溢れた水は、彼女の涙

常とは違う世界を舞台としていますから、この作品も異世界転移の小説と言えるのでしょう。(^ω^)

主人公の名璃子は親友とも呼べる幼馴染みに囲まれた、一見すれば普通の女子高生。しかしその胸には誰にも言えぬ想いを抱え、当たり前の日常を送っていました。
その名璃子が一人、公園のベンチに座り、大きな溜め息を吐いた時に異変は起こります。
足元にひたひたと押し寄せた水は街を沈ませ、そこは一面の海原に。
突然に現れた湖西に救われ、高台の高校の校舎に避難した二人でしたが──そこで始まるのは、生きるためのサバイバルと苦しいほど静かな時の流れ。
普段は考えない物事や、考えないようにしている物事を見詰めるには、ぴったりの世界。

この作品はその奥底に流れるクラシックビアノの音のような、しっとりとした人の繋がりを求める物語なのでしょう。