雨降りますから、雲だってありますけれど。
そこは目をつぶって、すべて、青。
主人公の女子高生がしおさい公園を歩いているとき
世界はぐにゃりと歪んで姿を変えます。
水で覆われていました。
町は水没し、高台にある学校だけがそびえている。
水没しているだけではない、高い建物も姿を消しています。
すぐそばにクラスメイトの湖西がいて。
世界は閉ざされていて、人物も限られます。
ちいさな社会。
友達関係があり、恋人関係があり、微妙に依存し、微妙に反発する。
恋の問題、親子の問題、夫婦の問題、あきらめ、絶望。
ぎゅぎゅーっと煮詰まっております。
最後、駅は崩壊しなかったけれど、空が崩壊して満足です。
これって、ネタバレ? なんのことかわからないからオッケー?
常とは違う世界を舞台としていますから、この作品も異世界転移の小説と言えるのでしょう。(^ω^)
主人公の名璃子は親友とも呼べる幼馴染みに囲まれた、一見すれば普通の女子高生。しかしその胸には誰にも言えぬ想いを抱え、当たり前の日常を送っていました。
その名璃子が一人、公園のベンチに座り、大きな溜め息を吐いた時に異変は起こります。
足元にひたひたと押し寄せた水は街を沈ませ、そこは一面の海原に。
突然に現れた湖西に救われ、高台の高校の校舎に避難した二人でしたが──そこで始まるのは、生きるためのサバイバルと苦しいほど静かな時の流れ。
普段は考えない物事や、考えないようにしている物事を見詰めるには、ぴったりの世界。
この作品はその奥底に流れるクラシックビアノの音のような、しっとりとした人の繋がりを求める物語なのでしょう。