい問題です。Web公開は楽しいけれど、わたしの書くものはいわゆるテンプレラノベとちょっと違うので出すWebコンテストも選ぶわけです。


【他作品との類似について】

 これは読者さんからの指摘にもありましたが、先刻書きましたように、辻村深月さんの『冷たい校舎の時は止まる』にとても似ていると言われたらそうだろうな、と認識しております。

 辻村深月さんの作品は、特に初期の作品はほとんど読んでいて、『冷たい校舎の時は止まる』については月刊マガジンにコミック掲載時にすでに読んでいました。(辻村さんはコミックの原作大賞からデビューしました)

 なので書き始める時にとても悩んだんですけど、『似て非なるもの』はわたしにも書けるはずだと。つまり、個性勝負に出ることにしました。

 実はわたしは、読んだ本や観た映画の中身をすっかり忘れるという特技があるんですが、この作品も同様で、実際にはどれくらい似ているのかまるでわかってなかったり。

 余程、何度も途中で比べてみようかと思ったんですが、他の方の文章を読むと引っ張られるし(自分のスタイルが崩れるのですね)、読まない方がいいような気がして……。どう考えても辻村さんの方が上手いわけなので凹んで続きが書けなくなるかもしれなかったし。

 そんなわけで、書き始めてからのテキストには一切していません。たぶん違うものになったと思っております。


 あと、こちらは指摘されませんでしたが『いなくなれ、群青』は青が被ってるし、島でデストピアなところも被るかなと思うんですけど……。

 娘は読破して回してくれたんですが、一巻の半分しか読んでおりません。ちょっと、思ってたのと違ったというか。

 あちらの方がいま、出版社が欲しい系統だと思いますが。


 あとはプロの方に見ていただいて(コンテストにできれば出して)、個性が認められるかジャッジしていただくしかないと思ってます。あまり自信はないですが。


【キャラクターについて】※含む、ネタバレ

 名璃子。

 もうこの子は『名璃子』という名前しかないな、となぜか思ったのでした! 妥協なし。意味付けは特にないです。ご想像にお任せします。

 プロットの段階ではこんなにドライでナイーブなキャラになると思わなかったんですが、出だしを何通りか書いたら、こういう性格になりました。

 いわゆる、『さみしい子』。

 自分はひとりでも大丈夫だと思っているけど心の中に鬱屈がある。

 要するに、月波作品によく出てくるタイプの主人公になりました。そんなわけで、彼女のことは手に取るようによくわかりました(笑)。

 しかも珠里(前作のヒロイン)みたいに無理して笑わないところはやっぱりまだ高校一年生なのかな、と思います。


 湖西。

 全編通して地の文では呼び捨てのひと。

 直そうと思ってます。

 書き始めはいまよりもっと俯瞰的なイメージで書いていたので、たぶん、呼び捨てになったのかなぁと。

『湖西』というのは、小西にしようかと適当に考えたら変換に出てきたので、これは暗示的でちょうどいい、と。

 彼はわたしの作品の中での役割的には『ナイーブ(センチメンタル)な男の子』です。心の中に常に傷を持っているような。

 それでいて、いままでの反動で負の行動にも出てしまう。心がある意味、強いひと。ピアノもイメージで膨らませていくタイプだと思うので、イマジネーション豊かなんだと思います。

 弱さと、どこか怖さを出したいなと思いつつ、そのバランスが難しかったです。その辺は改稿で見直しかな……。


 佳祐。

 佳祐は名前の音は適当につけたんですけど字はこれしかないよね、となりました。

 どんなふうに皆さんの目に映ったかわかりませんが、意外と苦労性かなと思います。笑顔の裏で苦労してるひとかな、と。

 作中には出てきませんが、名璃子と同じく共働きの両親が忙しい家庭で、年下の妹がいてかわいがっているという設定です。

 名璃子との関係についてはずいぶん悩みました。娘は湖西推しでした。が! 綾乃の精神の乱れを描きたかったので、そういう展開に持っていきました。


 綾乃。

 かわいいし、罪はなく純粋なんだけど、知らないところで誰かを傷つけている可能性の高い子。

 純粋な面で湖西のピアノを楽しんでいるのかもしれません。「すごーい!」って。でも名璃子はピアノは挫折しているので同じように「すごーい!」と言われると……だと思います。そういうタイプ。

 小さい時からかわいがられて至れり尽くせりの環境で育ったので、思い通りにならないことに我慢がきかないのかな、と思います。

 あのシーン、怖く書けてましたか!?


 拓己。

 湖西サイドの理解者、思い入れの強い人物として世界を跨いだひと。

 そう考えると湖西は拓己くらいしか味方がいなかったのかな、と思います。

 ズバッと物事を簡単にしていくひと。わたしはこういう「ついてこい」というタイプが実は割とすきなのです。なので拓己パートは書いていて、二次創作(書いたことないけど)のように楽しかったです。

 あまり出番がなくてごめんなさい。でも最終話では少し盛って書かせていただきました。


 パパとママ。

 この話にいなくてはならないひと。

 プロット段階では重要人物では全然なかったんですが、勝手に湧いてきた(笑)。

 名璃子のアイデンティティの確率に不可欠なひとたちです。

 あまり深く語らなかったのですが、改稿する時はどうしようかなぁと考え中……。

 話の要素を盛もりにすると『青い鳥』の二の舞になるので。


【リアルタイム連載について】

 もちろん、小説を書き始めた頃はリアルタイム掲載でした(笑)。書き始めた時は遊びだったので。『17日後』まではわたしにとって小説は遊びだったんです。

 なのでそれ以降は少しプロット立てたり(苦手)、改稿したりしています。試行錯誤ですね。

 村上春樹さんも書いていらっしゃるのですが、初稿がいちばん自由なんです。キャラも飛び跳ねる感じで。なのでそこから少し物語をねじ伏せて、型にはめて、という感じで成型するわけなのですが、やはり初稿は面白い。

 今回はほとんど原稿のストックを作らず、書く→掲載、という形を取ってみました。荒削りではありますが、たぶん、改稿したらもっと理詰めになって堅苦しい小説になると思います。そんなものなんですよ。

 で、わたしはプロットを考えるのが(作るのが)苦手なので最近は自由に書いた初稿をプロットにしています(笑)。

 この話も改稿して(しなかったり)コンテストに出したいなと思っています。


【物語について】

 いま思うと難しかったのは、いつもは意味もなく湧いてくる風景描写。

 ずっと学校の中だし、季節もあやふや(一応五月)、見えるものは空と水。

 空と水は時間によって見え方が刻々と変わるんですが、その表現もそれほどバリエーションないですしねぇ。

 風景描写、これがひとつの課題です。


 それから湖西くんの正確にブレがなかったかなとすごく心配、しながらも通読しづらいという。もう少し彼を全面に出してあげたかったと思いつつ、彼にはひっそりした気配があるので、これでよかったのかもしれない。

 そういう塩梅は難しいですね。


 エンディング。

 呆気なさすぎるような気もしますが、これくらいの方がくどすぎなくていいかな、とも。あんまり繰り返し説教臭いのも嫌ですし。


 どこを削るんでしょうね?

 サバイバルシーンか、ピアノのシーン。

 ピアノがくどいなぁと思っています。


 物語の全体の流れについては、思ってたよりずっといい感じに仕上がったように思います。一発書きのわりに。


【最後に】

 12万文字の世界旅行、お疲れ様でした!

 正直、恋愛を書くよりPVは少なかったんですけど、それでも追っかけて読みに来て下さる方がいらっしゃったり、もちろん初めてわたしの作品を読んでくださった方、それからリアクションはないけどずっと読んでくださった方、ありがとうございます!

 大体、1日に17人くらいの方が読んでくださっていて、毎日の執筆の支えになりました。これはほんとに。つまんないかなーと思いつつ、17人のひとのために最低エタらず書こうと。17人のうちのあなた、ありがとうございます。

 それからまとめ読みにちらちら来てくださった方にも感謝です。お陰様でミステリーのランキングにもちらっと名前が載ったり、うれしかったです!

 はっきり言ってたくさん冒険させていただきました。

 いままで書いてきたものと全然違うフィールドで、それでも変わらない自分らしさを持って書けたんじゃないかなと思います。

 人生、チャレンジですね。

 いままではちょっと『17日後』に縛られ続けていたのではないかと。

 わたしにもほかの世界が書けるんじゃないかと。

 読者さんは大切にしたいけど、要望に応えようと思いすぎることが自分の枷になっていたのかもしれません。

 というわけでこれからは全然わたしらしくない作品を追求していきたいと思います! とか言って、絶対暗かったり(笑)。

 これからもひとの心の欠落と、それを埋める希望や愛情について書けるひとでありたいと思います。

 ので、今後もお付き合いよろしくお願いします。

 意味もなくあとがきを楽しんでたくさん書いてしまいました。すみません……。

 また次回作でお会いしましょう!


 感想、受付中です。

 できたら持ち上げていただけると今後にいい影響が……。よろしくお願いします。

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